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空から乙女が降ってきた

いきなりですが初っ端から書く順序間違えました。

酔った勢いって怖いですね。

別のところで書き直した別バージョン上げるかも。

「ブルーノ小隊長どうします、このお嬢さん。見たことのない格好に聞いたことのない言語。得体の知れない乗り物に派手な装備。怪しさ満載ですけど」

 兜を外し、倒れている少女を覗き込んでいた部下が振り返る。

「敵でもなさそうだし、倒れているレディを放置するわけにもいかんだろう。拠点まで連れていく。とりあえずその乗り物はヴィクター、お前が運べ」

 興味深そうに乗り物や荷物を検分していた部下に告げると、ブルーノ小隊長と呼ばれた男は肩からマントを外スト無造作に小柄な少女の体に巻きつけ、荷物でも担ぐように肩に担ぎあげた。

 その様子をじっと見ていた数人の騎士をジロリと睨むと小さくため息をついた。

「お前らな、そんな血まみれで図体のデカイのが近づいてきたら普通の子供は怖がって気絶するのは当たり前だろ。さっさと確認と撤収の準備をしろ」


 ヴィクターが連れてきた馬に少女を乗せようとしていると後ろから声がかかった。

「小隊長、自分が撤収の指示を出すのでその子を連れて先に戻ってください。神殿に先を越されるわけにはいかないでしょう」

「そうだな、後はヴィクターとテリルで確認と撤収の指示を出してくれ。頼んだぞ」


 少女を担いだまま馬の背に乗るとブルーノは返事も待たずにゆっくり馬を走らせ始めた。

 その背を見送っていた赤髪の男はとなりの癖のある蜂蜜色の金髪の男の脇をつつくと目を丸くしたままつぶやく。

「なぁヴィクター、冷徹小隊長が女の子に気を使うなんて珍しいな」

「ちょっと雑だったけどな。テリルもやっぱそう思ったか」

 普段のブルーノならばめんどくさそうに舌打ちして部下に任せていただろう。

 それを足が見えないようにマントに包み、さっさと自分で担ぎ上げてしまったのだ。

 テリルはクシャクシャと汗で湿った髪をかき回しながら「早いとこ拠点に戻って見物しようぜ。俺は確認作業してくるわ」と走りだした。

 ヴィクターもニヤリと笑うと「面白くなってきた」とつぶやいて歩き出したのだった。


 森を抜けて街道近くの開けた場所にある拠点に戻ったブルーノは少女を横抱きに抱え直すと足早にバスフェルド領神殿の世界樹と月の紋章が入った天幕に向かう。

ここスプラング王国では最高神であり創造と破壊の神でもあるハーベイと、妹神で癒しと豊穣の女神メルナダを信仰する者が多い。

この地方で一番大きなバスフェルド国境伯領の神殿からは魔獣討伐のたびに治癒を得意とする神官とその護衛の騎士が治癒班として帯同していた。

 馬の足音が聞こえたのか、天幕の前で神官衣の細身で小柄な男とブルーノ達とは違う神殿の紋章入りの軽鎧を纏った髭の男が出迎えた。


「すまないがソラス、拾い物のお嬢さんに怪我がないか診てやってくれないか。バックス殿はお嬢さんを運んでやってくれ。俺は報告してくる」

 目を丸くしたソラス神官の後ろに控えていたバックスという名の壮年の騎士が少女を受けとる。

 少女は青白い顔で気を失ったままだ。

 ソラスは少女の顔を覗き込み、呼吸を確認してから天幕に運び込み一番奥のベッドに寝かせるようバックスに指示するとブルーノに問いかけた。

「ブルーノ様にお怪我はありませんか。あの少女はもしや召喚された聖女様ではありませんか」

「まだわからない。空から突然降ってきたんだ。とにかく、俺は返り血を流してくる」


 そう言うが早いか川の方に向かって駆け出したブルーノを見送ると、ソラスは手を前に組み空を見上げた。

「メルナダ様、救いの神子様をお遣わしくださりありがとうございます」

 うっすら目に涙を溜めたソラスは首から下げていた神殿の紋章を象ったペンダントを額に押し当てると、天幕の中へと足早に入っていった。


 小柄な少女はバックスによってベッドにそっと下ろされた。

 バックスが少女に巻き付けられていたマントを解くと、見たことのない留め具のついたシンプルなフード付きのローブに足の形がはっきりとわかるタイツのようなものを履いている。ソラスはギョッとして思わず目を覆ってしまった。

