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第86話 マキとユウヤ


 私とユウヤとの初対面は最悪だった。


 あいつは自分勝手だ。いつもヘラヘラ笑って、規則なんてゴミだ! と言わんばかりに振舞う。


 細かいことは気にしない。


 物は片付けない。


 何をするにも大ざっぱ。何度割を食って声を荒げたか分からない。


 でも最後には許してしまう。あの無邪気な笑みを前にすると苛立ちの波が沈静化される。


 トラブルメーカーなのにあいつの周りには人が集まって、何だかんだで退屈はしなかった。


 気が付くとユウヤと仲良くなっていた。


 悪友の距離感とでも言うのだろうか。


 気軽にあいさつする気にはなれないけど、嫌々ながら付き合ってしまう間柄。妹がユウヤの弟に好意を持ったこともあって、結びつきはさらに強くなった。


 ある日からユウヤの様子がおかしくなった。やたらとそわそわして、声をかけると声を裏返させて大げさに反応した。


 怪しく思って問い詰めると、女子に好意を告げられたと白状した。


 驚くと同時に納得する自分がいた。


 女友達との談笑で色恋の話をすると、ユウヤの名前が上がることもあったからだ。


 冗談じゃなかったんだなぁと思いつつ、今まで迷惑をかけられた分だけいじってやった。


 後日女子の間でユウヤの名前が上がることが増えた。


 きょどってたユウヤが広めたとは思えない。告白の現場を目の当たりにした人がいたか、友人から友人へと広まったのかもしれない。


 この頃からだ。胸の奥底で焦りにも似たものがわき上がり始めた。


 これはあれだ。周りがこぞって狙い出すと、なんてことない道ばたの石が価値ある物に見えてくるアレだ。


 取られると思うと何だかんだ惜しくなるもので、何なら付き合ってみる? なんて言葉が口を突いた。


 問いを投げかけて何言ってんだあたし⁉ って焦ったけど、ユウヤは考えた末に首を縦に振った。


 あたしとユウヤは腐れ縁だ。女子に言い寄られた時に相談に乗ったこともある。


 ユウヤは何人かに好意を告げられて誰を選ぶか悩んでいた。そもそも自分は誰かが好きなのか? と自問自答している始末だ。

 

 そんなユウヤにとって、あたしは気心の知れた数少ない異性だ。


 偽物でも恋人を作ってしまえば選ぶ必要がなくなる。あたしに白羽の矢が立つのは道理だ。


 さながらあたしは女避けのかさ。ユウヤが告白を断る理由にあたしの存在を使うのは必然で、その日以降あたしは他の女子に疎まれた。


 所属してたグループからはハブられた。友達だと思っていた子も離れて行った。


 やっぱりかと思っただけで、それほど深く傷つかない自分がいた。

 

 元々仲良くするために誰かを落とすような空気は苦手だった。昔から男子と遊ぶことの方が多かったし、そういう性分だと割り切ることにした。


 その数週間後。あたしは自分の甘さを思い知ることになった。


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