従者の方の正体
なんて強情な方でしょう。あの後お姉様が何度も座るように促してくださったのに、頑として座ろうとなさらないんです。
やっと従者の方が座り満足したのか、お姉様はおもしろそうに微笑みながらゆっくりと口を開きました。
「風邪は引かなかったようね」
「おや、一体何のことでしょうか」
とぼけたように首をかしげました。なんて方でしょうね。せっかくお姉様が心配してくださっているのに。
きっと心優しいお姉様のことです。昨晩のことが気になって胸を痛ませていたのでしょうですからこうしてわざわざお声をかけていらっしゃるのに、ひどい方です。
確かに、昨晩はお世話になりましたよ。あの嵐の中を身一つで飛び回ってくださったのですから。私も感謝しています。受けた恩は十倍にして返しなさい、というお姉様の教えはきちんと覚えています。いつ返せばいいのでしょうか。
でも、それとこれとは話が違います。いくら恩人であろうとも、お姉様を傷つけた罪は重いです。だって、お姉様を傷つけることは、他の多くの方々を悲しませることと同じなのですよ! 私は知っています。社交界には、お姉様の親衛隊を名乗る方々がたくさん存在していらっしゃると! 老若男女を問わず、大人気なお姉様なんです。さすがです! お兄様が教えてくれました。
「もう! 私もわかっていますよ、影さん!」
そう、影さん! あの影さんです。昨晩服を用意してくださったり色々とご迷惑をかけた、あの。でも、おかしいんです……。私の記憶が正しければ、影さんは素敵なきらめく銀色の髪の方だったはず。瞳も不思議な優しいピンクと神秘的なエメラルドブルーのオッドアイだったんです。でも今は、どこにでもいそうな茶髪に、目立たない焦げ茶色の瞳。そしてなにより……身長が!
「どうすれば半日でそこまで身長が伸びるのですか?!」
おかしい……おかしいんです。確かに昨日は私も同じくらいの身長だったはずなのに、今は国王様より少し低めの、よくいる男性の身長なんです。なんて不思議! 私も身長、伸びるでしょうか?
「いや、別に半日で伸びた訳じゃないけど?! 怖いよ!」
あ、今地が出ましたね?
書いている内に、アリーシャってかなりルリリアが好きなんだなぁと再確認しました。腹黒いルリリアは、アリーシャの目にどんな風に映っているのでしょうか。
記念すべき100話目です!




