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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
覚醒編
51/82

第四十九話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 聖戦からランバルコーヤにおける国内調整とアンブロー軍の帰路準備が始まって二週間。前者における食料調整が難航しており、一週間の遅れが生じていた。グラニータッヒ王が倒れ反王政派のラヴェラ王子が王位に着いたことを受け、コラレダ帝国が物資の供給を止めたのが影響しているという。

 その間アンブローの傭兵たちは、ランバルコーヤ再建の手伝いや護衛など、本来の職業をまっとうしていた。

 「ヘイノ殿、申し訳ございません。一刻も早くお戻りになりたいでしょうに」

 「お気になさいませんよう。コラレダの動きが思ったより早かっただけの事、フィランダリアからの到着を待ったほうが賢明です」

 ランバルコーヤの民を賄うことで精一杯の状態で、同盟国といえど、食料を後先考えずに渡すのも民たちの反感を買ってしまう。今度はアンブローの属国になるのかと、一部から不安が上がっているのは確かだった。故に動くに動けない状況なのである。

 「我が国でも御国にどれだけ支援可能かを協議している最中です。今出来る事を致しましょう」

 「痛み入ります。それにしても、王権が代わって数日後、ということは、事前に準備していたのでしょうね」

 「恐らく。タトゥ王の傍には優秀な人財がいるようです」

 「その様ですね。現状、情報源はこの子からしか手に入らない」

 隣でのんびり紅茶を飲んでいる情報屋に視線を送る王子。気がついた子供は、首を左右に振った。

 「オレも今ははいれないぜ。住んでる人たちも逃げだせないよーにしててさ、出入禁止くらったもん」

 「妥当だな。彼らがどう動くかにもよる、か」

 「ゼノス王には親書をラガンダに届けてもらいました。お返事はまだですが」

 「むずかしーんじゃね。婚姻関係むすんでるし」

 表情が曇るラヴェラとヘイノ。ゼノス王の妹君は、タトゥ王の側室に入っているのである。

 「ゼノス王は慈悲深く聡明なお方。アンブローが危機に瀕した時、影ながらお助け下さいました」

 「そうだったのですね。では、焦らないほうが良さそうだ」

 情報屋は小難しい話に興味がない様子だが、耳だけはしっかり機能しており、ついでに珍しいお茶菓子にも夢中であった。

 新国王と将軍の会談中、アマンダと魔女たちはゼンベルトの屋敷に招待されていた。彼女たちは今、リューデリアとサイヤの存在を考慮し、従者らとともにラガンダの宮殿で厄介になっているのである。

