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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
首都奪還編
27/82

第二十五話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 人型をした何かが現れ人々が襲われるという、前代未聞の事件が発生したノアゼニア。王都を敵の手から取り返した矢先でのことだった。

 人の形はしているが、肌は青く浮き出る血管は紫色。遺体独特の腐敗臭がし、腕や足が千切れていても動いている。しかも、ところどころから骨も見えている始末だ。

 「くそっ、力任せの剣じゃあかち割りづれえ」

 「リューデリア、ほかの弱点はありませんかっ」

 「火に弱い、が臭いが酷いし灰が風で舞ってしまう」

 「大量に吸いこんだら大変よ~」

 「どうやら武器で対処するしかないようです。槍か弓が最適かと」

 「あるいは一気に叩き潰すか、かねー」

 ギルバートは近くにあった人の頭位の瓦礫を持ち上げ、敵の頭部に投げつける。しかし、やや欠けた程度で大した傷は与えられないようだった。

 「んー、効果なし。って、こっち来ちゃった」

 「何してんの、あんたはっ」

 たまたま近くにいたイスモと一緒に皆と反対方向へ逃げる。彼は弱点に狙いを定めてナイフを放るが、当然骨にはじき返されてしまう。

 「君、足に自信ありそーだね」

 「はっ?」

 ギルバートは笑顔であっちあっちと指を刺す。その方向には、見張り塔があった。

 「私はこっちに。とりあえず数を減らそう。きっと援護してくれる」

 「はあ。どこにそんな保障があるのさ」

 「大丈夫だって。女性達をあんな危険な場所に騎士が置いておける訳がないから」

 「あー、成程、ねっ」

 大きく跳躍したイスモは、一気に反対側へと飛び、謎の生命体の注意を引く。その辺にあった石や木などを投げてより認識させると、屋根にジャンプし伝いに走っていく。

 ギルバートは、おサルさんもびっくりだ、と思いながらイスモと逆のほうへ。

 一方、多少数が減ったアマンダたちは、少しずつ城壁側へと下がっていく。オルターが近くにいた傭兵仲間に槍と弓などを持ってくるように頼むと、探しに散って行った。

 「嬢ちゃん、どこまで下がる気だ」

 「もう少しです。ひらけたところにでられれば城壁から弓で狙えるはず」

 「おうよ」

 一行は直接攻撃が得意な者を最前線とし、間から魔法を放つ態勢を保ちつつ特定の場所へと足を進める。途中から長物を見つけてきた傭兵たちが加わり、前は厚くなっていった分、交代しながら体力の回復もはかった。

 ようやく目的地らしい大通りに出ると、一団が半分まで下がったところ、

 「矢が当たらぬ様、左右に散ってくれ」

 聞き慣れた女性の声が響いた直後、援護射撃が降り注ぐ。現場にいた者たちは反射的に言うとおりに動いたため、被弾することはなかった。

 最後の一体が倒れると、

 「いよっしゃあ、勝ったぜっ」

 「ふう。ようやく終わったか」

 様々な歓声がわき起こる中、アマンダは周囲を警戒しながら死体の中を歩いていく。アードルフが後ろから付いて来たが、特に気にすることはない。

 「上手くいったみたいだねー」

 「貸しにしとくから」

 離脱した二人が話しているのを見かけた令嬢は、思わず笑顔になり、駆けていく。

 「よかった、無事だったんですねっ」

 「うんうん。全滅させてくれたんだね、ありがとー」

 「あ、そうだ。奴ら、城の中にも出てきてたみたい」

 「完全に過去形なのか」

 「うん。将軍殿が対処したらしいよ。どうやったかまでは知らないけど」

 王国軍弓兵が教えてくれてさ、とイスモ。ギルバートが一行と離れていたことに気がついたヘイノは、援護と同時に頼んでいたという。

 「とりあえず一件落着、かなー」

 「ええ。そう、ですね」

 「何か懸念がおありですか」

 「そうじゃないの。どうしてか胸騒ぎがして」

 目を合わせる男衆。だが、本人も説明出来る訳でもなく、勘違いだと思いたいとアマンダは返す。

 「ヘイノ様と合流します。これからのことをうかがわないと。イスモとギルバートはみなさんのところへ戻ってください」

 「了解。片付けもしとくよ」

 「お願いします」

 「行ってらっしゃ~い」

 アマンダは城へと足を急がせ、早く安心した夜明けを求めた。

 城の前では五、六人でグループを組んでいる兵たちが出たり入ったりしており、何かが担架で運ばれている。令嬢は邪魔にならないよう端を歩き、挨拶をしながら中へと赴く。

 アンブロー城入口の通路は珍しい吹き抜け型になっていて、大理石を材料とした建物が印象的である。天井には美しい模様が描かれており、平時なら芸術的なあまり立ち止まってしまう程だ。結界に守られているので矢が飛んで来ることもなく、暖かな風が吹くととても心地よい。まさに風に愛された国ならではの外観である。

