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幻滅の方法

本当に世間知らずで何もかも分からなかった。

専門学校行ってた頃、私はバイト2つ掛け持ちしていた。1個はファミレス。

もう1個は専門の友達(または料理長)に

「人が足りてないから来て欲しいんじゃけどええ?」

と頼まれた時だけ式場の調理場のバイトをやっていた。


1年の秋

料理長が定年で退職するらしい。(最初の料理長はA料理長としよう)

「御尻織〜、A料理長定年だって。」

聞いた時はびっくりした。定年の歳には見えなかったから。というかもっと上だと思っていたw

「え!そうなん!?いつ?最後の日は!?」

「日曜日!」

「来てって言われてないよ!勝手に入ってええんかな?」

「えかろ〜。あたしも行くけん御尻織も来てんや!」

「絶対行くわ!」

(あの常に血走った白目と白内障を、最後に見よう…)

←どんな印象だよw

この時の料理長は娘さんがいて、私が母子家庭だと知ってからめちゃくちゃ優しく(普段から優しかったけど)してくれた!プチケーキのあまりくれたりとか♪


当日行ったらA料理長は喜んでくれた。

「ぺし子!?あれ?今日来てって言ってなかったよなぁ?」

「はい!でも定年と聞いたんで最後に来ました」

「お前はァ!!そんな…、ええのに〜!」

「あははw」

その後、友達がひっそり、

「パートさん達が花束用意しとるけん、後で御尻織もお金集めていい?」

私は喜んで支払うぞと思った。今まで、昼ごはんを作ってくれたり、包丁の使い方を教えてくれたり、めっちゃ良くしてくれたから。

「全然払うって!」

「おい!声がデカイw」

手でオッケーしながら答えた。

帰る前、パートさん達が隠していた花束を渡していた。

「今までお世話になりまして、ありがとうございました。これからも元気でいて下さい」

一番長く務めていたパートさんが泣きながらA料理長に渡した。

A料理長もみんな涙ぐんだ。


次の週から運営会社の総料理長が来てたので挨拶した。

そんでA料理長もいた。

「え!A料理長!?なんでいるんですか!?」

「ぺし子!?お前はなァ!」

よく頭を軽〜く叩かれてたんよねw

「……俺が来ちゃ悪いか?あんなに可愛がってやったのに……私、悲しいわぁっっ!!」

「ええ〜!いや、だってぇ!はっはっはっww」

A料理長の大袈裟に泣くフリww 面白くて笑ったw

「冗談じゃってw1週間は引き継ぎでおるから一回か二回はまた顔合わせるけぇ」

「すみません、明日からは平日で学校なんで、放課後も他のバイト入っますね!」

「え、あ、そ、そうか( ˊᵕˋ ;)これから学校頑張れよ」

「はい!ありがとうございます!頑張ります!」

「お前はなァ……。なんか、もうちょっと寂しがってもええと思うんじゃけどなぁ(^_^;)まぁ、それがぺし子らしいんじゃけどなw」

(専門の同級生に「気持ちの切り替えが普通の人より早すぎてなんか怖い。表情もたまに演技っぽく見えるし。何か抱えている事とかないん?何かあったら言ってな。いつでも話し聞くけん!」って言われたのはこういう事なん?)

と疑問の答え合わせが出来そうで出来なかった。

(←この辺もその内書けたら書きます)

その後は私は自分の仕事をした。A料理長が総料理長と話しているのがちょくちょく目に入るので、段々くなった。

総料理長は60代前半で背が高くてお腹だけが出てて毎日コカ・コーラを飲んでいた。人当たりが良くて場を和ませるような人だった。パートさん達にも好印象だった。

「ワシ何歳に見える?」と聞かれた時に「60ですか?」と言うと「いつもはもうちょっと(わこ)う見られるんやけど…。そうか( ̄▽ ̄;)」とショックそうだったな笑

遠くから遠征に来ていて、1週間後にまた他の料理長が来てもらって教えて、あとは任せるって感じらしい。

総料理長は会社が運営する式場全部の料理を取り仕切っている人なので他がどういう様子か知っててバックヤードを見た時に言っていたのが、

「なんやここ壁も剥がれとるし汚いなぁ( ˘•ω•˘ )ワシは好かん」

パートさんも激しく同意!

