ルリリアの激昂
会話多めです
へこんでいるような、どこか嬉しそうな表情で国王様はぽつり、ぽつりと話始めました。みなさん深刻そうなお顔ですが、きっと大丈夫ですよね。
「アリーシャって、デビューする前は全く外に出なかっただろう?」
「ええ。変な虫がつくと面倒だもの」
変な虫……? 社交界にデビューすると虫がつかなくなるのでしょうか。
「それに、どうしてかわからないけど醜悪だなんていう噂が流れていたよね。そして、僕が紹介した婚約者は、簡単に言えば平凡な、どこにでもいそうな容姿の子だった」
醜悪なのは本当ですよね。どちらかと言えば不気味な容姿だと思うのですが……まあ、醜悪なのにはかわりないです。平凡だなんて私には一生無縁な言葉ですよ……。せめて髪が綺麗な金髪ならよかったのですがね。
「それのどこが原因だと言うの?」
「ほら、君たち兄弟って美しいと評判だろう。だから、平凡な容姿の妹がいることを周りに知られたくなかった。自分たちより顔は劣るし、醜悪という噂を予め流しておいて、社交界に出て納得してもらえるように……ということらしいね」
「……意味がわからないわ」
「要するに、アリーシャだってバレた」
「影?! さっきからお前は余計なことばかり!」
うーん。なんだかよくわかりませんね。私だってバレたことはわかりました。でも、それがどうしてこんな事態を引き起こしているのでしょう?
「アリーシャ、わからないなら僕がアルベルトの代わりに分かりやすく教えてあげるよ」
「まあ、ありがとうございます、影さん」
と、いうことで、影さんに詳しく教えていただきました。
簡単にまとめると私だってバレた、とのことらしいですが、私の偽りの容姿、醜悪だという噂、社交界デビューにも関わらずきちんとパーティーに出席しなかったたった一人の令嬢……これらから、なんと私だと調べられたようです!
さらに詳しく説明すると、ルリリアたちの陰謀によりアリーシャは醜悪だという噂を流されていた。それは平凡な妹をデビューまでは隠すためであり、過度な期待を押し付けないようにするため。いざパーティーが始まると、その噂のご令嬢がどこにもいない。そのご令嬢以外は全員国王との面会。そしてアルベルトの婚約者は今年が社交界デビュー。となると、残っているのはあのご令嬢……?! まさか、アルベルトの婚約者はラングー家の!
「と、いうわけだよ! わかったかな?」
「は、はい。なんとか理解できました」
私、容姿を皆様に間違って覚えられてしまったということですね。なるほど。
「そんな……! リーちゃんは、リーちゃんはこんなにかわいいのよ! あんな残念な顔立ちじゃないわ!」
「え、普通にかわいいと思ったよ?! ルリリア、君のかわいい水準おかしいよね?!」
国王様がそう驚きになると、お姉様はテーブルにばんっと手を叩きつけられました! び、びっくりしました。カップがカチャカチャと音を立てています。
「あなたはあれなんかがリーちゃんで満足なの?! 違うでしょう! 綺麗なグラデーションの髪、宝石みたいに高貴さと愛らしさを併せ持つ夢のような瞳、白くて円やかな雪のような肌、瞬きをするだけで周りを釘付けにして、微笑んだ日には誰もがかしずく、そんな妖精の女の子なのよ?!」
「そ、そんなに誉めるの? 妹だよね……?」
「何?! リーちゃんの美しさを言葉で表せるとでも思っているの?!」
「え、もしかして今のでも満足してない……? ていうか妖精の女の子って断定なの?! 普通ような、とか付けるんじゃないの?!」
「……そんな曖昧な表現は無駄よ!」
……お姉様には、きっと私ではない別の誰かが見えているのでしょう。私のことを仰っているだなんて思えません。ああ、誰かお姉様を止めてください。




