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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
フィランダリア・巨大ゾンビ編
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第七十四話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 ゾンビ問題を乗り越えた一行は、結界を破壊する為、ランバルコーヤの兵たちが館内を捜索している。歩く死体が少なくなった事を受け、サンプサがヘイノに申し出たのである。

 本来なら聖水を全員で持ち歩ければもっと早く片がついたが、聖水は特殊な魔法が掛けられた容器でしか入れることが出来ない代物だ。元来は魔法師が己を清めたり、一時的に落ちた魔力を補うなどの使いかたをするので、持ち運ぶ必要がない。さらに、香水の様に軽く吹きかけるの量しか用いない背景もあった。

 実際、こんな短時間で樽一つ分の聖水を用意すること自体、アルタリア以外には不可能でもある。普段から連絡を取り合っていたとはいえ、実は首の皮一枚繋がった状況でもあった。

 つまり、武器に聖水を漬けるのが異常なのだ。

 ランバルコーヤ兵が出ている間、ライティア家の従者たちは、部屋の奥で布を聖水で湿らせ体を拭いている。

 「にしても参ったね~。まさかまたアレに遭うとは思わなかった」

 「全くだな。二度とゴメンだと思ってたんだがよ」

 「中には骨だけのもいたな。いたたまれん」

 「死体なら何でもオーケーってことなら厄介だよね。とめようがない」

 「だから禁止されたんだよ。本当はこんなつかいかたじゃねーんだ」

 と、布を絞りながら情報屋。子供曰く、本来は魂となった者と一時的に話をする為に開発されたという。愛する肉親を慰めたり、犯人や遺品探しなどが主だった使用方法らしい。

 ちなみに、聖水は魔力がふんだんに込められているので、魔法師以外は直接触れない方が良いそうだ。

 「んまあ、刃物も薬も使い様、だよね~。当時の魔法師は相当ショックを受けただろうに」

 「貴族への報復がヤバかったって聞いたぜ。泥沼だって」

 「つくづく貴族って愚かだね。欲に忠実というより身勝手で。そうじゃない人もいるけど」

 「お前が言うと説得力あんな」

 「でしょ」

 「そうだな。だが、そうでない方々もいる」

 「ホント。初めて知ったときは驚いたよ。結局、その人次第だって」

 その言葉を耳にした情報屋は、手が止まる。同じ言葉を、器官に海産物が住みついたのではないかと思われる程、ある人物に浴びせられたからだ。

 今はわからねぇかもしれねぇな。でも、いつかわかるときが来る。だから、自分がどうなりたいのか考えとけ。

 親代わり、と言っても過言ではない存在。だが、もはや誰が命を落としても何も感じなくなっていた子供の胸だが、いなくなったと知った瞬間、表現し難い重みがしたのは確かだった。

