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ささやかな希望

年末に相方が救急車で運ばれてバッタバタでした。

ようやく落ち着いたから投稿ペース上げたい。

「え?シュッとしたワンピースなのに、なんでサイズぴったりなの」

 着慣れない下着とワンピースに戸惑いもあるけれど、ぴったりとした太ることを許されないデザインの胸元と袖に、繊細な金の蔦の刺繍が入った白く光沢のあるワンピースというかドレス?はサイズも丈もピッタリだった。

 そして胸のサイズが大きくなってることに気づいた衝撃。

 もしかしてこっちの世界に来て太ったのかな。どうりでなんかいつもより苦しくて疲れると思った。


 思わずじっと胸を眺めていると、肩に登ってきたリスバージョン・アル様が耳元でささやいた。

「ささやかな願いを叶えておくと言っただろ。体に負担がかからないように少しずつこの世界に合わせて変化させるから、希望があれば3日以内に言って」

 そこ?そりゃ胸がささやかなのは気にしてたけど、そういうデリケートな問題は触れて欲しくなかった。大きくなったのはちょっと嬉しいけど。

 もっと他にあるじゃない?いきなり言われると答えられないけど。

 まぁそれはいい。今夜は膝を抱えて考えるとする。


 目の前のマルゴさんとルイーゼさんはなぜか盛り上がっていた。

「テリル様のお見立ては完璧でしたね」マルゴさんは目をまん丸にして、小さくパチパチと拍手している。

「ブルーノ様のお墨付きでしたもの。指示通りにお直ししてよいのか心配でしたけど、まさかここまでピッタリとは」頬に手を当てて驚いているルイーゼさん。

「え、テリルさん?どうかしたんですか」

「いえ、急ぎで女性の服と身の回り品を届けるよう連絡があったのですが、テリル様の指定されたサイズだから間違いがない、とブルーノ様がリーナ様のサイズをお知らせくださったんです。測ってもいないのに大丈夫か心配でしたが、これが驚くほど正確で」

「ブルーノ様がテリル様の目測は狂いがないとおっしゃっていたのは本当だったので驚きました。繊細そうに見えるヴィクター様よりも大柄なテリル様の方が繊細で緻密な計測ができるって、王都からいらした日の歓迎の宴の時に聞いてはいたのです」

 えー、ぱっと見でサイズ分かるのちょっと怖い気もするけど。

 見た目は豪快そうなお顔と体格してるのに意外だけど、昨日は背中を丸めて小さく手を振ってたっけ。


 そのあとも3人で衣服や下着の違いや布地の違いで盛り上がり、いつの時代も異世界でも女の子の共通の話題はファッションなのねと少し安心する。

 共通の話題のおかげで少し仲良くなれた気もするし。

 マルゴさんは19歳、ルイーゼさんは20歳と歳が近くて話しやすい人を派遣してくれたのもありがたい。

 体格のいい男の人ばかりに囲まれるのはちょっとどころかとっても居心地が悪く、いくらソラスさん達が穏やかに接してくれているといっても慣れない男の人たちと一緒にいるというのは緊張するのだ。