 大広間に出ると、中は似つかわしくない臭いが立ち込めていた。よく見ると床の一部が変色していたり、異物が付着している。

 「アマンダ、無事だったか」

 「ヘイノ様も」

 周囲を伺うアマンダは何故か緊張感が抜けなかった。だが、控えているアードルフも眉をひそめており、周囲を警戒している。

 「気づいたか。どうやら奴らは城の中から出てきているようでね。部下達が出所を探している」

 「あれは一体、なんなのですか」

 「分からん。少なくとも動物の類じゃないのは確かだ。アードルフ、コラレダにはいたか」

 「いえ。初めて見ました」

 「そうか」

 ふう、とため息をつくヘイノ。倒せるからまだ良いものの、得体の知れない化け物が祖国を我が物顔で徘徊しているなど、屈辱以外何者でもない。

 「あ、もしかしたらリューデリアたちならしってるかもしれません。すみません、慌ててこちらにきてしまいまして」

 「おや、根拠はあるのかい」

 「よう兵の方から話を聞いてから飛んでいきました。弱点もしっていましたし」

 「ふむ」

 「おお、ここにいたか」

 まるで見計らったタイミングで駆けてくるリューデリア。ちなみにサイヤは念の為に城下に残ったという。

 「ごめんなさい、リューデリア。一緒に行動すればよかったですね」

 「構わぬよ。それよりもこちらから魔力を感じてな」

 「魔力? この城には結界が張ってあるが」

 「いや、その魔力ではない」

 魔女が言うには、襲って来たのはゾンビという化け物で、人間の死体を邪法と呼ばれる方法で操ったものだという。既に死んでいるため痛みはなく、心臓を貫いても効果がないのはそのせいであるとか。

 はるか昔にも軍事力として使われたそうで、今となっては本の中でしか存在しない。魔法の国に伝わっているのも、ほぼほぼ歴史でしかないという。

 「技術伝承はあるが、あくまで文化を廃れさせない程度にしか残っておらぬ。ここまで大規模なものではない」

 「悪用されたのですか」

 「分からぬ。ただ、かの一族は伝統を重んじておる。外部に漏らすことはないはずだ」

 しきたりを守る、ということは国から出ないということ。出たとしてもライティア領にある港町ミルディアのみだ。当然、力を使うことなどない。当一族も争いに使われることを恐れているため、同じ種族にも警戒心が強い程らしい。

 「開発された、のかもしれないな。しかし、どこから人間の死体が出てくる。墓地は少し遠くにあるが」

 「ま、まさか」

 アマンダは今までのことを振り返って気づく。情報屋によれば、コラレダ傭兵の戦力は半分に分割されていた、と。

 「まさか、つく、ら、れた」

 思わず出た令嬢の声に、はっとする面々。

 「リューデリア殿、魔力の場所は分かるか、方角はっ」

 「複数ある。この近くでは」

 指したのは大広間の奥。この先には王座がある。

 ヘイノは頭を切り替え、指定された場所へと走り出した。他のメンバーも彼に続くが、あまりに臭いが酷くなっているため、顔を歪めてしまう。

 「くっ。もしかして結界で隠されていたのか」

 「隠蔽ではなく、運ばれているのだ。姿は隠せてもここまでの臭いまでは消せぬ」

 「出口という事か。なら入口はどこに」

 「情報屋がいれば頼んだのだが、な」

 彼女いわく、魔力の流れがおかしいところは感知可能だが、細かい内容までは把握出来ないという。

 リューデリアは布で口周りを覆うように将軍に伝えると、左手に小さな炎を出した。

 普段は閉じている荘厳な扉をくぐると、あたり一面はゾンビに埋め尽くされていた。まとう服は、特にアードルフには昔から見慣れているものであった。

 「なんて、ひどいことを」

 剣を構えながらも涙目になるアマンダの横を、容赦のない炎の筋が何本か通りすぎる。

 「ヘイノ。気をつけはするが、建物までは守りきれぬかもしれん」

 「なるべく抑えてくれれば十分だ」

 まだしっかりとついている肉に着弾した炎は、爆発音と共にゾンビ数体を巻き込む。さらに腕をなぎ払うと、広範囲に炎弾が炸裂。周りが倒されていることに気を止めない彼らは、ぞろ、ぞろ、と動き出す。敵の目には、もはや獲物しか映っていないようだった。