 しかし、死んだ者が戻ることは、無い。

 「お~い、布ちょうだ~い」

 ハッ、とした子供の前に、手を降っているギルバートの姿が。

 「わ、わりぃわりぃ。はい」

 「ありがと~。何か気になる事でもあるのかい」

 「いや、別に」

 「ふうん。なら良いけど~」

 多感な時期だもんね~、と青年。だが、軽い口調とは裏腹に、しっかりと見据えている。

 「何があったかは知らないけど~。周りの人を大事にした方が良いんじゃないかな」

 「な、なんだよ。いきなり」

 「リューデリア、サイヤ、フィリアにアルタリア様。サンプサさんも君を気に掛けているみたいだけど~」

 目深いフードのせいで、少し固まってしまった子供がどういう表情をしているのかは不明だ。とはいえ、あくまで彼が見えている範囲での話になるのも事実である。

 「ギルバート。情報屋はまだ幼い所もあるが、自分の頭で考えられる人間でもある。そう心配しなくても良いと思うぞ」

 「ま、まあ、年齢の割には大人びてるよね~。にしても、良く見てる」

 「そうか?」

 「そりゃお嬢様に関わってるからじゃない」

 「兄貴は昔から面倒見がいいじゃねえか」

 「それもあるね」

 と、大人たち。むず痒く感じた情報屋は、ジャブジャブと少々乱暴に布を濡らしている。

 「何でえ坊主、照れてんのか」

 「うっ、うっさいっ」

 「ふふ、かわいいトコあるじゃない」

 「イスモ」

 「はいはい、すみませんね。こういうからかいはよくないかな、まだ」

 ため息をついたアードルフに対し、物言いたげな視線を、新参者は送る。

 アンブロー大陸での戦いの後か。彼が情報屋を良く見るようになった気がする。

 とはいえ、人にはそれぞれ思惑があるもの。ましてや彼も過去を失っている。何かに引っ掛かったのなら、確かめたくなるのも致し方ないだろう。

 彼らが身を清めている間、貴族と魔法師たちは、焚かれた香でリラックスしながら、心身を休めていた。

 ランバルコーヤ兵も適度に休憩を取りながら交代していると、ある兵士が息を切らして飛び込んで来る。

 「サ、サンプサさん、大変だ、外に人影がいたんだが」

 「とりあえず飲み物を飲んで、落ち着いて下さい」

 差し出されたコップを受け取り、急いで喉を潤す男性。緊迫した空気を察知したアンブロー側の人間も集まって来る。

 「た、助かった。例の装束をした奴を見かけたから追いかけようとしたんだが。そうしたら、建物から出られなかったんだ」

 「出られなかった、ですか。どの様な状態になりましたか」

 「窓から追いかけようとしたらよ、こう、バーンって弾き返された」

 眉頭に力が入るサンプサ。

 「全員、集まっている」

 「い、いえ。まだの奴がいます」

 「急いでここに戻る様、伝えて」

 「は、はいっ」

 思わず素直に従った男性は、少し離れて連絡用の魔道具に話し掛ける。一方、青い息を吐いたアルタリアは、この場にいる全員の体調を伺う。

 誰一人何も無いことに安堵した彼は、

 「奴が、来る。魔法師以外は、結界内に避難して」

 「奴とは。まさか、お話になられていた魔法師ですか」

 「うん。アンブロー大陸で起きた、あの事件の黒幕。核が見つからないのも、当たり前だ」

 『ええ。僕がずっと持ってて姿を隠してたので』

 部屋中に声がこだまする。アルタリア以外の一同は、互いの背を周囲に預ける動きをした。

 数分の沈黙が続くと、天井近くに闇色のローブを纏った人間が出現する。同時に、入口から暗殺部隊員も姿を現した。

 敵方の魔法師は、ゆっくりと降りて来て、足を付ける。

 「貴方がこちらに来れるとは想定外でした。お陰でまた計画が台無しじゃないですか」

 「そう。それは良かった」

 「あらら。そうでした、会話は苦手なんでしたっけ」

 「何を期待しているのか、知らないが。早く元に、戻したら」

 「いやいや、せっかくここに連れて来たのに、戻したら意味ないじゃないですか。でも、話に応じてくれなさそうですね」

 「無駄な時間稼ぎは、応じない」

 薄いガラスが割れた様な音が響く。アルタリアは全く微動だにしていない。

 「予備動作無しでこれ、ですか。恐ろしい」

 「力尽く、は、好まない。でも、手出しは、させない」

 「成程。時には水の様に柔軟に、時には氷の如く強硬に。四大魔法師は昔から変わりませんね」

 ぴくり、とアルタリアの眉が動く。前回の戦いでは対面しなかったせいか、彼は違和感に気づく。

 「何者? 魂、が二つある」

 「ああもう。これだから貴方方は嫌なんだ」

 大げさにため息をついた青年は、大きな火の球を生成しアルタリアに投げつけた。水の魔法師は右手を前に出すと簡単に止めてしまい消滅させると同時に、暗殺者たちがアンブロー側に向かって行く。

 アードルフ、ヤロ、ギルバートが前面に出て対応、少し下がってヘイノとイスモがすり抜けて来た相手と対峙する。最後尾にはアマンダとエスコ、リューデリア、サイヤ、ハンナがおり、情報屋もここに入っている。

 エスコは弓、ハンナ以外の魔法師は宙に飛んだ暗殺者らを魔法で追撃し、アマンダは精神体となって白鎧の騎士たちを召喚して応戦する。

 連中の狙いはアルタリアにより共有されている他、アマンダに至っては、まだ自らの肉体で戦うのは厳しい状態でもある。逆にいえば、隙が多いのだ。

 「ハンナ。アマンダはどう」

 「大丈夫。徐々に慣れてきてるわ」

 「そっ、か」

 数秒間、間が空くと、少女の頭の中に、

 『ゴマカし頼んだ。前いったヤツ』

 『うん。無理しないでね』

 『お前もな』

 身のこなしが軽い者が多い部隊だからか、合間を縫って迫る暗殺者もいる。それを見越した上での配置でもあった。

 子供しかいないと油断した相手たちは、着地した途端、雑な動きになる。こうした態度に慣れきっていた情報屋は、逆ににやつく。

 払った左腕から数本の風の刃が生み出されると、前にいた暗殺者はまともに受けてしまい行動不能に。すかさず第二波を放ち、内二人の息の根を、残る一人は白鎧の騎士の一人、クレメッティが止めた。

