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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
覚醒編
53/82

第五十一話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 セングールでの宴から明けると、アンブロー軍はノアゼニアへの帰路に着く準備を進めていた。

 「いやぁ~、見事だったぜ。まだまぶたに焼き付いててさあっ」

 「うふふ、無理いちゃってごめんなさいね。でも、喜んでもらえてよかったわ」

 「そりゃよ。お前が珍しく絶対にやりたいっていうからさ」

 「なぜだかわからないけど、どうしてもアマンダ様と踊りたくって」

 と、カレンと青年の姿をしたラガンダ。踊り子本人は、その演技のことはまったく記憶にないという。

 「あれは戦女神が乗り移ってたらしいからな。まあ、ここだけの話だけど」

 「そうね。ややこしくなりそうだもの」

 「にしても、体は大丈夫なのか。倒れたって聞いたぞ」

 「大丈夫よ。ぐっすり寝たら治っちゃったみたい」

 パサ、と出入口にある布が動く。

 「会話中悪いね。これかい」

 「そ。外して回収するだけだがな」

 「へぇ~。上手く出来てるねえ。カレンだっけ、体は平気なのかい」

 「今聞いたばっかだって」

 クスクス、と笑う踊り子は、昨晩の介抱と気使いに感謝を述べる。

 「処置が早かったからすぐに回復したようだね。良かったよ」

 「お陰様です。ありがとう」

 「いやいや。イイモンも見れたし。こいつがお勧めするワケだ」

 「だろ。昔からルーマット・トゥタンシはサイコーなんだって」

 「あんたが言うと下ネタに聞こえんだよ」

 「そっちもサイコーだけどな」

 「かっ。バカは死んでも治んないね」

 「本能で生きてる自由人って言えよ」

 「あんたの場合、バカと何が違うんだい」

 仲がいいのね、と、見た目は歳近いフィリアに対して、カレンは親近感を覚えた。

 一方、彼女たちのいる天幕の近くに位置する同様の中で、アマンダは横になっていた。カレンと同時に魔法師たちによる処置が行われたが、令嬢のほうが魔力による負担が大きかったらしい。命に別状はないが、けだるい状態が続くだろうと診断されたため、横になっているのだ。

 「は~い、サンドイッチとココアよ~」

 「あ、ありがとうございます」

 寝ぼけ眼をこすりながら受け取るアマンダ。太陽は既に天高く昇っている。

 サイヤは少女のリスみたいになっている顔を見ながら、今日一日ゆっくりすれば大分改善されると話す。ランバルコーヤの内乱がおさまった今、多少余裕が生まれてもいるため、ゆっくりするならちょうど良いそうだ。

