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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
フィランダリア・ヴァルハラ編
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第六十八話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 情報屋の調子も良くなったところで、一行はスルーズルの監督の下、連携の強化に入った。

 なお、アマンダは相変わらず横たわっているが、精神だけで活動可能な時間が増えているという。それは、エスコも同様であった。

 とはいえ、彼の場合は、令嬢と異なり肉体面の治療も行っているが。

 「集まったか」

 とある広い部屋に集合したアマンダとエスコ以外の一同。

 「坊主、何だその仮面」

 「フードだとはずれるかもしんないからって」

 「えー。そんなに激しい訓練するのー」

 「ってか魔法の爆風なんじゃねーの」

 「さりげなく怖いこといわないでくれる」

 「フードが外れるか外れねえかのだろ? そんなビビんなよ」

 「魔法だよ? 爆弾と違うでしょ」

 「あー。五体満足ならいいんじゃない。もうさー」

 「よくねえっ」

 「冗談じゃない」

 と、同時にツッコむヤロとイスモ。アードルフとヘイノはため息をつきながらも安全を祈る。

 様子を見ていたスルーズルは、微笑みながら奥にある薄布の向こうへと消えて行った。

 「行けそうか」

 「は、はい」

 「何、ちゃんとフォローする。掛ける人間にも害は及ばぬし、心配しなくても良い」

 と、戦乙女。ハンナは緊張した面持ちで杖を持ち、少女に向かって笑顔でいるエスコは、いつでもいいよ、と告げる。

 神の使いが広い部屋に戻ると、彼女から見て一番右側に、半透明のレインバーグ家嫡子が出現していた。

 「役者は揃ったな。では始めよう」

 と、魔法で槍を生成スルーズル。ほぼ同時に、魔法師組が物理攻撃組の前に出る。また、物理組には魔法の余波から身を守る為の防壁も張られる。

 リューデリアは水晶、サイヤは身長と同等の杖、情報屋は腰に剣を持っていた。

 一瞬眉をひそめた神の使いだが、気を取り直して構える。

 「後ろにいる者達は良く見ておくのだ。その後、どのように組み込むかを考えよ」

 彼女が槍を振り上げると、髪型が異なった三人の女神が現れる。そして、本人は真っ直ぐ、三人は魔法を唱え始める。

 対して人間側は、情報屋が剣を抜いて先頭の接近を防ぎ、サイヤが杖から水色の光を発すると、氷の矢が具現化する。バチッと杖の先がなると、スルーズルに向かって弧を描きながら飛んで行った。