 次に降り立った暗殺者らは、体制を低くしながら大人の脚力で懐に入ろうとする。

 すかさず白鎧の騎士たちが防ぎ、今度は床から隆起した大地が敵を貫く。

 次の波が来ようとした時、連中の背後から瞬間移動したサンプサが斬りつけた。後ろを取られた敵は、体勢を直すまもなく倒される。

 『やあ、サンプサ。立派になって』

 「はは。この歳でそう言われるのも、むず痒いものです」

 『ふふ、あの頃は小さかったからね。言わずにいられない辺り、私もおじさんになったのかもな~』

 と、見た目は二十代の騎士。アマンダの父君でもある彼は、十年以上前に亡くなっている。

 サンプサは微笑みながら、

 「こちらはお願い申し上げます。私は背中をお守りしましょう」

 『ああ、頼んだ』

 会釈した男性は、情報屋たちの元に小走りでやって来る。

 「無事だな。情報屋は援護を頼む。ハンナはアマンダ様を」

 「りょーかい」

 「はい」

 ランバルコーヤの傭兵たちも、クロウフヴニの放つ魔法を掻い潜りながら入口に向かい、暗殺者を抑えに掛かる。

 乱戦状態を横目で見ていた彼に対し、アルタリアは、

 「何を、考えている。暗殺者は、白兵戦には、向いていない」

 「もちろん存じておりますよ。彼らが優れているのは早さと正確性でしょう」

 魔法師が振り返ろうとした瞬間、ドンッ、という震動が起こった。次の瞬間、床に大穴が開き、人々はあわや飲み込まれそうになる。 水の魔法師が生成した浮遊氷膜で落下せずに済んだ人間たちは、崩れ落ちる館を、上から呆然と見つめていた。

 結界はいつの間にか消え、代わりに星型と五つの頂点を結ぶ円が光り輝いている。

 「さあとくとご覧下さい。大いなる実験の始まりですっ」

 クロウフヴニは全員の前に、両手を広げながら出現。すると魔法陣は眩く光り輝き、視界の機能を停止させる。

 光が消えると、アルタリアが動けなくさせたはずの死体たちが再び立ち上がると、魔法陣へと早急に引き寄せられて行く。

 遺体が何らかの不気味な塊になりながら、段々と大きくなる。ムクムクと、しかも脈打つように動き出すと、巨大な人の様な形になっていった。

 「驚かれましたか? 神話にある巨人をモチーフにしてみたんです。しかも死体ですから際限なく動ける」

 グオオオッ、と、空に向かって雄たけびを発した巨人。とっさに結界を張ったアルタリアのお陰で、誰も傷一つ負っていない。しかし、瓦礫と化した建物の残骸は、さらに細かく砕かれてしまった。

 「何をやっているか、分かっているのか」

 「当然。魔法師程強力じゃありませんが、相手が一般人なら問題ないでしょう」

 「話にならん。貴様は人の心が理解出来ない様だな」

 普段冷静さを保っているヘイノの顔に、憎しみがこもる。現役暗殺者以外の他の面々も、同様であった。

 「ふふ、やはりまだ若いですね。要は勝てば良いのです。無駄な正義感は大いなる犠牲を生むだけ」

 パチン、と、指を鳴らしたクロウフヴニは、氷上にいた暗殺者たちを魔法で呼び寄せる。

 「貴方方は巨人の援護をお願いします。戦えなくなったら糧となって下さい」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が違うっ」

 「ん。何がです」

 「俺たちはあの館に連中を閉じ込めておけと言われただけだぞ。それにバルテン総隊長たちは」

 「ああ。言うことを聞く部下を集めて下に控えていますよ。そこに合流して貰お」

 クロウフヴニに光の矢が飛んで来る。間一髪で気づいた彼は、手をかざし、赤い膜で防いだ。解こうとした瞬間、アルタリアが剣を構えて攻撃。同時に暗殺者たちの足元に、数センチの氷を創造した。

 アンブロー連合隊とは違う方向に移動させると、そのままクロウフヴニを睨みつける。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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