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 私が悪役令嬢に転生したと気づいたのは4歳の春だった。


 ちなみに、王宮の庭園にて婚約者の王太子殿下と引き合わされた時にだ。私の後ろには両親が佇み、見守っている。父がサリディオ・スダン公爵で母はメルアという。

 王太子殿下の後ろにも国王陛下と王妃殿下が佇んでいた。陛下がルキウス様で王妃殿下はレーツェル様とおっしゃったか。

 王太子殿下もロイエル様と言ったかな。王太子殿下もとい、ロイエル殿下は私より3歳上の7歳だ。緩くウェーブした金の髪を短く切り揃え、白く透き通った肌、淡い水色の瞳の目を見張る美少年であった。陛下も濃い目の金の髪に赤紫色の瞳、軽く日に焼けた肌が印象的な美男だ。まあ、ロイエル殿下よりはワイルドな雰囲気の方だが。王妃殿下は赤銅色の鮮やかで真っ直ぐな髪に水色の瞳、白い肌の朗らかな美女だ。

 やはり、お二人共に1枚の絵画のようにお似合いである。見惚れていたら、母に軽く睨まれた。仕方なく、膝を落としてカーテシーの姿勢を取る。


「……初めまして、僕は王太子で名をロイエル・オリビエと言います。以後お見知り置きを」


「初めてお目にかかります、私はスダン公爵が娘で名をシャロンと申します。以後お見知り置きを」


「シャロン嬢、これからもよろしく頼みます」


「はい、殿下」


 自己紹介が終わり、双方の両親も和やかに笑う。


「うむ、公爵に夫人。大人がいても子らには退屈だろうし」


「ええ、わたくしもそれは思いました」


「は、御意に。陛下、妃殿下」


「分かりました、では。我々は一旦、失礼致します」


「今日はご苦労であった、スダン公」


 陛下が両親にそう言う。王妃殿下もこちらに笑いかけた。


「わたくし達は中に戻るわ、シャロンさんを頼みましたよ。ロイエル」


「はい、分かりました。母上」


「ではね、シャロンさん」


 私は返事の代わりに再度、カーテシーをする。王妃殿下は陛下や両親と一緒に中へと戻って行ったらしい。庭園にはロイエル殿下と私、侍女や護衛騎士だけが残された。そっと息をついた。


 ロイエル殿下は私を連れて歩き出す。二人でしばらくは無言でいた。けど、ロイエル殿下はだんまりのままは嫌だったのか。つっかえながらも話しかけてきた。


「……シャロン嬢、あなたは何か好きな物はありますか?」


「好きなものですか?」


「はい、例えば。食べ物とか花とか」


「……そうですね、食べ物なら。桃のコンポートやタルトが好きです」


「成程、分かった。また、王宮に来てくれたら用意しますね」


 殿下は頷く。私はまだ、深い意味は分からない。それでも、好きな物を彼が知ろうとしてくれた事には素直に嬉しくなる。しばらくはぽつぽつと散策しながら話を続けたのだった。


 この日は夕方まで王宮にて過ごした。陛下や王妃殿下は「明日も来て欲しい」と言ってくれたが。両親は困惑していた。

 それでも、王族の命である。仕方なく、私を王宮に行かせる事を承諾した。馬車に乗り、私は両親と共に自邸に戻った。


「シャロン、殿下に気に入られたな」


「そうみたいですね」


「……本当に、私はシャロンが心配です。大丈夫かしら」


「お母様」


「あなたは昔から、どこか危なっかしい所があったわ。母としては殿下に粗相をしやしないかと気が気じゃないの」


 私は確かにと思った。さすがに母親はよく見ている。ちなみに、私は外見こそ美形な両親に似て、それなりではあるが。父譲りの真っ直ぐな銀髪に母譲りの鮮やかな朱色の瞳が特徴的な美幼女だ。父は銀髪を短く切り揃え、水色の切れ長な瞳が怜悧な印象を与えるクール系美男で。母は緩くウェーブした赤茶色の髪に濃い朱色の瞳が印象的なセクシー系美女だ。

 しかも、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる。ナイスバディなスタイルであった。

 これで七歳の息子や四歳の娘の二児の母なのだから、凄いとしか言いようがない。


「シャロン?」


「ごめんなさい、お母様。考え事をしていました」


「ふふ、案外おませさんねえ」


 母が微笑ましそうにこちらを見た。優しく、頭を撫でてくれる。しばらくは母の手の温もりを感じながら、大人しくしていた。

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