 ホッと小さく息をつくと「お疲れのようですから、お茶でも入れますね」とルイーゼさんが声をかけてくれた。

 その間もマルゴさんがテキパキと箱を片付けるのを、アル様を肩に乗せたまま座って眺めていた。

 2人共、背筋がピンと伸びてブレない歩き方をしていて綺麗だなぁ。無駄なお肉はついていないし。


「なぁリーナ、こちらの世界はお前がいた世界よりも遅れているというか進化の仕方が違う。戸惑うとは思うし不満もあるだろうが頑張って慣れてくれよ」

 アル様がぼんやりとふたりを眺めていたわたしの顔を覗き込んで、ちょっと心配そうに言う。

「大丈夫、きっとすぐに慣れるわ。でも神様扱いとかひれ伏されるのは嫌かな。今まで普通の田舎の子だったし」

「そこはちょっと諦めてくれ。お前は神の力の代行者だし、神への信仰心も集めてもらわなければいけないからな」

「でも、なんか大きな権力とか高い地位を手に入れたら良くない勘違いしちゃいそうじゃない。そうならないようにアル様、たまには釘を刺してね」

「お前ならそんな心配いらなさそうだけどな」

「わからないじゃない」


 タルタさんに木の実を捧げられた時に、ちょっと怖くなったのだ。

 そんなに恭しく扱われるような人間じゃないのにって困惑した。

 なんかちょっと勘違いした、痛い人になっちゃったらどうしようって。


 ちょっと考え込みそうになったところに、ルイーゼさんが戻ってきた。

 いつの間にかテーブルの上にお茶が用意されている。

「申し訳ございません、いまは物資も乏しく薬草茶しかご用意できませんが」

「気にしないでください。わぁ、ハーブの良い匂いする」

 ドライフルーツが入っているのか、ほんのり甘く爽やかな味がする。

 そういえばタルタさんがくれた木の実もあったし、昨日買ったクッキーもリュックというか無限収納に入ってるんじゃなかったっけ。

 脇に置いてあったサコッシュにゴソゴソと手を突っ込み、頭の中でリュクの中を思い浮かべながらもらった木の実と箱入りのクッキーを取り出す。

 サコッシュから出てきた紙箱とハンカチに包んだ木の実を見てルイーゼさんが目を丸くしているけど、ビックリさせちゃったのだろうか。


「ルイーゼさんとマルゴさんも一緒に食べませんか」

「えぇっ、そんな恐れ多い」

「よろしいのですか」


 二人はなぜかアル様の方をうかがう。

 アル様はぴょんっとテーブルに降り立つと「リーナが良いと言っておるのだ。リーナは堅苦しいことを好まないから一緒に食べれば良いだろう」とわたしが出したクッキーに視線を集中させたまま告げた。

 よだれが垂れそうな顔してて威厳も何もあったもんじゃない。それがちょっと面白くて笑いそうになるのを堪えながら、クッキーの箱を開け、個包装になっている袋を開けて半分に割ったクッキーをアル様に渡し、マルゴさんとルイーゼさんには1枚ずつ渡した。半分こしたクッキーはわたしが食べる。

 アル様は恨めしそうに「なぜ我には半分なのだ」と拗ねながらかじり始めた。


 マルゴさんとルイーゼさんは両手で持ったクッキーをしげしげと眺め、「きれいな色」「良い匂い」と呟き食べようとしない。

「遠慮しないで食べてください。タルタさんにもらった、ちょっと酸っぱい小さいリンゴみたいな実もあるよ。」


 マルゴさんは「この袋、何でできてるのかしら」と呟きながら封を開けると、クッキーを丁寧に割り、口に入れると目をまん丸にした。

「こんなに甘くて風味の良いクッキーは初めて食べました。これが神の食べ物なのですね!」

 いいえ違います。大手メーカーのホワイトチョコチップのクッキーです。

 ルイーゼさんはうっとりした表情で無言で噛み締めている。お口に合いましたでしょうか。


「あぁ、お兄様にも食べさせてあげたかった」

 伏し目がちに呟くルイーゼさんの横顔は憂いに満ちて美しかった。けれど、潤んだ目が気にかかる。


「まだあるけど、持って帰る?」

「いえっ、いいえお気遣いなく。兄はすでに亡くなっておりますので」

 慌ててブンブンと手をふるルイーゼさんに、なんて声をかければ良いのかわからず黙ってしまった。それを気づかうようにマルゴさんが教えてくれる。

「ルイーゼさんのお兄様はシライシ男爵家のご嫡男でしたが、2年前の魔獣討伐でお亡くなりになられたんです。わたしの上官でもありました。村人と新兵を逃すために盾になられた立派な方です」

「兄は優しい人でした。本当は体が弱いのに食べ物も皆に分け与えてしまったり、私たち弟妹の代わりに討伐に出たり、無理をさせてしまって」

「スタンピード以来、魔獣に襲われて命を落とす人が多いのです。わたしも祖父と幼い妹を亡くしています。だから神子様が遣わされたと報せが届いたときは半信半疑ではありましたが、皆の心に希望が灯ったのです。神様は我らをお見捨てにされたりはなさらなかったと」