私は慣れてしまっていたが、最初は汚好きでも汚いと感じるレベルだった。調理場がカビだらけだったりした。

1週間後、他の料理長(B料理長とする)がやって来た。

B料理長は40代前半でめっちゃイキイキしてる感じというか、ギラついてる感じ?

「え〜これからどうぞ!よろしくお願いします!」

いちいち声が大きいw そして、慣れた頃には

「ちょお、ちょお!俺、何歳に見える?」

とみんなに聞きまくっていたwww←あっちではお決まりの挨拶なんかな?イキイキしすぎてイントネーションが強調されまくってたのが笑けたw な↓ん↑さ↑い↓wこっちの“うるさい”と同じイントネーションwww

B料理長のキャラが強すぎて圧倒された私は上手く喋れなかった。なんかやりずらいなぁ、と。

パートさん達もB料理長の調理場の模様替えによって物の場所が分からなくなりてんやわんやして不満が溜まってしまっていた。模様替えは導線的には正解で良くなったはずだったが、問題があればその場その場で変えてしまうので更に混乱していた。口癖なのか、「臨機応変やで!」と良く言っていたが今思うとその場しのぎの言い訳だったのかぁ。

B料理長がたずねてきた。

「ぺし子、コミュニケーションって知ってるか?」

「知ってます!喋ることですよね!」

「ちゃうわ( ̄▽ ̄;)そっちの意味もあるけどそっちやない」

「どういう意味ですか?」

「う〜んと、まぁ自分で良く考えれば分かる!こういう事は自分で理解出来んとな!」

「分かりました!」

「ほんまに分かっとんか?(ー_ー;)」

元気よく返事しておいて言うのもなんだが、私にはなんのことかさっぱり分からなかったw

ある日、総料理長が様子を見に来ていた。

「明日にはまたあそこ行って、その後すぐ帰って────、はぁ〜。今週むっちゃ忙しいねん。ここの皆さん喋ってくれるし、来たらええ雰囲気やなって思うで!癒されるし!」

と笑っていた。

総料理長の笑顔は歯が出て「ニカッ」ていう感じ。

その後パートさんに「褒められましたね!」と言うと、

「あれはあの人なりの気遣いなんよ。愚痴ばっかり言っても駄目でしょ?う〜ん、ぺし子には分からんか。ほんまにええ人よ?」

この時は本当にわからなかったが、思い返せば「あちこち行ってしんどいし疲れる」は「ココに来ても疲れる」と下げることにもなるから褒めて上げるという先を読んだ気遣いだった。1歩間違えば嫌味に聞こえそうだがそういう感じも出さないように喋ってくれていたんだなと。

総料理長も結構私の事を気にかけてくれててたまに声を掛けてくれたりした。

「上に立つなら人を知れ、やからなぁ。まずはその人のことを知ろうとするのも上の仕事なんや。ワシは結構周りの人と会話しとるやろ?仕事するにも信頼関係が大事やで。信頼関係って分かるか?ぺし子はワシの事信用できるか?はい、とか嘘をついたらいかん。ワシは上の立場やから信頼出来るんであって、ワシがもしも調理師免許もないパートで入ったオッサンやったらどうや?ぺし子は女性やし余計信頼なんか出来ひんやろ?あとな、総料理長とか偉そうな役職には就かせてもろとるけど、ワシはココでは一番新人なんや。パートの皆さんは長く勤められている方が多いやろ。ココのことは皆さんの方がよう知っとる。分からんことは自分から聞いていくのも新人の仕事やとワシは思っとる。ぺし子、人とそうやってコミュニケーションを取らなあかんで?ぺし子はワシの先輩やろ?いつまでもモジモジしとったらあかんのやで?( ᵕᴗᵕ )」

B料理長が言っていたコミュニケーションの話しは総料理長からの受け売りだったんだなと思ったけど、それ以上に上の立つ人の器を持ってる人と初めて関わって総料理長の事は人として尊敬していた。

親しみはA料理長の方が遥かに上だったけど、言葉で分かり易く(ちょく)で教えられる頭の良さとかそういうところでも尊敬した。

私は図星をつかれて「えへへ」と笑うだけだった。

「可愛らしい笑顔やなぁ。ぺし子は地頭はええと思うで」

と優しく頭を撫でられた。

料理長という立場の人は、父親っぽい人だったり、ポジティブで前のめりな人だったり、頭が良かったり、なんかしら長所があるんだなぁと感動していた。

この歳になって、ようやく空気が読めるようになりましたw

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