 なお、リューデリアは先日現れた鍵について調べるために、国へ戻っている。

 「大詰めみたいだけど~。休みなしに動ける人間はいないから、ちょうどよかったのよ~」

 はた、とアマンダの動きが止まる。手にした卵と野菜がたっぷり入ったサンドイッチを皿に置くと、にこりとする。

 「そうですね。息抜きも大事ですよね」

 「そうよ~。だからきょうはコレ遠くにやっとくからね~」

 と、傍にあった書籍たちをひょいと持ち上げ、奥へと歩いて行ってしまう。

 「け、けっこう力持ちなのね」

 はむ、と、アマンダはサンドイッチを食するのであった。

 取り付けた魔道具の回収を数日かけて終わらせたアンブロー軍は、ようやく首都ノアゼニアへと帰還することになった。特に出身者は、祖国の味が懐かしくて仕方がない様子。

 隊列を整えると、一同はランバルコーヤに向かって一礼をする。将軍の号令とともに、彼らは歩き始めた。

 「いやぁ~、ホント助かったぜ。これで頭痛のタネがひとつなくなった。ありがとな」

 「とんでもない。世の平和のためです」

 「お前らしい返答だ。次は決まってるのか」

 「はい。状況次第ですが、コラレダに向かおうかと」

 「成程な」

 と、火の魔導士。本来ならフィリアが一護衛として同行するはずだったが、急用が出来たためラガンダに代わってもらったという。

 ちなみに、今も成人の姿をしている。

 「ですが、フィランダリアの事も気掛かりで」

 「ああ、反乱分子がいるってヤツか」

 「ええ。単なる情報操作だと思いますがね。今調べている所です」

 「こっちは浮き足立ってるからな。付け込むなら確かに今がいい」

 無意識に手綱を握るヘイノ。

 「んま。セイラックやエスコもいるし、ライドンだって馬鹿じゃねぇ。そこまで心配する必要はねぇだろ。抱え込みすぎんなよ」

 と、ウィンクしながら話すラガンダ。呆気に取られたヘイノだが、嫌な感じなどしない。人に恵まれていると、しみじみとヘイノは感じた。

 「アマンダ、調子はすっかりよくなったみたいだな」

 「はい、お陰様ですわ」

 「ならいいんだが。詳細は後でわかるだろうから、異変が起きたらすぐにいうんだぞ」

 「はい。でも、不思議な気持ちです」

 「オレも初めて見たからな。こんな時勢だ、用心に越したことはねぇ」

 傍にいた従者と魔女たちは、安堵を覚えたようだ。

 ラガンダにとっての初めてとは、先日の公演のことである。神に奉納する踊りは珍しいことではないが、今回は逆の現象が起きたのだ。カレンばかりかアマンダも記憶がないという、妙な出来事でもある。このことは主だった人間しか知らず、緘口《かんこう》令を敷いたため、一般兵には広まってはいない。ただ事ではないため、外に漏れるのを恐れたのもある。

 なお、魔力を持たない者からの話は、アマンダの中に炎が吸い込まれたかのように映ったそうだ。実に素晴らしい演出で、さすがはルーマット・トゥタンシ一座の締めだと絶賛されていたという。

 何事もなく数日が過ぎ、首都まで後半分のところまで一行はやって来た。一番外側にいる兵たちは時々交代をし、軍全体は、雑談とあくびが飛び交う、明るい雰囲気に包まれている。

 いつもと同じように進んでいると、急に空が暗くなった。見上げると、黒雲が渦を巻きながら、太陽を隠そうとしているではないか。

 「な、何だ、ありゃ」

 「ヤなカンジ」

 「天候の急変、じゃなさそうだねー」

 アードルフは無言だが、左手が剣の鞘を掴んでいる。

 事態のため歩みを止めた一行の前に、閉じた中心から地面に向かって何かが突き刺さった。杖か槍の様で、一番上には青と赤が左右半分ずつに彩られている宝玉がある。一瞬光ると、先頭にいる兵たちの馬が突然暴れだした。乗っていた兵は振り落とされ、歩兵は踏み潰されないようにしながら落ち着かせようとし、また、将軍らの馬も耳を伏せていななき、後ずさりしてしまっている。

 宝玉は満足したのか、今度は別の光を帯び始める。魂を凍らせるような青白い炎を発すると、徐々に大きくなっていく。

 その間、わずか数秒。

 光の矢となった炎は、アマンダ将軍に向かう。魔法師らが気がついたときには時既に遅し、令嬢は貫かれ体が傾いていた。

 「アマンダ様っ」

 アードルフが受け止めようとするが、触れる直前に彼女の体が消えてしまう。

 「全く、面倒なところに隠してくれたものだよ」

 と、男の声が、空から響く。アンブロー軍が見上げると、闇色のローブを風になびかせている姿が。目の前には、気絶したアマンダの姿が横になって浮いている。

 「何者だ」

 「ん~。クロウフヴニ、とでも」

 「クロウフヴニか。彼女を返して貰おう」

 「どうやって? 弓矢でも番えるつもり」

 「もっと確実な方法さ、ねっ」

 男の右肩から左足に掛けて一直線の筋が入った。渦巻き状に姿を消した魔導士の後ろには、剣を振り下ろしたフィリアの姿がある。

 風の魔女はアマンダを抱えると、すぐさまアンブロー軍の先頭へと降り立つ。駆け寄ってきた同族たちに対し、

 「無事かい」

 「まあ。面目ねぇ、助かったぜ」

 「ああ。にしても、あんたがヘマするなんざ、珍しいじゃないか」

 「天候が急変してから意識が飛んでたんだ。気がついたらアマンダが」

 「何だって」

 「命に、別状は、ありません~。でも、妙な魔力、反応があって~」

 「この力、まさか」

 リューデリアは、サイヤの様子もおかしいことに気づく。

 『へぇ~、精神体に使うと意識を失うのか。改善すれば操れるようになりそうだ』

 パチン、と指を鳴らす音と同時に無傷で現れ、アマンダの目が、カッ、と開く。すると、フィリアに裏拳を当てようとした。

 当然、師でもある風の魔女には効果がない。体の距離が空くと、アマンダはとっさに立ち上がり、一行と対峙した。彼女の体は、闇色の炎に包まれ、全身が同色に染まっている。

 「こ、これは一体」

 「ヘイノ、兵を下がらせろ。魔法系が関連してる」

 「わ、分かりました」

 「サイヤ、どうしたのだ」

 「あ、あたまが、ボーッと、しちゃって」

 「な。てめぇ、何しやがったっ」

 「色々と。人体実験って、ホント楽しい」

 「ちっ」

 フィリアは剣柄を握り直すと瞬時に移動し、魔導士へと切りかかる。しかし、同じ動きをしたアマンダが出現した。

 剣を交える瞬間に剣身を消したフィリアは、令嬢の連続突きを真っ向から受ける。吹き飛ばされた風の魔女だが、怪我ひとつしていない。目の前には透明な水でもあるかのような波紋が現れていた。

