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a night and day  作者: co
2/11

 鳴り続ける電話を無視し、キッチンで冷蔵庫から麦茶を出し一口飲む。

 何度も鳴り、切れ、再度鳴り出すこと五回目でしかたなく原田は携帯を取った。


「なんだよぉ~~~~~っ!何ですぐに出ないのさ~~~!!!」

「何時だと思ってるんだ」

 携帯に向かって言った。

 君島の声がでかいので、耳から離している。

「知らないよ~!僕はもう、死ぬんだからねっ!!」

「あ~」

「なんだよそれっ!どうせ嘘だと思ってるんだなっ!」

「嘘じゃなきゃいいなと思ってるよ」

 小声で言った。聞こえるとまたうるさいからだ。


「さいてーだよぅ……。こーいち、一緒に飲もうよ」

「やだ」

「来てよ」

「やだ」

「死ぬぞぉ!本気だからなっ!!」

「お前、どこにいるの?」

「もう死ぬからね!明日僕の死体が大浴場に浮いてるんだ!引き取りに来てよ!!」

 あ~……鬱陶しい……

「どこだよ。通報しといてやるよ」


 電話の向こうでなにかガタガタという音が聞こえ、しばらくしてから通話が切れた。

 しばらく原田も、通話の途切れた携帯を見つめた。


 おおかたいつもの大浴場つきカプセルホテルなのだろう。

 酒に弱い君島は、飲んだ後自分の部屋にたどり着けないことがしばしばあるらしい。

 そういうときに必ず利用するホテルがある。

 遺体となって大浴場に浮いた場合、俺に連絡が来るんだろうか?

 君島の身内は横浜だ。

 身元確認に他の知人が呼ばれるかも知れないし俺の可能性もある。

 溺死体。


 原田は大変臆病な性格で、常に最悪を想定してそれを回避する道を選んで生きてきた。

 今回はとりあえず溺死体の身元確認の回避。

 またジーンズをはきブルゾンを着込みヘルメットを持って、君島がいるであろうカプセルホテルに向った。


 深夜、というよりもう早朝。カプセルホテルのフロントには誰もいない。

 原田はこの手のホテルを利用したことがないのだが、こんな無用心でいいのか?と思った。

 簡単に盗みに入れそうだ。

 とりあえず、溺死体の有無の確認をしようと大浴場を探し扉を開いた。

 ほとんど人がいない。

 二人、三人、寝ている。

 寝て、……


 原田は一度扉を閉めた。見なかったことにしようかと思った。

 君島が太ったハゲ親父に、着ているシャツのようなものを脱がされているところだった。

 君島は意識がないようだ。

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