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第63話 大巨木が見守る私たちの戦い

 私は自身の最高の魔法、「スパイラリ・デンドロン」を放った。


 フレデリカの足元に、木が生えた。木は舞台の石畳(いしだたみ)を突き破る。


 木がどんどん大きくなっていく。


「これがスパイラリ・デンドロンか」


 フレデリカはつぶやくように言った。


 木が、フレデリカの背丈を超えようとしたとき──。


 フレデリカはニヤリと笑って──唱えた。


「デンドロン・リフレクション!」


 私は驚いた。


 通常であれば、そのまま木の幹が巨大になり、フレデリカを木の幹の中に取り込んでしまうはずだった。


 しかし、木は巨大化しながら、フレデリカを()け、グングン大きくなる。


 そして巨大化しながら、逆に私に枝を巻き付けてくる!


(まさか! スパイラリ・デンドロンを──逆に(あやつ)ってきた!)


 私はこれまでの戦いの中で、ここまで驚いたことはない。自分の最高の魔法を(あやつ)られたのだから。


(くっ!)


 私は魔力のすべてをかけ、精一杯、巨木を(あやつ)る。


 私の手首や足に、枝が巻き付いてきたが、一方のフレデリカの体にも、枝が巻き付いている。


 木はどんどん巨大化する。舞台の床の石畳(いしだたみ)はすでに破壊され、めくれ上がった。木は大巨木といえるほど成長した。高さは50メートルはあるだろう。


「ミレイア!」


 頭上を見ると、フレデリカが自分に巻きついた枝を振りきり、飛び上がっていた。


 フレデリカは魔力で作り上げた剣を、振りかざしている。


 しかし、私も黙ってはいない。


「ドウールム・フォール!」


 私は咄嗟(とっさ)に、自分の聖女の杖を「硬化(こうか)」させ──。


 ガキイイイイン


 フレデリカの魔力の剣を、杖を横に持ち防いだ。


「さすがだ!」


 フレデリカは剣を横に払う。


 ガキン!


 私は剣を、弾き飛ばそうと必死だ。


 ガキン、ガキン!


 杖と魔力の剣がぶつかり合う(かわ)いた音が、周囲に響く。


 これは人間と人間の戦い。最後は肉弾戦、接近戦なのか。


 そのとき!


「ううっ……?」


 フレデリカは(うな)った。顔には冷や汗が出ている。魔力を使い果たしつつあるようで、動きが遅くなってきている。


 私も、自分の体に残っている魔力は少ない。


 頭の中は、真っ白になりつつある。大きな魔法を使い続けてきたから、仕方ない。

 

 そのとき、私の足に、枝が巻きついた。


 フレデリカが、まだ巨木を(あやつ)っていたのだ。


 何という執念(しゅうねん)


「覚悟!」


 フレデリカは剣を下手(したて)に構えた。

 

「グラディウス・エクスプロージョン!」


 フレデリカはそう唱え、剣を(なな)め上に斬り上げてきた。


 私は杖で、剣を防ぐ──。


 バーン!


 そんな音とともに、私は吹っ飛んだ。剣に触れると、爆発が起こる魔法だ。


 私は宙を舞った。


 私は失神しそうになった。


「私の勝利は目前!」


 フレデリカはつぶやいた。


「素晴らしい戦いに、私の勝利で、幕を降ろそう」


 ──そうはいかない!


 私は一回転し、地面に降り立ち──。

 

 タッ


 フレデリカの方へ高速移動し、杖を構えた。


「まだそんな力が!」


 フレデリカがあわてて、防御壁(ぼうぎょへき)を作る。


 しかし私は構わず、杖を横に振った。


 ガキイイイイッ


 魔法名は無い。


 ただ、私の愛用の杖──聖女の杖を、フレデリカの胴に目がけて、横に振りきった。


「ああっ」


 フレデリカはそんな声とともに、吹っ飛んでいく。


 しかし!


 フレデリカは大巨木の幹に体が当たるかと思った矢先、体を反転させ──木を蹴り──!


 またしても、大きく飛び上がり声を上げた。


「地獄の裁きを受けよ! ノワール・ライトニア!」


 空から漆黒色しっこくいろの雷の魔法が降ってきた。しかし、私にはその魔法が、止まっているように遅く思えた。


 フレデリカの魔力が、(いちじる)しく落ちていたのだ。いや、私の集中力が高まっていたのか……。


 私は漆黒色(しっこくいろ)の雷を()け、唱えた。


「最後の天の裁きを受けよ! アストラペ・ライトニア・フィーニス!」


 空に稲妻が走り、1回、2回、3回と、巨大な雷がフレデリカの周囲の地面に直撃した。


 そして4回目!  


