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その5『俺は騎士団長にメイドの所在と隠し通路について話し、第一王子と宰相を呼んだ』

 

 鉄格子が軋む音が地下牢に響き渡った。


「ガイ、起きろ」


 暗闇から現れたのは、アーサーだった。王城騎士団長の彼の顔には焦りが見えた。


「アーサー?もう処刑の時間か?」


「違う。時間がない。お前の言った通り、隠し通路はあった。そこにあった。これを見ろ」


 アーサーが差し出したのは、小さな革表紙の本だった。


「レオ殿下の日記だ」


 俺は急いで頁を開いた。第二王子レオ殿下の殺害。それが俺の罪状だ。王国でも五指に入る実力を持つ暗黒騎士である俺が、なぜ王子を殺す必要があったのか。ここ数か月、王子とあった光景がよぎった。…そういえば、あのメイド。彼女をしばらく見ていない。


「メイドのミレイとのこと。それに関連する記述はあるか?」


 アーサーは頷き、日記をめくっていった。そして、特定のページを指さした。


『今日もミレイと密会した。隠し通路を使えば誰にも気づかれない。彼女の笑顔は太陽のようだ』


 ページをめくると、さらに衝撃的な記述があった。


『ミレイが隣国の間者だと宰相が告げてきた。信じられない。証拠はあるのか?』


『証拠は動かぬものだった。ミレイは隣国からの密命を帯びた刺客だ。だが、私は彼女を愛している。どうすればいいのか』


「レオ殿下はミレイと恋仲だったのか…」


 俺は呟いた。そして、日記の最後のページには衝撃的な記述があった。


『ミレイは私を殺すために近づいていたのだ。宰相が全てを教えてくれた。隣国は我が国を内側から弱体化させようとしている。だが、ミレイは本当に私を愛していたのだろうか?彼女の目に見た感情は嘘ではなかったはずだ。明日、真実を確かめるためにガイを呼ぶ。彼なら信頼できる』


