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天然お姫様(※自覚なし)は恋愛に疎いです!  作者: ももせ
2章 ガーデンパーティー
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挨拶を

 本当に美味しいです、このお菓子。おじさまがぽいぽいくれるので食べ続けてますけど大丈夫なんでしょうか? だってこれ、私用でもなければおじさま用でもありませんよね。


 それに国王様に挨拶をしたいのですがおじさまを無下にすることも出来ず…国王様に挨拶もせず目の前で国王用のお菓子を食べまくる公爵令嬢ってやばいですよありえないです。


「おいしい?」

「はい、とても美味しいです」


 それはもちろんです、聞くまでもありません。できればもっと落ち着いた場所で味わいたいところですがね…正直美味しさも半減してる気がします。


 お母様とデュークお兄様が好きそうな上品な味、すっと鼻を抜ける菓子特有の甘い香り、目の前には国王様、後ろにはお菓子を放り込む前国王様…まるで夢のような…いっそ夢であってほしい光景です。


 ちょっと現実逃避でもしましょう。そうですね…デュークお兄様…デュークお兄様は今頃何をしているんでしょう…着いた時はあんなに楽しそうだったお兄様、別れた時のあの表情はすごかったです。服が汚れるにも関わらず地面に片膝をつき右手を伸ばしたお兄様は、まるでお話に出てくる残念な男性そのものでした。


 お姉様が特別よ、といって見せてくださった本を思い出しました。浮気をした男性の妻が子供を連れて家を出ていくというお話です。その本に描かれていた崩れ落ちた男性のポーズがちょうどお兄様のような感じでしたね。


 お姉様がどこでその本を手に入れたのかは謎です。市場で見つけたらしいのですが、市場は平民がよく利用する場でありお姉様とは無縁のはず。


 それに本とは基本高価なもの、一つ一つが人の手によって作られ、とても手間のかかる上に管理が大変なので言うなれば貴族の嗜好品。貴族からすれば大した値段ではなくとも、平民からすれば値の張るものに違いありませんのに。そんなものが市場にあるなんて不思議です。


「あの…」

「どうした、アルベルト」

「いえ、そちらのご令嬢は…?」


 …まぁ、そうなりますよね。現実逃避が過ぎました、私だって初対面の人がお父様の膝の上で挨拶もなしに私のお菓子を食べ始めたらびっくりします。

 紹介してなかったっけ? と首をかしげた国王様。気にせず新しくお菓子を掴もうとするのはやめてください。私は気にします!


 とりあえず挨拶ですね。ラングー家の名に恥じぬよう立派に挨拶してみせましょうか。今更では、など思うだけ無駄です。困った時は笑えば大抵なんとかなるんですよ、ね、お姉様。

 意を決した私はおじさまの膝から降ろして頂き、不敬にならない程度に国王様を見つめました。


「お初にお目にかかります国王様、私、ラングー公爵家の末娘、アリーシャ・ファータ・シェリール・エスペーロ・ドゥ・ラングーと申します。いつも家族がお世話になっております」


 私はスカートを摘んで優雅に礼をしました。どうでしょう? 失敗はしていないはずですけど心配になりますよね。お姉様に教えて頂いたとはいえ、国王様を目の前にして冷静さを保ち完璧な淑女でいるなんて結構難題です。だって私まだデビュタントですからね、つまりはまだまだ未熟者ってことです。


 まぁでもよくよく考えれば予定がちょっと早まった程度なんですよ。結局夜のパーティーでは国王様に挨拶をするわけですし、二度手間だと考えればそこまでですが運が良かったと思っておきましょう。本番前の練習みたいなものです、失敗は許されませんけどね。


 

わざわざ時間を割いてくださったお姉様のためにもがんばりましょう! お姉様のようになるのが私の目標だったりするんですからね!


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