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やはりダメだった。
原田は綺麗好きなのだ。
君島を右のベッドと思われる大型の置物に放り出し、整頓だけだ、と働き始めた。
本格的にはやらない。
物の居場所を決めるだけだ。
しかし始めた時点で朝方だった。
終る頃にはすっかり日が昇った。
君島は時々唸りながら泣きながら寝返りをうち、原田はぶつぶつ文句を言いながら掃除を終えた。
飲み物でも貰おうと冷蔵庫を開けるが、先月の日付の牛乳が飲みかけであるだけ。
腹が立つ。
掃除機もない。
洗剤もない。
ぞうきんもない。
粗品のタオルを3本つぶした。
それでもこの程度。
「おい。もう帰るぞ。鍵開けっ放しだからな」
どうせ聞こえないだろうといつもの低い声で言った。
「……ろしてやる……」
原田側に寝返りをうって、君島が呻いた。
「……くしょう……」
そう呟いてまた涙を流した。
原田はそれを眉間にシワを寄せて見下ろしていた。
君島の部屋から出てバイクを発進させ、なんとなくコンビニに寄る。
原田はため息をついて、インスタントのシジミ汁を手に取った。
君島はあの小ささでも充分目立つ。
それは気の毒だ。
あんなハゲに迫られるくらいならでかい方がいい。
しかし俺ならあんなところでハゲに裸を見せることは絶対ない。
いや別に危険だから裸にならない訳じゃないが、俺には起こらない事件だ。
君島が油断したせいとは言わない。
君島もハゲに迫られるつもりであそこに行った訳でもない。
この手の犯罪は完全に加害者が悪い。
たとえ君島が素っ裸で転がっていても、手を出す方が100%悪い。
ただ用心できるならしないのは損だ。
自分が損なわれる。
それだけだ。