 また、リューデリアは水晶を顔の近くの宙に浮かべながら、人の頭程の火の弾を三つ発現させ後ろにいる使いたちへと投げつける。

 双方に着弾する直前、真ん中にいた女神が結界を張って消滅させる。すかさず左右の二人が火と氷の矢を創造すると、サイヤとリューデリアに放たれた。

 前者が水色の膜を生成して赤と青の先の尖った獲物を防ぐが、爆風が生じた。吹き荒ぶ中、小さな火花と氷の欠片が舞っている。

 魔女たちの眉間に力が入ると、火を扱う者は前に出た。

 リューデリアはさらに水晶を高く上げて行き、止まると淡い赤色の光を帯び始める。サイヤの杖の先には、水色をした魔力が光を発した。

 陣形が決まったとき、情報屋はスルーズルを押し返して行く。

 「ほお。幅が広いな」

 「そりゃどーも」

 「その分、中途半端だがな」

 「どっちかってーと補助系なんで」

 「成程。なら丁度良かったではないか」

 少し身を引いた女神につられ動く情報屋。次の瞬間、スルーズルは右側に横なぎに払い、子供は壁に叩きつけられそうになる。

 しかし、風を使って体制を整えると、上手く回転し、足を壁に付ける。再度女神の元へ飛び、他の彼女たちからの魔法攻撃をかわしながら切り掛かった。

 実のところ、剣より魔法が得意な情報屋は、本人の練習も兼ね、攻撃に関してのみ今回は剣だけとしている。

 『どう、ヘイノ』

 「後で感想を聞くが、動き辛そうに見える。やはりすぐの導入は厳しいだろうな」

 『確かにね。事前に唱えてるところを見せてもらったけど、今は滑らかな動きじゃない』

 「ああ。ここは結界が張られているし、情報屋は耐性が高いから大事には至らないが」

 『僕らじゃよくても大怪我だ』

 「十中八九な。これなら資料の陣形に納得がいく」

 『あれは軍単位の話って思ったけど。基本は変えないほうがよさそうだね』

 頷くヘイノ。この部屋での戦闘なら当たっても問題ないが、それ以外ではそうもいかない。

 女神の使いと魔法師の打ち合いは、相手が代わる事なく、手と品だけが入れ替わって行った。

 数時間後、魔法師たちも慣れない環境の為か、少し息が荒くなっている。

 スルーズルは情報屋を魔女たちのいる方向へと弾くと、

 「しばし休憩しよう。次は交代だ」

 「や、やっと終わった」

 「次はちゃんと魔法を使うと良い」

 こく、こくと、首を縦に動かす子供。両膝に手を付きながら、呼吸をしている。よく見ると、所々焦げていた。

 「すまぬ、大丈夫か」

 「あ、うん。この部屋のおかげかな。全然痛くなかったよ」

 「なら良かった」

 「あっちで少し休みましょ~」

 「そちらの部屋の奥に湯船もある。手狭だが、男女別にある故、使用すると良い」

 「ありがとうございます~」

 「はらへった」

 「ふふ、菓子もベッドもある。ゆっくり休むと良い」

 「おっ。くったらねよーかな」

 「それで太らないなんて~。羨ましいわ~」

 「そんぐらいじゃ太んなくない?」

 お礼を伝えた魔法師たちは、ゆっくりと部屋へと向かう。

 「しゃあねえ、やるか。兄貴、どうしたんだ」

 「あ、ああ、すまん」

 情報屋の背中を見送ったアードルフは、子供に違和感というか、何か引っ掛かるものを感じた。

 物理組の準備が出来ると、魔法を唱えていた使いたちも入れ替わっている。

 「そなた達は連携が課題だったな。何、武器同士なら慣れるのも早かろう」

 「あー、ひとつ宜しいですかね」

 「何だ」

 「貴女方の実力を疑う訳じゃないんですけどー。その、女性相手は、少々」

 「おめえ、戦場でんなコト言ってられっかよ」

 「そうなんだけどさー」

 「心配無用だ。この空間で受けた傷は無かった事になる」

 「へえ、そりゃありがたいね。毒を使っても?」

 「ああ、全て元通りにはなる。が、痛みは感じるぞ」

 魔法に関しては無効化可能だが、直接的な負傷に関しては神経が反応してしまうという。

 『ってことは、酷く負傷したらショック死する?』

 「ありえそうで怖い」

 「気絶はするかもしれんな」

 「あー。まあ、その分気楽に出来る? んじゃないかなー」

 「気楽、とは少し遠いと思うがね」

 ギルバートの言わんとする事を何となく察する一同。実戦だと命の危険があってもここではないのだ。

 気を取り直し、前衛にヤロとギルバート、中衛にアードルフとイスモ、後衛にはヘイノとエスコが立つ。普段は前衛と中衛は一緒だが、今回は試しの陣形である。

 整ったと判断したスルーズルは、自身も構え、先頭の二人に攻撃を仕掛ける。剣と両手斧を持った神の使いも同時に動くと、エスコがすかさず弓を放った。

 使いの三人は動きを止められ、その隙をヤロとギルバートがつく。今度は神側から射られた矢を、エスコが同じ獲物で弾き落とした。

 アードルフとイスモは、左右から使いに向かって剣と短剣で両脇を攻撃。しかし、瞬時に現れた二枚の大盾に防がれてしまう。

 剣と盾がぶつかる直前、スルーズルが高く跳躍しエスコを狙う。こちらはヘイノが受け取り、礼を伝えた弓兵は走り出した。飛んで来る矢を床に着かせながら、距離を空けれた彼はスルーズルに向かって反撃する。

