復讐の始末
Epilogue.
遥、竹浦、和哉、祐輔、柳川の証言により、一連の事件は内部抗争ではなく、橘緑の私怨に因るものとして、被疑者死亡で送検される事となった。
柳川は、入院先の関西赤十字病院にて、大阪府警本部長、立会いのもと解散届けを提出した。
遥は、葵と共に横浜に向けて、新幹線の中に居た。
竹浦は、大阪のマンションの後始末の為に残った。
「婆様、どうしてこんな事になったの?」
「遥さん、橘の家はね、平安の昔から続く一族です。安倍清明を知ってる?」
「聞いた事は、あります。」
「橘は、安倍清明に仕えていた一族だったのです。政敵や邪魔者を闇に葬る暗殺を生業とする者です。その技は、代々受け継がれて来ました。今までずっと…」
「ずっと?」
「ずっとです。私もその技を受け継ぎ、緑にも伝えました。そして、貴女にも伝える筈でした。しかし、貴女が生まれた時、貴女に技を伝える事を頑なに拒んだのです。緑の頑なさに私も、もういいのかと、私の代で全て終わらせようと考えていたのです。」
「婆様…」
「緑も一族の歴史など忘れ、幸せな日々を送って行く筈でした。ところが、貴女の父親の龍興さんの会社が、中国企業に買収される事になったのです。しかも、その企業はマフィアのフロント企業で、龍興さんは、ほとんど、無一文で放り出される格好でした。緑が、東郷と中国マフィアの取引を襲ったのは、そういう訳だったのよ。」
「もういい…もういいよ。」
「そうね、もう忘れなさい。貴女は、これからの自分の人生を考えなさい。」
遥は、葵の声を聞きながら、流れる景色を見つめていた。
まず初めに、
拙い文章に、お付き合い頂きありがとうございました。
今回、この物語を書くにあたり、2つのアプローチを試してみました。
1つは、明確な主人公を置かずに物語が成立するか、という事、一応は遥が主人公と思えますが、彼女はほとんど何もしていませんね。
もう1つは、時間軸を明確にしないという事です。
お気づきとは思いますが、この物語は、ほぼ24時間のお話しです。
地の文を、極力減らし、台詞を多くして状況の受け取り方は、読み手に丸投げというメッセージ性ゼロの仕上がりになってしまいました。
次回は、もう少ししっかりした物を書きたいと思います。
陵凌