「これは…レオ殿下は自分が殺されることを知っていたのか?」


 アーサーは厳しい表情で頷いた。


「どうやら宰相は王子を守ろうとしていたようだ。しかし…」


 その時、新たな足音が聞こえた。地下牢の入口から現れたのは、宰相ベリルだった。


「探していたものが見つかったようだな」


 老獪な政治家の顔には疲労の色が濃かった。


「宰相殿、これは何の意味だ?レオ殿下はミレイが間者と知りながら会っていたのか?」


 宰相は長い沈黙の後、ため息をついた。


「レオ殿下はミレイを愛していた。彼女が隣国の刺客と知った後も。私は証拠を見せ、警告した。だが、王子は彼女を信じ続けた」


「そして殺された」


 アーサーの声は冷たかった。


「私が遅すぎたのだ。殿下がお前を呼び出した時、私も急いで部下を向かわせた。だが、そこにいたのはガイと…死体だけだった」


「なぜ私に罪を被せる?真実を明かせばいいだけだろう!」


 俺は檻の格子を掴んで叫んだ。


「国の威信だ」


 宰相は静かに言った。


「王子が敵国の間者に心を奪われ、殺されたとなれば、王家の恥となる。それに、民衆が隣国への復讐を叫ぶだろう。戦争だ」


「だから私を犠牲にするのか?」


「申し訳ない、ガイ殿。だが、国のためには…」


「待て」


 新たな声が響いた。第一王子ガレスが現れた。


「弟が何を考えていたのか、やっと分かった」


 ガレスの表情は悲しみに満ちていた。


「ミレイが最後に私の前に現れた時、彼女は涙を流していた。レオを本当に愛していたのかもしれない。だが、彼女の任務は変わらなかった」


「殿下、真実を公表するのは…」


 宰相が口を開いたが、ガレスは手で制した。


「いいえ、ベリル。これ以上の嘘はない。父上にも全てを話した。ガイの無実は明らかだ」


「王は…?」


「父上は悲しんでおられる。だが、真実を受け入れられた。ガイ、お前を解放する」


 檻の鍵が開けられる音がした。俺は呆然と立ち尽くした。


「ガイ殿」


 宰相が言った。


「レオ殿下はお前を信頼していた。最後の日記にあるとおり、彼はお前に真実を告げるつもりだったのだろう。だが…間に合わなかった」


「王子は私に何を期待していたのだろう」


「おそらく、真実を突き止めて欲しかったのだ」


 アーサーが言った。


「お前なら隠し通路も見つけられる。ミレイの正体も暴けると」


「それとも…」


 ガレスが言葉を継いだ。


「自分の死の後、罪を被ってくれる忠実な騎士を探していたのかもしれない。弟は複雑だった」


 俺は檻から出て、自由の空気を吸い込んだ。


「ミレイは今どこにいる?」


「行方不明だ」


 宰相が答えた。


「任務を果たした後、隣国に戻ったか、あるいは…」


「探し出す」


 俺は決意を固めた。


「レオ殿下の真の仇を見つけ出す。それが暗黒騎士としての私の最後の務めだ」


「一人ではない」


 アーサーが肩に手を置いた。


「協力する」


 ガレス王子も頷いた。


「王国としても、この事件の真相を突き止めねばならない。だが、表向きはお前の無罪を公表するだけだ。復讐は密かに」


「理解した、殿下」


 檻を出る時、日記の最後の一文が脳裏に浮かんだ。


『ガイなら信頼できる』


「レオ殿下、必ず真実を明らかにします」


 俺は心の中で誓った。


 断頭台への道は回避された。だが、新たな戦いの道が始まろうとしていた。


 ---


 牢獄の外の朝の光は、想像以上に眩しかった。


 アーサーとガレス王子が俺の両脇を固め、宰相は少し離れて歩いていた。民衆の前で、第二王子殺しの罪から解放されるという宣言を受けるために、広場へと向かう。


「あの隠し通路はどこに通じているのだ?」


 俺はガレス王子に尋ねた。


「王城の外、森の小屋へ。祖父の代から、非常時の脱出路として使われていた」


「そこで二人は会っていたのか…」


「そのようだ。宰相の調査では、ミレイはその小屋で隣国の使者と接触していたという」


「レオ殿下は知っていたのか?」


「最後は知っていただろう」


 宰相が後ろから言った。


「私が証拠を見せた後も、彼女に会い続けた。恐らく、真実を確かめたかったのだ」


「そして、確かめた結果が…」


 誰も言葉を継がなかった。


 広場に着くと、王が玉座に座っていた。俺は王の前にひざまずいた。


「暗黒騎士ガイ、汝は無実であった」


 王の声が響き渡る。


「我が息子レオの死の真相は別にあり、汝を処刑することは誤りであった」


 歓声が上がる。だが、俺の心は晴れなかった。


 レオ殿下は何を考えていたのか。俺を信頼していたのか、それとも単に便利な駒として見ていたのか。


 真実はまだ闇の中にある。


 ミレイを見つけ出し、全てを明らかにする。それが俺に残された使命だ。


 俺は空を見上げた。断頭台から解放されたが、新たな旅が始まろうとしていた。


「レオ殿下、あなたの真の願いを必ず見つけ出します」


 ―終―

プロンプト『

『断頭台に向かう三分前』~処刑が決まった暗黒騎士の俺だがベストエンドのフラグは建てられるのだろうか~。俺は暗黒騎士ガイ。第二王子殺害の罪で投獄された。今日は俺の処刑日。脱出するのは簡単だ。俺が本気を出せば、こんな檻造作もなく壊せる。だが、誰が王子を殺したのか。あの日、急な呼び出しで王子の私室へ向かった。ノックをして、返事がないまま扉を開けた時、王子はすでに床に倒れていた。胸に突き刺さった短剣から血が広がり、赤い絨毯はさらに濃い色に染まっていた。 その瞬間、衛兵たちが駆け込んできた。状況証拠は完璧だった。王子の部屋で、死体の前に立つ俺。手には血が付いていた—扉のノブについていた血を素手で触ってしまったのだ。 裁判とは名ばかりの茶番劇の末、判決は「明日の朝、斬首刑」。

 俺の選択:俺はアーサーにメイドの所在と隠し通路について話し、第一王子と宰相を呼んだ。

 このプロットを元にミステリーファンタジー短編小説を書いてください。

展開:処刑前にアーサーは日記を見つけてきてくれた。俺たちはそれを見る。そこにはミレイの正体が書かれていた。彼女は隣国の間者だった。それを告げたのは宰相だった。彼は第二王子を守ろうと真実を告げていた。真実を知りつつも、レオは殺されると分かっていたようだった。そして、この真実を突き止めてくれるのは俺しかいないと思って俺を呼んだのか罪を被ってくれる人間を探していたのか。それは定かではなかった。

登場人物

・暗黒騎士ガイ:物語の主人公。第二王子の腹心。第二王子殺害の罪を着せられる。実力は王国でも五指に入る。

・第二王子レオ:殺害された第二王子。正義感が強く、知力武勇とも王に相応しい。 日記にミレイとの恋仲について書いていた。そして…彼らの密会の場所として、隠し通路を使っていた。王子はミレイの正体について発見したが…。

・王城騎士団長アーサー:ガイの戦友。

・宰相ベリル:いつも第二王子の改革案に反対していた老獪な政治家。第二王子とミレイの関係について何か知っている。

・第一王子ガレス:表向きは王位継承権一位。王子の部屋に隠し通路があることを知る人間。レオの死の少し前にミレイを見たようだ。

・ミレイというメイド:第二王子と仲がよかった。先月突然姿を消した。

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