 「うれしいなあ、本国の人に会えて話できるなんてさっ」

 「そうそう、オレたちには聖地だもんねっ」

 「ふふ。ランバルコーヤも素晴らしい国ではないか」

 「でしょでしょ。負けてないと思うんだよね、みんな明るくて楽しいし」

 「そうね~、みんな陽気でこっちまで明るくなるわ~」

 「前をむいてりゃどーにかなる、ってのがウチらだからさっ」

 と、リク。ゼンベルトの孫たちは魔法師の国にまだ行ったことが無く、憧れているようだ。

 「アマンダ様ってあんまり俺と変わらないんだよね、歳」

 「そうね、二つしか変わらないわ。それなのに軍に従事してるなんて」

 「うーん、決まりなんだよ。まだまだわからないことだらけで大変」

 「まあ。わたしもそうなのよ」

 「えっ、そうなの」

 と、レコ。軍事に関しては、むしろレコのほうが先輩であるのに驚いている様子だ。

 「これ、敬語を使わんか」

 「普段のままで構いませんわ。紅茶、ありがとうございます」

 「だって、じいちゃん」

 「うむぅ。ま、まあ、ここだけでアマンダ様が宜しければ」

 「ふふ、もちろんですわ」

 「あ、オオヤケの場は使うから安心してよ」

 「ええ、ぜひ。正直な話、身分はやっかいなのよね。はあ」

 と、うっかり言ってしまったアマンダ。慌てて口元に手を添えるも、レコは大笑いするだけである。

 「んまあ、ウチとラガンダ様の宮殿ならのんびりしても大丈夫じゃない。あの人も細かいこと気にしないタイプだし。なんだっけ、シメるトコはシメればいい、とかなんとか」

 「全く。碌な事を教えませんな」

 「じぃちゃんが堅苦しすぎるんだよ。もうちょっと肩の力ぬかないとハゲちゃうよ」

 ゴンッ、とレコの頭が元気良く泣く。

 「確かにずっと力んでいるのも疲れますからな。一理はございます」

 「そ、そうですわね」

 今のはゲンコツを受けても仕方がないわね、とアマンダは思った。

 会話が続く中、部屋に鈴の音が響き渡る。ゼンベルトが入口に掛かっている布越しに誰かを問うと、使用人であった。どうやら、定期的にやって来る商人が到着したらしい。

 「ご苦労。いつもの部屋にお通ししてくれ」

 「畏まりました」

 「誰だったの」

 「家の者だ。皆様、今商人が来ております。是非ご覧下さい」

 「私達も良いのでしょうか」

 「勿論です。彼らはラガンダ様直属の商人なので」

 「すご~い。幅広く手がけてるって、本当なのね~」

 ぱあっ、と花を咲かせるサイヤ。リューデリアも表情をあまり崩していないが、口角が上がっていた。

 ゼンベルトが先導している廊下には、世界中から集められた絵が飾られている。中には魔法師によって描かれた絵画もあるという。その道に詳しい者からすると、独特の雰囲気をまとっているらしいが、見識がない者には同じに見えるそうだ。現に持ち主である老執事も同様だとか。

 この通路は、来訪者を楽しませると同時に、魔法を扱えようが大陸に住む人間と根本的に変わらない生き物だということを、いつか来る時代のために造られたという。グリッセン家の館には所々に歴史や未来を潜ませ、子供たちの教育に使われている。

 とはいえ、どちらも具体的に示されている訳ではない。魔法師の歴史は、彼ら彼女らとライティア家にしか伝わっていないのである。

 応接室にやって来た一行は、綺麗に並べられた布地や服、装飾品、乾燥食材などを目にする。どうやら女性物が中心のようだ。

 中心いる男性が両手を広げながら、

 「いらっしゃいまし。さあさあ、たんとご覧下さい。この国のを中心に、世界中の品物を取り寄せましたからね」

 「わ~、すてきっ。薬草はありますか~」

 「薬草関連は本国とほとんど変わりませんよ。強いていうならこちらですね」

 と、ドライフラワーが置いてあった場所にいた商人が、サイヤと話し込む。一方、リューデリアは服飾系のコーナーに。

 「どんな服がお好みで」

 「動きやすいものが好みです」

 「なるほど、動きやすいものですか。色とかは」

 「うーん、黒や青が多い、ですが。それよりも着れるものを着てますね。サイズがなくて」

 「あ~、ご自身か頼んで作ってらっしゃいます?」

 「ええ」

 と、魔女たちは買い物を楽しんでいる。そんな彼女たちを、アマンダは後ろから見守っていた。

 「姫もお好きな物を選んで下さい」

 「ラ、ラヴェラ王子っ」

 「ふふ、後ろから失礼。王位を継いでから魔法師達の歴史を学びましてね。喜んで頂けたようで良かった」

 「まあ、それでは」

 頷くラヴェラ。

 「姫のお陰でちち、いえ、グラニータッヒ前王を倒せました。お礼としては少ないですが、楽しんで下さい」

 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えますわね」

 一礼をした令嬢は、軽い足取りで目の前にある小さなマーケットの中へ。

 笑顔で送り出したラヴェラだが、すぐに明るさは消え、真剣な眼差しを彼女たちに送る。隣には、ゼンベルトが来ていた。

 「貴方はどう思う。今の環境を」

 「ひと言ではお答え出来かねますな。我が一族はもはや大陸側の人間でもあります故」

 「そう、だな。ラガンダも悩んでいるようでね」

 「間違った選択などとは誰も思いますまい。ですが、特に若い衆には退屈なのかもしれませんな」

 「レコとリクは逆に、魔法の国に憧れているみたいだけど。ないものねだり、なのかもな」

 「未知の世界に対する憧れでしょう。砂漠からみれば、緑豊かな土地が羨ましく感じるのも道理」

 「成程」

 幼い頃に連れられた南の大陸がまさしくそうで、本の中でしか知らなかった世界が目の前にあることに興奮したのを、ラヴェラは思い出す。姿形は違えど、道筋というか、流れというか、概要は同じなのかもしれない。