 冷静に回避した神の使いは、ヘイノに対し横払う。同様に対処した大将軍は、数歩、後ろに下がった。

 「指示はしなくて良いのか」

 「彼らはエキスパートですから。口を出す必要もありません」

 「そうか。確かに彼らの呼吸は合っている様に見える」

 パチン、と指を鳴らしたスルーズル。他の使いたちが元の位置に戻ると、手にした武器が弓矢へと変わる。

 人間たちの意識がそちらに行くと、スルーズルも列に入り、角度を変えて一斉に放たれた。

 彼らはそれぞれ左右の壁側に走り、どうにか金属の雨を避けたが、再び嵐が襲って来る。目の前からや逃げた先に降り続ける矢は、止む気配が無い。

 得物が床に刺さった瞬間、ギルバートは前屈みになり姿を消す。神の使いたちが目を見開いたとき、彼は一番前にいた使いの手首を掴んで動きを封じる。

 さらにヘイノとイスモが彼女たちの背面に回り込み、剣と短剣で後ろにいた者らの首筋に突き付けた。

 他の人間たちも、武器を構えたまま、じりじりと距離を詰めて行く。

 スルーズルの両手から武器が消えると、そのまま腕を上げる。

 「素晴らしい。想像以上の動きだ」

 他の戦女神も武器を消すと、地上に住まう側も構えを解いた。

 「後は魔法との連携か」

 「そうですね。弓や投擲とも異なるので、こちらの方が時間が掛かるかと」

 「ふむ。なら先に我らのを見て貰おう。少しはイメージしやすくなろう」

 魔法を放つタイミングは、基本的に変わりないという。ただし、能力には個人差があるため、間合いに魔法を組み入れるのであれば、きちんと把握しないと危険らしい。物理攻撃時と違い魔法の周りには、余波、という空間が存在する為だ。

 武器で例えるなら、振るった際に起こる微風のようなもの。余波の場合は範囲も広く魔力が含まれているので、魔法師以外だとそれでもダメージを受けるそうだ。

 将軍らは彼女たちの組んだ陣形を見ながら説明を受け、傭兵たちは、いつの間にか出て来ていた動く藁人形に驚きながらも、動きを観察していた。

 なお、魔法と物理では疲労具合も異なるそう。主に肉体を使う武器での動きは、疲労すると体がだるくなったり、重くなったりと、表現の違いこそあれ分かりやすい。しかし、魔法に至っては、集中力の途切れやぼんやりするといった症状が出て来る様である。つまり、気づきにくいのだ。

 それ故、規模が大きければ大きい程、通常は魔法師の人数も多くなる。常に魔法を展開する場合なら、尚の事だったという。

 今日の訓練が終わると、全員、色々な意味でヘトヘトになっていた。

 「あ~、疲れた。やっぱり魔法のほーがマシ」

 「魔法はどうだか知らねえが、あんだけなら大したことねえだろ」

 「量だけでいったら親父たちのほうが厳しかったね」

 「うえ。あれ以上の量ってどんだけだよ。悪魔じゃん」

 「それ位鍛錬しないと生きていけないからな」

 「へー。アードルフの訓練って厳しそうだもんねー」

 「凄かったぜ。さすがのお前も半泣きになるかもな」

 「謹んでお断りしまーす」

 と、満面な笑顔で返すギルバート。情報屋以外は、体力面より精神面に来たのかもしれない。

 「正直、過去一緒に戦っていたのかが疑問だ」

 「そうね~。思いっきり放てないものね~」

 「資料によると、主に援護をしていたそうだ。先程の様に、攻撃魔法だと巻き込むからだろう」

 「その資料、後で見せて貰えぬか。良いヒントが得られるかもしれん」

 「勿論。君達は要だ、一緒に考えていけると嬉しいよ」

 「変な感じするわ~。まさか表立つなんて考えてもなかったもの~」

 「普段は我々に任せてくれれば良いさ。非常時には頼む」

 と、ヘイノ。エスコは肉体に戻っている為、今はいないが。

 おそらく、同じ事を考えているだろう、と将軍は思った。魔法師が参戦する時には、おそらくこの戦争は終結に向かうだろう、と。

 魔法師たちが今の閉鎖的な生活を送っているのは、貴族を中心とした欲望が原因だった。特権と勘違いした連中が調子に乗ったせいで、何の罪の持たない人々が犠牲になり、当時の戦犯者は責任逃れで躍起になっていたという。

 当時を知る人間は当然存在しない。が、四大魔法師とエレノオーラだけは、生々しい記憶として記憶の奥底に眠っている。普段は表に出さないが、貴族という身分にあまり良い想いは抱いていないだろう。例え自らが似た立場だったとしても、だ。だから非常時以外は政治に関わらないと昔明言したのだと思われる。

 彼らは戦時中生まれ育ったものがほとんど。その為、今が当たり前になってしまっている。この状態こそが異常だと気づくのには、そう時間は掛からなかった。

 ヘイノは世話になっている目上の方々に感謝しながら、廊下を歩いていた。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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