「こいつはまた変わった衣装ですね。肉付きはいいが貧相な胸や身長を見る限りまだ子供じゃないですかねぇ」

 バックスは面白そうに観察を続けているが、ソラスがぱっと胸までシーツをかぶせて遮る。

「ちょっと目のやり場に困るお嬢さんですのでシーツを被っていていただきましょう。本当に女神様のお告げの通り、違う世界からいらしたようですね」

 喋りながら脈を取り、再度呼吸を確かめると少女の前に手をかざして短く呪文を唱えた。


回復(ヒール)


 ぽうっと暖かい光が少女を包むと、青白かった肌にほんの少し赤みが戻った。

 少女はまだ寝息を立てている。


 髭をさすっていたバックスはソラスに尋ねた。

「大神殿にはすでに報告されましたか」

「えぇ、お告げがあってすぐに大神殿にもカイルが伝言鳥を飛ばしにいきました。女神様の意向も、もちろんお伝えしています。なんとしても神殿に迎え入れなければ」

「流石に黙っているわけにもいけませんな。あちらさんはどう出ますかねぇ」


 そこへブルーノがバックスと同じ軽鎧の男を伴って戻ってきた。

「カイル、ご苦労様でした」

 焦茶色の髪を後ろで一つに縛った長身の若い騎士はにっこり笑うと軽く頭を下げ、バックスの隣りに移動する。

 その様子を目で追っていたブルーノはソラスの方に向き直ると尋ねた。

「お嬢さんの様子は?もう大神殿にも連絡したのか」

「はい、女神メルナダ様からのご神託を受けましたので」

「神託だと?いつだ」

「先ほどブルーノ様がお戻りになる少し前です。あ、大神殿には女神様の意向によりこの地にてしばらくは神子様をお預かりすると伝えてあります」

「そうか。後で詳しく伺う」


 ブルーノが一瞬不快を浮かべた顔を元に戻したのに気付いたのはバックスだった。

「ブルーノ様はお嬢ちゃんを気にいったようですね。もうすぐ討伐隊が戻ってくることですし、お嬢ちゃんはブルーノ様の天幕にお持ち帰りしていただいたほうが良いのでは」

 ニヤリと笑うバックスに眉をひそめる。初陣の頃から討伐のたびに顔を合わせてきたこの男とは気心が知れている。

 とはいえ神殿直属の真愛騎士団に所属していて神官の護衛についていると言うのに、少女をお持ち帰りしろとはどんな言い草だ。品行方正さはどうした。


「は?怪我人は治療班預かりだろう」

「もうすぐむさ苦しい男どもでいっぱいになる治療班の天幕に、足をむき出しにしたお嬢ちゃんを置いておくわけにもいきますまい」

 顔を赤くしたソラスも頷く。

「皆様戻られたようです。治療も済みましたし、ご神託の内容は皆様の治療が終わり次第そちらの天幕で相談させていただきます」


 そそくさと騎士たちの元へ向かったソラスの背に小さく舌打ちしたブルーノは、再び少女のマントを巻きつけると肩に担ぎ上げた。

「おいおい、女の子を物のように担ぐなよ」

 呆れたように大袈裟なため息をつくバックスがひょいと少女を剥がすと、横抱きにしてさっさと歩きだした。

「レディの扱いには気をつけないと。また姉君たちに激怒されるぞ」

 ソラスがいなくなった途端に口調を崩した男をひと睨みしてはみたものの、すでに嫁いだ二人の姉たちの激怒する様が容易に想像できて顔をしかめた。

「ソラスに付かなくていいのか」

「カイルがいるだろ。この子を置いたらすぐに戻る」

「カイルがやきもち焼くぞ」

「あのな、アイツがへばりついてくるだけで俺にそういう趣味はねぇ。これでも国に嫁と娘がいるんだ」

「家族がいたのか」

「過去形にするな。ちゃんと連絡はしているし、向こうに行けば会っている。娘はこの子と同じくらいだ」


 バックスはブルーノの天幕の中に少女を運び込み、簡易ベンチにそっと寝かせると子供にするように何気ない仕草で顔に張り付いた髪を撫でるように梳かしつけると戻っていった。