「国全体で物資も食料も不足しているいま、これほどに甘くておいしいお菓子が食べられるなんて思ってもみませんでした。リーナ様、ありがとうございます」


 マルゴさんとルイーゼさんの言葉に胸の奥を鷲掴みにされたような苦しさを覚えた。

「それほどまでに酷い状況なのですか」

 それ以上の言葉が出てこなかった。

 想像すらできなかった。身内を魔獣に殺されるというのが、画面の向こうの熊に襲われて死ぬというニュースぐらい、どこか遠いところで起きた出来事のようで。

 まだこの場所に来たばかりではあるから仕方がないといえばそれまでなんだけど、もっと知らなくてはならない。


 俯いてどうすれば良いのか考え込んでいたら、肩の上のアル様がリスの小さな手でぽんぽんと頭を撫でてくれた。

「これからこの世界を知って絶望するかもしれないが、お前はこの世界の『希望』なのだ。ここはいま一番困難に見舞われている地域。まずはここから始めよう。神の慈愛を届けるため、すまないがお前の力を貸してくれ」

「頑張ります。まだ何ができるのか何をすれば良いのかわからないけど。マルゴさん、ルイーゼさん、力を貸してください」

「もちろんです」


 二人は声を揃えて、ほほ笑んでくれた。


 そのあとはちょっと落ち込んだわたしを気遣って、二人がお菓子や料理の話を聞いてくれたから元いた世界の話をする。

 二人からもこの世界の食料事情の話、生活水準の話を聞いた。

 スタンピードが起きて以降、物資や食料が不足して王都の貴族ですら平民とさほど変わらない生活をしているという。

 話だけ聞くと中世ヨーロッパのような生活なのかなと思ったのだが、魔石があるからランプもあるし、お湯を沸かす魔道具もある。

 中世と近世が入り混じったような不思議な世界。

 着ているものは中世、生活道具は近世みたいな。

 食べるものは、野菜が育たず魔獣にも荒らされているから、魔獣肉中心の肉肉しい食事だという。

 それを聞いてサラダが食べたくなったなんて、とても言えない。

 甘味はほぼ森で採れた果物や木の実だそうだ。

 食生活に不安を抱え始めたところで、二人に聞こえないようにアル様が耳元で囁く。

「お前の無限収納の中の食材とかはお前が使う分は減らないようにしたって姉上が言ってただろ。それで我慢してくれ」


 食べ慣れた味にすることができるのはちょっと嬉しいけど、不安はある。

 魔獣肉なんて食べたことないもの。

 それでもどんな味がするのか気になってしまうのは、日本人の食い意地遺伝子のせいだろうか。


 ボーッとしている間にマルゴさんとルイーゼさんはお片付けをして、忙しなく動きはじめている。

 外からは人の話し声とガシャガシャと物音が聞こえ始め、にぎやかになってきた。

 みんな戻ってきたのだろうか。


「リーナ様、騎士団と兵たちが戻ってきたようです」

 マルゴさんがパッと顔を上げて、天幕の入り口を確認しに行った。

 カイルさんが入り口からヒョイっと顔を覗かせた。

「みなさま無事のお戻りです。ブルーノ様とソラス様が報告会をされたいそうなのでリーナ様にもお越しくださるようにとの伝言です」

 カイルさんの頭越しにバックスさんの顔が現れた。

「お嬢ちゃん、迎えにきたぞー」

 ニカっと笑うバックスさんに連れられて、昨日の天幕に向かった。


 途中、ヴィクターさんが獣人さんたちを水魔法で丸洗いしているところに遭遇した。

 なんだかちょっと楽しそうだけど、魔法で水を出すっていうのがやっぱり異世界なんだなぁ。







字が詰まりすぎだよねぇ。

もう少しバランスの良い文体に変えようかな。

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