科学的彼女3(八百文字お題小説)
お借りしたお題は「紫外線」です。
僕の彼女は理系女子。
会話が難解な事が多い上に、エンストした自動車を見かけたり、点滅している外灯を見かけると放置しておけない。
折角の楽しいデートが中断してしまう。
だが、それでもいいと僕は思っている。
そんな彼女に惹かれたのだから。
「紫外線は波長が10~400 ナノメートルで、可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波の事を言うの。一般的に誤解されているけれど、決して紫色の光ではないのよ」
晴れ上がった日のデートで不意に彼女が語り出した。
「紫外線は総じて有害な光線だけど、皮膚におけるビタミンDの生成に関してだけは有用ね。UVB照射時間が短い事がビタミンDの欠乏を起こし、アメリカで何万もの死者が生じていると唱える学者もいるくらいよ」
紫外線がビタミンDの生成に関係しているのは僕も知っている。
「人間の場合、午前十時から午後三時の日光で、少なくとも週に二回、五分から三十分の間、日焼け止めクリームを塗らないで、顔、手足、背中への日光浴で、十分な量のビタミンDが体内で生合成されるわ」
「なるほど」
つい感心してしまう僕。すると彼女は非常に嬉しそうに微笑み、
「比較的日照時間が長い日本においては、日照不足によるビタミンD欠乏症は稀で、日常生活におけるわずかな紫外線と食生活でビタミンDを十分生成することができるから、あまり深刻に捉える必要はないわよ」
また感心してしまう。
「過度の日焼けはむしろ有害だから、紫外線が強い時期に日焼け止めも塗らずに日光浴をするのは皮膚にとって害にしかならないわ。昔は、真っ黒に日焼けした子供は健康の象徴みたいに言われたけど、今は違うわね」
子供の頃、友達とどちらが黒いか比べっこしていたのは実は危険だったと知り、嫌な汗が出る。
「もう十分紫外線を浴びたから、建物の中に入りましょう」
彼女はハンバーガーが食べたかったみたいだ。
恥ずかしくて言えなかったのだろう。
ますます可愛くなって来た。
こんな彼女はいかがですか?