 同時刻。

 アンブロー傭兵軍の実質的長であるヤロ、イスモ、ギルバート、影のまとめ役であるアードルフは、ラガンダの館に招待されていた。今はグリッセン家にある絵画廊に似た造りをした場所に案内されている。

 「ふうん。絵で人間性を表現するなんて風流じゃない」

 「お前、分かんのか」

 「分かんないし説明もできないけど。根は同じってことなんじゃないかなって」

 「その通り。オレとお前らが変わらねぇってコトだ」

 と、赤髪をした青年。少々癖のある長いそれは、頭の上のほうで結ばれそのまま肩甲骨の辺りまで流されている。

 「それだけ感じ取れりゃ十分だ。誰が描いたかってだけしか話してねぇんだから」

 「あ~、成程ね~。構図とかじゃなくて、文化的な背景と根底を掛け合わせてるって感じなのか~」

 「そうだ。ほら、こっちには子供が描いたモンがあるだろ」

 幼子の視線に入るように設置された額縁の中身は、芸術品とはとても呼べない落描きのような絵たちが二列並んでいる。どうやら、各国の両親が描かれたようだ。

 「お前たちはライティア家に関わりが深くなってるからな。魔法師について少し知ってってもらいたかったんだよ」

 「っつってもよ、そんなに大事なことなのか。あのふたりはどう見ても普通の人間じゃねぇか」

 「確かに。魔法使わなきゃわかんないと思う」

 「同じくー」

 「へぇ。アードルフ、お前はどうなんだ」

 「特殊な力を持った人間、というのが初めの印象でした。今では大切な友人です」

 「そ、っか。時代とともに認識が変わるってワケだな」

 と、腕を組む青年。

 「私はフィリアやエレノオーラから歴史を教えてもらいましたし、実際魔法の恐ろしさも見ています。ラガンダ様がご懸念されるのも致し方ないかと」

 「過去に何かあったってことー?」

 「まあな。今と同じだ、魔法を軍事利用して捨て駒扱いされたんだよ」

 とある単語に対し、ヤロとイスモの眉がつり上がる。

 「傭兵ってコト」

 「もっと酷ぇな。死地に放りこんで魔力切れを誘発した後ゾンビ化させて突撃」

 「ゾンビ化って。そうか、魔法師は魔力が切れたら一般人と変わらない」

 「そういうこった。ノアゼニアで起きたことは聞いてる。魔法師がゾンビ化したら、生前の魔法も月の魔力を受け取って使い放題になるんだよ」

 「胸糞悪ぃ話だな。まだオレらのほうがマシじゃねえか」

 「当時の権力者は勝つために女子供も構わず戦場に強制招集してな。そこからは大陸でも伝わってる歴史と大筋同じだ」

 「だから戦争が終結した後、四大魔法師がけん制と監視を兼ねて王家と契約したんですねー」

 「ああ。一部を除いた魔法師たちはとある土地に移り住んで、今の状態になった。数百年は平和だったんだがな」

 「んまあー、歴史は繰り返されるって言いますからねー」

 「あ、話の腰折っちゃうけど。ギルバートっていつライティア家の従者になったの」

 「え。従者じゃないよー」

 「はあっ。お前、従者じゃなかったのかよっ」

 「違いますよー」

 「と、とけこんでるから、てっきりそーかと。そっか、じゃあ」

 どこからともかく、大男が持ちそうな金属製の大木槌を出すラガンダ。

 「ちっと痛いだけだから」

 「ええー、そんなの受けたら死んじゃいますってっ」

 「ここの記憶なくすだけだって」

 「まま、まあまあ旦那、今からなってもらえばいいじゃねえか。なっ」

 「あ、そっか」

 いいのか、と思うアードルフとイスモ。

 「異論はないよな。よし、アマンダに伝えとくぜ」

 「いやいやいや、ちょっと待って。話がおかしいでしょ」

 「いやー。アレで殴られなくてすむなら、いいかなー」

 「何でだよ。兄貴、何とか言ってよ」

 助けを求める常識人に、義理兄は苦笑いしながら頭を振った。イスモのお腹が、心なしか痛みを感じる。

 ここでひとつ、面白い話を紹介しよう。

 ラガンダが出したハンマーは、実は魔法で創った幻覚であり物理的な力は一切なかったとのこと。このことは、ギルバートが正式にライティア家の従者となった数日後に伝えられた。

 関係者以外は大笑いし、当事者のうち火の魔法師以外は呆気に取られたという。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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