表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/64

第57話 赤鷲の間にて

 世界学生魔法競技会、決勝の3日前。


 私、ミレイアはゾーヤ、ナギト、ランベールと一緒に、シャルロ王国の中央都市に来ていた。目の前にはシャルロ城がある。


 今日は、決勝に向けての訓練は休み。


 シャルロ城内で、大きな会議が開かれる。そこに私が、なぜか呼ばれた。


 私を呼んだのは、私の師匠(ししょう)である、アルバナーク婆様! エクセン王国から、わざわざ私に会いにやってきたらしい。


「すげえなあ……。国王が住んでるんだよな、ここ」


 ゾーヤはシャルロ城を見上げながら、言った。


「じゃ、じゃあ、オレたちは外で待ってるから」


 ナギトが言った。私がアルバナーク婆様に会っている間、外の中央都市を散策(さんさく)するという。


 のん気だなあ……。


 私がシャルロ城に入ると、侍女(じじょ)に「赤鷲(あかわし)の間」へ案内された。赤鷲(あかわし)の間は、国賓(こくひん)レベルの客をもてなすときに使用される、大きな部屋だ。


「し、失礼します」


 私は緊張しながら、部屋に入った。



「来たね、ミレイア」


 その部屋では、アルバナーク婆様が待っていた。


 部屋には大きなテーブルがあり、7名の高貴そうな人々が座っている。


(えっ? うそ! 聞いてない!)


 すごい人たちが座っていた。アルバナーク婆様はともかく、元聖女王のリベラ・ラベンストール、大勇者のカイネ・ルルドス、大魔法使いのサイマジー・リパイネーラ……。


(う、うわああ……どうしよう?)


 私は戸惑った。全員、新聞などで見たことがある有名人ばっかり!


「座りなさい」


 元聖女王のラベンストールが言った。


「は、はい」


 私はあわてて、席に座った。


「なぜ、ここに呼ばれたのか、何となくは分かっているね?」


 元大魔法使いのリパイネーラが言った。ヤギのようなあごヒゲだ。今年で131歳と聞いている。


「今度のフレデリカ・レイリーンとの決勝戦は、我々人類にとって、とても重要だ」

「えっ?」

「この世の命運が、君にかかっておるのだよ」

「ど、どういうことですか?」

「重要なのは、あのフレデリカが使役(しえき)している『闇の堕天使(だてんし)』のことだ」

「フレデリカが上空に浮かせている、謎の彫像のことですか?」


 私が聞くと、今度はアルバナーク婆様がうなずいた。


「そうだ。あの闇の堕天使(だてんし)の正体は……」


 アルバナーク婆様は、「ふむ」とつぶやき言った。


「1200年前、この世を(ほろ)ぼした魔王なのだ。当時の大勇者と聖女が、彫像の中に魔王を封印した。それを、エンジェミア東部のランティカ山の地中に埋めたのだ」

「そ、その魔王が、この世を(ほろ)ぼしたというのは、本当ですか?」

「古代文献に書かれている。また、我々の過去視魔法(かこしまほう)でも確認しており、事実だ」


 私は、何かとんでもないことに巻き込まれそうだ、と予感した。


「でも、どうしてフレデリカが、魔王を封印した闇の堕天使(だてんし)使役(しえき)しているのでしょう?」

「少しずつ説明しよう。まず──フレデリカの一族……つまりレイリーン家は大貴族だ。彼らの先祖は東方の術師。東方の術師たちにも、光の者、闇の者がおってな」

 