 様子を見ていた魔導士は、顎に手を当て、

 「あの攻撃を風魔法で防いだのか。いやはや恐ろしい、これで三番目の強さなんてね」

 「ケンカ売ってんのかい。喜んで買うよ」

 「失礼、事実を口にしただけだけど。プライドを傷つけたかな」

 「フィリア、乗るんじゃねぇぞ」

 「わーってるよ。子供(ガキ)じゃないんだ」

 「懐かしいなー。平和ってつくづくイイモンだ」

 「だね。あんたとは全部引き分けだったっけ」

 「そ。んで、アルタリアにはプチッとやられるっていう」

 「戦いの相性は最悪だからね。ハーウェルには楽勝だったっけか」

 「ああ。お前はちゃんとコントロール覚えればアルタリアに勝てんじゃねって話だったよな」

 「言われた気がする」

 「お前は細かいコト気にしないし、苦手だもんな。ここはオレに任せておけ」

 「頼んだ」

 「ああ。代わりにヘイノたちのことを頼んだぜ」

 頷くフィリア。魔女たちに自分と共にアンブロー兵を守ろうと伝え、先頭にいるヘイノの傍へ。

 一人残ったラガンダを見た敵の魔法師は、首を傾げてしまう。

 「おや。あなたが前線に残るなんて意外でした」

 「このクソガキが。目上に対する口に聞き方ってモンを教えてやる」

 青筋を立てながら、ボキボキと両手を組むラガンダ。

 「ありがたいと思え。このオレ様が前線に立つなんざ滅多にねぇんだ。最高の技術を見せてやるよ」

 「本当ですね。楽しみです。どれほどのコントロール力なのかを」

 パチン、と指を鳴らすと、アマンダが突撃してくる。彼女の目は、うつろであった。

 瞳とは異なり動きは正常の令嬢はレイピアでひと突きにしようとする。だが、瞬時に姿を消したラガンダには当たらず、火の魔導士は右手に火をまとった鞭を生成しながら、的へと放った。

 徐々に太くなっていく獲物は、ランバルコーヤ現国王ラヴェラのと比べ物にならない程はっきりと見える。

 想像以上のスピードだったのか、敵は大きく見開き衣に魔力を送る。鞭に触れられた瞬間大爆発が起こったが、本人は吹き飛ばされはしたものの大した怪我はしていない。ただし衣がボロボロになっていた。

 「ちっ。本当に攻撃魔法が不得手なのか」

 「どうしたよ。調査済みなんじゃねぇのか」

 「あなたに関しては不明な事が多すぎるのでね。てっきり知略が最大の武器だと誤算してましたよ」

 話しながら衣を再生させる男。その間、ラガンダには、アマンダの連続攻撃が繰り出されている。

 強化魔法を掛けているとはいえ、あれを全てかわすとはね。運動神経も並以上ということか。やはり一番面倒な奴かもしれないな。

 クロウフヴニは作戦を変更してアマンダを呼び戻した。そして、地面に刺さった杖らしきものを引き抜き、魔力を通す。

 嫌な予感がしたラガンダは人の頭ぐらいの火球を三個個飛ばして、ひとつは顔の前で四散、もう二つは足元で爆発させる。もうもうと立ち登る煙の中、彼は胸元のアクセサリーを利用してチャクラムを生成し敵の得物をめがけて攻撃。

 しかし、青白い炎によってかき消され、アマンダのそれがさらに大きくなっていく。

 「四大魔法師達のせいで計画が台無しだ。今回は時間稼ぎに使わせてもらおう。また邪魔が入りそうだし」

 そう言った直後、竜巻がクロウフヴニとアマンダの間に出現する。上空には、情報屋が目深い茶色のローブをまとって浮いている。

 色違いの似たような格好をした青年は、ニヤリと笑うと、

 「ダンスを楽しんでね。それじゃ」

 と、言い残していった。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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