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天然お姫様(※自覚なし)は恋愛に疎いです!  作者: ももせ
1章 アリーシャを愛する人々
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ご挨拶を

 

 突然ですがはじめまして。私、ラングー公爵家の末娘、アリーシャ・ラングーと申します。貴族なので本名はもう少し長いのですが、たいして必要のない話なので割愛させていただきます。

 起床したばかりのためベッドの上から失礼いたします。お話が始まる前に、皆様には私のことを少し知って頂きたいのでぜひお付き合いくださいね。



 改めまして、ベッドの上からぽけっと窓の外を見つめている私ことアリーシャです。お父様の爵位は公爵、つまり王家の次に権力を持っているわけです。この国には公爵家が三つ、侯爵家が五つ、伯爵家子爵家男爵家はそれなりの数が存在している、完全なる貴族社会でございます。



 まずは家族構成。私には二人のお兄様と一人のお姉様がいます。富と名声、美貌に知識を兼ね備えた素晴らしい方々です。でも、赤の他人なのではと疑ってしまうほど私と似ていません。いいえ、私が似ていない、の間違いですね。

 さらに言うと、私地味顔なんですよ。ですが、その他が非凡なので嫌に目立ってしまいまして…。


 非凡なところ? 聞いてくださいますか、実はですね…目や髪の色がおかしいのです! お兄様方は目も髪も優しいブラウンでお父様譲り。お姉様は目はブラウンで髪はストロベリーブロンドのお父様とお母様譲り。


 なのに、私はてっぺんが薄い青、先っぽが薄い水色のグラデーションになったおかしな髪なんです! 

 目もおかしくて、なぜかブルーベリーのような色…私一体誰の子なんでしょうか? 

 私が生まれた頃、誰とも似ていない容姿を見てお母様の不貞が疑われた…という悲しい事があったそうなのですが、残念ながら詳しくは教えて頂けていないので、みなさまにお話するのはもう少し先になるかと思います。


 話を戻しましょう、つまり私の家系にこんな色を持つ方はいらっしゃらないんです。いわゆるコンプレックスとやらです。こんなんじゃお嫁にもらってくれる方が見つからないんじゃないでしょうか?



 しかもですよ! 私、さっきも言った通り地味顔なんです。異質な色に平凡な顔、悲しいですよね。後姿がすごくかわいくて顔を見てみたい、と思い顔を見たら思ったより…なんてことになるわけですよ。とんだ期待外れ、我が家の恥、それが私です。

 せめて髪は染めようと思ったのですが何故か上手くいかなくて…髪さえ染まれば普通の人に…モブEくらいにはなれる地味顔です。いえまぁ、お母様とお父様は大変美形でいらっしゃるのでそこまでひどい顔ではないですけどね。でもこの家にいると埋もれてしまうのでモブですモブ。



 ちなみにこれは完全なる余談ですが、朝窓の外をわけもなく眺めるのは私の日課です。季節関係なく起きたら窓を開け、外の空気を体に取り入れ、ふかふかのベッドに腰かけぼぉっとするのが大好きです。なんだか朝だなぁって感じがしませんか?


 そしてしばらくすると侍女がやってきて朝の準備をしてくれます。とは言っても、顔を洗って着替えるくらいですけどね。出かけるわけでもないのに豪奢なドレスなんて着ませんよ、時間がかかりますし過ごしにくいですもの。軽い素材のゆったりしたドレスを身に着ければ、後は髪を整えていただくだけです。


 なんて話しているうちに、どうやら侍女が来てくれたみたいです。叩かれた扉にどうぞ、と返事をすると、音も立てずに部屋へやってきた侍女と目が合いました。



「おはようございます、アリーシャ様」

「おはようございます、マリアさん」


 この方は侍女頭であるマリアさん。もう三十年も家で働いてくれているベテランです。真っ白の髪をお団子にしていて、優しそうな目元が特徴なんですよ。生まれた時からそばにいたため、実は家族のように思っている私の大好きな方です! あ、真っ白とは言ってもお年を召されているわけではありません。明確な年齢は知らないのですが、見た目的には五十代、といったところでしょうか。