 アルバナーク婆様が考えるように言った。


「『式神(しきがみ)』など、我々が普段聞いたこともないような術を使う。それは普段、平和利用する者が多数らしいんだが……」

「良い東方の術師もいれば、悪い東方の術師もいるのですね?」

「その通りだ。レイリーン家は闇を(つかさど)る術師一家でな。彼らは自分たちの術を、レイリーン魔導術と呼んでいるらしい」


 私は合点(がてん)がいった。フレデリカの心に見える「闇」は、先祖の呪縛(じゅばく)からきているものなのかもしれない。


「レイリーン家は、術を悪用し、魔王を封印した闇の堕天使(だてんし)を地中から掘り起こしたのです」


 元大聖女のラベンストールが口を開いた。


「フレデリカの最大の強みは、『闇の堕天使(だてんし)』の使役(しえき)です。使役(しえき)とは『(あやつ)る』ということ」


 彼女は続けた。


「中から魔王が出てくると厄介(やっかい)です。その前に、フレデリカを倒しなさい」


 た、大変なことになった。あの闇の堕天使(だてんし)という空飛ぶ彫像の中には、大昔の魔王が封印されているなんて!


 するとアルバナーク婆様も言った。


「それから、決勝の場所は、エンジェミアでもシャルロでもない。エクセン王国で行われることになった」

 

 エクセン王国は、私の故郷(こきょう)だ!


「そうなんですか? なぜ?」

「我々が、魔法競技会に進言した。エクセン王国ならば、闇の堕天使(だてんし)の闇の力に耐えうるスタジアムが存在するからな」


 私はうなずいて、アルバナーク婆様を見た。彼女はしみじみと言った。


「ミレイア、お前がエクセン王国を追放されたとき、エクセン王国に飛来した闇の堕天使(だてんし)霊視(れいし)したね」

「は、はい!」

「それが現実になったということだよ。私たちでは、フレデリカは倒せない。それほどフレデリカの闇の力は強い」

「そんな……元聖女王様や大勇者様たちでも?」

「その通り、お前の中に眠る、不可能を可能にする『力』が、フレデリカを倒すだろう」




「何だか大事になってきちゃった」


 私は中央都市に流れるアモール川の遊歩道で、ゾーヤやナギト、ランベールたちに言った。


「フレデリカがそこまで危険人物だったなんて」

「だから言ったろ、あいつはヤバいって」


 ゾーヤは言った。


「『あいつと戦っていると、深い、地獄の沼に引きずり込まれそうな感じになる』ってさ」


 川が太陽の光を反射し、キラキラ輝いている。


 するとナギトは言った。


「だけど、結局、闇は光に敵わないんじゃねーか?」

「そう……だね」

「ナギトの言う通り、闇より、光のほうが強いはずだ」


 ランベールもそう言ってうなずいた。川魚がピシャッとはねた。


「なあ、どうでもいいけど」


 ゾーヤは言った。


「中央都市でさ、美味しいアイスクリームを売ってる、『ラビリッツ』って店があるんだ。行こうぜ!」

「『ラビリッツ』は、ミルクとチョコレートのシャーベットが美味(びみ)だ」


 ランベールは静かに言った。彼が、スイーツ男子だったとは。


「ミルクの濃厚さと、チョコレートのほろ苦さを堪能(たんのう)できる」

「はやく堪能(たんのう)しようぜ」


 ナギトは伸びをしながら言った。すると私は口を開いた。


「ナギト、私や皆におごって。だってお金持ちでしょ」


 私は笑って言った。


「おいおいおい! 何でそうなる!」


 ナギトはあわてて叫んだ。──私たちは笑った。


 私は、本当は不安で仕方なかった。


 スコラ・シャルロが無くなってしまうかもしれないこと。


 戦争が始まるかもしれないこと。


 そして、フレデリカがどんな戦いを見せるのか、ということ。


 フレデリカが恐ろしい相手だというのは、間違いなかった。


 アモール川は静かに、ただ優しく流れていた。

☆作者からのお知らせ


 このお話を読んで、「面白かった!」と思った方は、下の☆☆☆☆☆から、応援をしていただければうれしいです。


「面白かった」と思った方は☆を5つ


「まあ良かった」と思った方は☆を3つ


 つけていただければ、とてもありがたいです。


 また、ブックマークもいただけると、感謝の気持ちでいっぱいになります。


 これからも応援、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