 その様子を見ていたブルーノの胸はなぜだかわずかにざわついた。


 バックスが出ていったあとの天幕で、剣の手入れをしながら未だ眠る少女の横顔を見る。

 艶のあるしっとりとした黒髪と傷ひとつなく滑らかな肌。きちんと手入れされた手。

 規則正しく上下するささやかな胸。

 どこを見ているんだ、俺。


 首をぶんっと振って邪念を払おうとしたところにヴィクターとテリルが戻ってきた。


 予想外に大量発生していた魔獣の群れに囲まれた時には、隊の半数は生きて帰れないかもしれないと覚悟した。

 もちろん自分が最大限働いて部下をなんとか逃すつもりではいた。

 そこへ勢いよく降ってきた白銀の光をまとった少女。

 その光を浴びた途端に魔獣の群れは動きを止めた。不自然なくらいに。

 重傷者は出たとはいえ、隊の誰も死ぬことはなかったのが不思議なくらい最悪な状態だった。

 子供の頃から定期的に神殿に通っていたとはいえ信心深いとはお世辞にもいえないブルーノではあったが、神に祈りたくなるほどの状況の悪さだったのだ。

それがこの少女の出現で一気に状況が好転したのだ。大声で神に感謝を捧げたくなるほどに。


 それは部下たちも同じだったようだ。

 天幕に入ってきたヴィクターとテリルは、マントに包まれたまま眠る少女を拝んでいた。


「絶対にこのお嬢さん、神様が遣わした方だと思う。大神殿が聖女召喚の儀を行うと発表はあったけれど、召喚されたとは聞いてなかったよな」

 水を浴びてきたのか濡れてぺたんこになった赤髪をかきあげながら身を屈めて少女の顔を覗き込むテリルの肩をヴィクターががっしり掴んで引き離す。

「お前ね、お嬢さんがいま目を覚ましてドアップで人相悪い大男が迫ってきてたら泣いちゃうぞ?」

「ひでぇこと言うな。黒い髪なんて珍しいな、と思って見ただけだ」

「お前たちうるさいぞ。まずは事情を説明してほしいところだが、言葉が通じなさそうだったな」

 腕組みをして少女を見下ろしていたブルーノは思い返してみる。

 降ってきた少女に伏せるように言って地面に倒したが、聞いたことのない言語で何やら叫んでいた。

 こちらの言うことも理解できていないように見えた。

「乗り物も装備品も初めて見る素材でしたよ。なかなか興味深い構造をしていましたし」

ヴィクターが目を輝かせて言う。

これは後で確認しなければ。

「それにしても言葉が通じないとなると、どうしますかねぇ。さっきの戦闘であの少女が降ってきたあたり、浄化されていたんですよ」

「なんだとッ」


ヴィクターが思わず大きな声を出してしまったせいで、少女がわずかに身動ぎうっすらと目を開けた。

思わず覗き込む3人。

ぼんやりとした目で動きを止めていた少女がカッと目を見開いた。


「え?ここどこ」


「西大陸語、話せるのかっ」

ブルーノが思わず少女に近づくと、少女は顔をひきつらせて逃げようとした。

「すまない、話せないと思っていたから驚いただけだ。怖がらなくても大丈夫だよ。まずはちょっと話を聞かせてもらってもいいかな」

一番小柄で人当たりも良くパッと見は優男に見えるヴィクターが、隊でも一、二を争う体格の良さのブルーノとテリルを押しやって前に出ると少女の前に膝をついて目線を合わせた。

テリルは大盾さえも軽々と振り回せるぐらいの体格を小さく丸めて隅の方の木箱の上に腰掛けた。

怖がらせないように配慮したつもりだろうか。

ブルーノは腕組みしてそのまま様子を見るつもりらしい。


コクリと頷いた少女は体を起こすと小さく丸まる。

その怯えた小動物のような仕草にブルーノは苦笑した。

別に取って食いはしないのに。

それでも周りから無表情だ、大きくて怖いと言われてあからさまに避けられるブルーノや、ヴィクターよりも頭ひとつ、横幅も一回り大きく顔に傷のあるテリルがいては警戒するのも当然だ。

ヴィクターの一歩後ろに下がってそのまま様子を見ることにした。


一歩下がっても大して変わらないのに、と呆れたヴィクターが聞き取り担当になるのは自然の流れだった。

















どこで区切るか迷いながら書いてます

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