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 私は翌朝も王宮に行った。


 と言っても、多忙な両親の代わりに専属メイドのララやイーラの2人も一緒だ。外には護衛騎士のロキが騎乗で付き従っている。兄も心配して防御魔法が付与されたペンダントを贈ってくれた。


「お嬢様、殿下と婚約なさったとは聞きました」


「そうよ、私はそんなに乗り気ではないけど」


「何でかと訊いても?」


「……私、まだ四歳なのに。こんなに早く婚約者を決めなくてもいいと思ったのよ」


「はあ、それだけ、お嬢様が旦那様方は心配なんですよ」


 ララは苦笑いしながら言った。イーラもちょっと困惑している。ちなみに、二人は双子で年齢は私より七歳上の十一歳だ。まあ、まだメイド見習いの域を出ないが。

 けど、ララは体術が得意でイーラも短剣や弓矢が得意で。メイド兼護衛を任されている。


「それはそうと、ララにイーラ。王宮に着いたらお願いね」


『分かりました』


 私が改めて言うと。二人は真顔になり、頷いた。同時に馬車が停まったのだった。


 王宮に着いたら、先に降りたイーラに助けられながら下車した。ここで護衛のロキや御者のジョゼとはしばらくのお別れだ。ララやイーラと三人だけで王宮の回廊を歩く。

 少し進むとロイエル殿下付きらしき侍従が出迎えてくれた。


「ようこそ、いらっしゃいました。シャロン様」


「わざわざのお出迎えをありがとう」


「いえ、差し出がましいかもしれませんが。殿下のお部屋まで案内致します」


「分かりました」


 頷くと侍従は一礼して、踵を返す。ゆっくりと歩き出した。私はララ達と一緒に付いて行ったのだった。


 十分程は歩いたろうか。侍従は豪奢なあるドアの前で立ち止まる。ノックをして声を掛けた。


「殿下、スダン公爵令嬢がいらっしゃいました」


「……分かった、入ってくれ」


 中から少年特有の高らかな声で返答がある。侍従はドアを開けてくれた。


「シャロン様、どうぞ」


「失礼します」


 私は一言ことわってから、殿下の部屋に入った。ララやイーラは廊下で待機だ。ちょっと、深呼吸したのだった。


 殿下の応接間とおぼしき部屋に足を踏み入れる。


「やあ、昨日ぶりだね。シャロン嬢」


「こんにちは、ロイエル殿下」


「……ううむ、まだ君と出会ってからそんなに経ってはいないけど。堅苦しいのも何だし。僕の事はエルでいいよ」  


「分かりました、エル様と呼ばせていただきますね」


「君はカロンと呼ばせてもらうよ、いいかな?」


「構いません」


 私が頷くと三人掛けのソファーからロイエル殿下もとい、エル様は立ち上がった。こちらにやって来て片手を差し出す。


「あの、エル様?」


「一応、エスコートだよ。カロン」


「はあ」


 私は驚きながらもエル様の右手に自身のそれを重ねた。キュッと握られる。エル様は先程に座っていたのとは向かい側のソファーまで連れて行ってくれた。素直に従い、腰掛ける。

 エル様も対面で座った。テーブルの上にあった銀製の鈴を鳴らす。メイドが入って来た。

 手早く、お茶やお菓子を用意してくれる。メイドは一礼して部屋を退出した。


「さ、君が好きな桃のタルトやコンポートを用意させたよ。食べてくれるかい?」


「……いただきます」


 私はテーブルにある桃のタルトやコンポートに見入ってしまう。キラキラと宝石みたいな鮮やかさはないが。上品なピンク色の果実を長い時間煮込んだコンポートは小皿に盛り付けられていて。タルトも三角形に食べやすいように切り分けてある。小さなお菓子用のフォークを手に取り、タルトのお皿を引き寄せた。一口大に切って食べてみる。ホロホロと崩れる下のクッキー生地は適度にサクサクしていて。中の桃の果実やゼリーは甘酸っぱいながらにあっさりしていた。柔らかくもあり、飲み込むと。口の中から芳香が鼻腔に抜けていく。


「美味しいです、エル様」


「良かった、気に入ってもらえたようだね」


 私は二口、三口と食べた。お茶で喉を潤す。エル様もちびちびとコンポートを食べる。しばらくは話をしながら、お互いにタルトなどを味わったのだった。



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