 もっとも巨大な──まるで東洋の龍のような魔法の雷が、フレデリカの体に直撃した。


 フレデリカは()けなかった。いや、()けられなかったに違いない。


「フフフッ」


 フレデリカは雷の魔法の直撃を受けながら、立っていた。


 全身が焼け()げ、煙が出ている。


「さすがミレイア・ミレスタ」


 フレデリカは倒れない。(ひざ)に両手をついて、ただ立っている。


「フレデリカ!」


 そのとき、聞き覚えのある女性の声がした。


「早く動きなさい! 攻撃して、我がレイリーン家の力を見せつけるのです!」


 壊れた舞台外で、キーキー声を出しているのは、フレデリカの母、アグディアーナ・レイリーンだった。


 どうやら後ろの席で、ずっとこの戦いを見ていたらしい。


「フレデリカ! この役立たず! 攻撃しなさい!」


 アグディアーナ・レイリーンが金切り声を上げる。


 フレデリカは大巨木の幹の下で、立ったまま動かない。


 あの巨大な雷を、体に受けたのだ。動くことはできないだろう。


「フレデリカ、あなた」


 私は言った。


「あの雷の魔法を受けても──それでも、倒れないのね」

「いや……違うな」


 フレデリカは疲れ切った表情で、ニヤリと笑った。


「……ミ、ミレイア……お前……あの最高の雷魔法……て、手加減して放ったな」


 私が黙っていると、フレデリカは続けた。


「そうしないと、私を殺してしまう……。そ、それくらいあの魔法は、強大で強力だった……。うう……だから、手加減して放った」

「ええ」


 私はうなずいた。


「私はあなたに、生きていて欲しかったから」

「ミレイア……どこまでもすごいヤツだ……わ、私が、負けるのは……当然……だ」


 そのとき審判長が、素早く舞台に駆け寄り、フレデリカの顔を確認した。


「フレデリカ、試合はどうするんだ?」


 フレデリカは黙ったまま、立っている。


「では──試合を終了しよう。早く火傷(やけど)治療(ちりょう)しないと、取返しがつかない」


 フレデリカに確認をとった。


 フレデリカはしばらく黙っていた。


 そして、決心したように、静かにうなずいた。


「……ミレイアの勝ち、だ。私はもう、戦えない」

「うむ、よろしい」


 審判長はつぶやき、魔導拡声器(まどうかくせいき)を取り出した。


『30分39秒、フレデリカの戦意喪失(せんいそうしつ)により、ミレイア・ミレスタの勝ちでございます!』


 そして、無観客のスタジアムに向けて、続けて声を上げた。


『ミレイア・ミレスタ、世界学生魔法競技会、優勝です!』


 うおおおおっ!


 叫んで、私たちのほうへ駆け寄ってきたのは、ゾーヤ、ナギト、ランベールたちだった。


「おい、やったな!」

 

 ナギトは声を上げた。


「やっぱり、最高だ! ミレイア!」


 ゾーヤは私の頭をなでた。


「ヒヤヒヤしたよ」


 ランベールはクールに言う。


 マデリーン校長は席を立っていないが、笑顔で私に手で合図を送ってくれた。


 そのときようやく、フレデリカが舞台にしゃがみ込んだ。


 私は大巨木の下で座り込んでいるフレデリカの横に座り、言った。


「フレデリカ、試合は終わったよ」

「……私はゆるされない」


 彼女は言った。大巨木は魔力が薄れ始め、もう消えつつある。


「負けることはゆるされない」


 しかし、フッと笑顔になった。


「でも、ミレイアなら、負けてもいいかな」

「このレイリーン家の(はじ)さらし! 立て、フレデリカ。バカ娘が!」


 フレデリカの母が騒いでいる。でも私とフレデリカには、そんな雑音は関係ない。


 いつの間にか、フレデリカの頭から鹿のような角が無くなり、口の牙も消えていた。そして子どものような姿から、17歳の女の子の姿に戻っていた。


 試合は終わった。


 私は優勝した。無観客のスタジアムの中で。

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