 伝えるのが遅れましたが、今日は私の社交界デビューの日なんですよね。正式には一週間後なんですけど、他のデビュタントとの交流会が本日のお昼にあるそうで…まあ、一週間後の本番で一人にならないためのお友達作りです。

 今までお友達、というものがいなかったので、家族以外の方と触れ合うのは緊張します。


 なぜお友達がいなかったのか? それは私が公爵家の娘だからですよ。簡潔に言うと、暗殺者から身を守るため、かつ貴族間で無駄な派閥争いを避けるために、私たち公爵家の女児はデビュタントまで家族以外のものと接触することは禁止されているのです。



「アリーシャ様、少し早いのですが、デビューのお祝いでご家族がもう揃っております。なので、張り切ってご支度なさいましょうね」


 そうなんです、今日は久し振りにお兄様たちがお城から帰ってくる日なんですよ! 滅多に会えないので、お兄様たちが帰って来た時は屋敷がちょっとしたお祭り騒ぎになるんです。

 最近はお姉様もお忙しいみたいで…なので家族全員が揃うのは本当に珍しいことなんですよ。



「本日のご予定はガーデンパーティーだけですので、春らしい明るいお色のドレスにいたしましょう。アリーシャ様の御髪にはどの装飾がよろしいでしょうかね。青の装飾にすれば、アリーシャ様のグラデーションの御髪に映えませんし…」


 はい、長いので省略いたします。ちなみに、今日のドレスはいつものような簡素なものではなく、それなりに煌びやか、かつ軽い素材でできたAラインのドレスです。お兄様が用意してくださったものなのですが、オレンジの下地に淡い黄色のレースが幾重にも重ねられた、シンプルながらガーデンパーティーにふさわしいデザインのものですね。ドレスと同じ色味の髪飾りとイヤリングなどのアクセサリーは別のお兄様が用意してくださった数々です。

 新しいオーデコロンはお母様から、春らしいきつすぎない香りはさすがお母様。長時間立ち続けても足が疲れないよう特殊な加工を施しつつ、細かなレースで縁取られた精緻な靴はお父様からです。あぁ、お姉様からは、即位されたばかりの国王様とお話する整理券なるものをいただきました。なぜ整理券なのでしょう?


 全くわからないのですが、あまり興味はありません。世の中の女の子はみんな王子様に憧れる? そんなわけないですよね。

 一応公爵家なので、お兄様やお姉様は国王様と親しいらしく。なので国王様のことをたまに教えてくださるのですが、話に聞く限りなんというか…少し残念な方、という印象がないこともないような…あ、これは内緒のお話ですよ?



 それに、さっきから言っている通り、私は一部が派手なだけの平々凡々な顔立ちですし…ほら、どの書物を読んでも王子様の隣にいるのは身も心も美しい人でしょう? 


 いえ、ネガティブというわけではないんです。誰だっておかしな容姿の人間と親しくなりたいだなんて思うわけないですよね、とそう思うだけなんです。


 単に髪が青い、という方は多いんですよ。でもグラデーションというのは聞いたことがありませんし、見たこともありません…隣国やもっと遠い国へ行けば似たような髪の方と出会うかもしれませんが、この国では私一人だけだと断言できます。


 せめてお姉様やお父様、家族の誰かに身に青を持つ方がいらっしゃれば気にすることもなかったでしょうね…家族で一人というのは案外寂しいものです。


 それにいざガーデンパーティーに出ても、きっと誰とも親しく出来ないんだろうと思ってしまいます。見た目のせいにするのは良くないとはわかってはいるのですが…でもやっぱり人間第一印象は大切ですよね? 第一印象で無理だと思ってしまった方と親しくなる…それってとても難しくないですか?

 正直私なら見た目がおかしい人に近づきたいとは思いません。だって怖いですもの。



 …ふぅ、悪い方へ考えても仕方ありませんね。みなさんをお待たせしてしまっているのですから少し急ぎましょうか。



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