 「奴らを閉じ込める。アードルフ、左側の扉を頼む」

 「はっ」

 魔法攻撃で距離を稼ぎ、リューデリアが退出したのを見計らって急いで閉じられる扉。開け放った犯人探しする余裕はなく、中にいた兵士らと共に傭兵団と合流することになった。

 「城内が思ったより荒らされてなかった理由がこれか。タトゥめ」

 「おそらく町にも出て来ているだろう。サイヤがいれば守りは大丈夫だが」

 「生きていれば良い。死んでしまっては何もならんからな」

 「うむ」

 ヘイノは走りながら襟を掴み何かをつぶやく。その様子を見ながら、アマンダは何か出来ることはないかと必死に頭を回す。

 城内にいた王国兵たちとも足を合わせ城下へと脱出した一行は、向かって左側が、一部が王座で見た光景を再び見ることになる。

 「兄貴、お嬢様、こっちっ」

 頭上からイスモの声がすると同時に矢が降り注いだ。一行とゾンビたちの間を縫うと、すかさずリューデリアの炎が敵を襲う。

 「ヘイノ様、援護致します。お下がり下さい」

 と、屋根の上から弓を構えるエメリーンと部下たち。いくつか敵の頭蓋を突き破り足場を狭めさせていた。

 「状況は」

 「サイヤが侵入を防いで、身軽な野郎共中心に物資を集めてる」

 「そうか。アマンダ様、急ぎましょう」

 「ええ」

 「イスモ。他の弓兵達も合流出来ているか」

 「少しずつ集まってる」

 「よし。エメリーン、足止めだけで良い」

 「はっ」

 数の上では有利でも敵は得体の知れない化け物で、普通の戦いとは異なる。その為、まずは戦力の確保と状況把握を先決にしたヘイノ。アマンダの様子を見ながらも先を急ぐ。

 城壁が直角に曲がっている付近に一行がたどり着くと、淡い水色が覆っていた。これは水属性の結界であり、魔法に縁遠い者からは奇怪に感じただろう。しかし、この奇妙な膜は、今は自分らの命を守ってくれることに直感で気づいているようだ。

 魔女が結界の前で止まるように口にすると、彼女は皆の前に出て右手に魔力を集め始める。すると一部の結界がなくなり、中にある瓦礫の輪郭がくっきりとした。

 その場にいた人間全員が入ると、元通りの形になる。

 「すまぬが先に行く。これだけ大規模だと維持が大変なのでな」

 「場所わかる」

 「いや。だが魔力を辿れば着くだろう」

 私よりも現状打破を頼む、とリューデリア。了解、と返したイスモは、背中を見届けると、

 「お嬢様と将軍殿が帰ってきたら、ギルバートが話したいってさ」

 「ちょうど良かった。すぐに行こう」

 イスモはリクエストに答えて案内をし、ひとつの大きめな館の中に入る。王国兵たちが使っている宿舎であった。

 「思ったより気のいいれん、人たちで助かったよ。話の通じる貴族もいるんだね」

 「非常事態だからな。何か言われたら私がフォローしよう」

 「この上ない後ろ盾」

 「ふふ。君達は想像以上に逞しいな。こちらこそ助かる」

 「伊達に泥すすって生きてないからね」

 大げさに腕を広げながら話す、妙に色気がある傭兵。軽口を叩ける余裕があるのは良い兆候か、とヘイノは思った。

 食堂にやって来ると、ギルバートを中心に人が集まっていた。

 「やあ、無事で何よりー。ちょっと漁ってるよー」

 「民家はやめて欲しかったのだが、な」

 無力のため息をつく将軍だが、ここは気持ちを変える。

 ギルバートから現状を聞いた総大将は、部下に地図を持って来させると、広げながら以後のことを話した。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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