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第56話 その頃、フレデリカは④

 フレデリカの自宅である、通称「レイリーン屋敷」は、エンジェミア中央地区の静かな高級住宅地にあった。


 レイリーン屋敷は、15000坪の敷地内の中にある。この庭園の中に、レイリーン屋敷とは違う、真っ白い巨大な四角い建物があった。


「レイリーン魔導術集会所」と呼ばれる施設である。




「フレデリカ様!」

「いらっしゃったぞ!」


 レイリーン魔導術集会所内のホールには、約1000名もの人々が椅子に座っている。


 そこに、白いローブ姿の少女が現れた。フレデリカだった。彼女の後ろには、母親のアグディアーナもいる。


 万雷(ばんらい)の拍手の中──。


「皆の者、聞け!」


 フレデリカは檀上(だんじょう)に立ち、観衆に向かって声を上げた。


「我々のレイリーン魔導術は、来年、すべての人民に知れ渡ることになる!」


 ウオオオオオ!


 観衆たちは声を上げた。


 レイリーン魔導術とは、レイリーン家に伝わる秘密の魔法術である。フレデリカも幼い頃から、それを体得しているのであった。


「私が、1週間後の世界学生魔法競技会で、優勝するからだ!」


 また万雷(ばんらい)の拍手。まるで──教祖(きょうそ)のようであった。


 フレデリカが立っている檀上(だんじょう)の手前では、おとなしそうな10歳くらいの少女が、眠そうにして椅子に座っている。隣にいるのは、少女の母親だろう。


 バシャッ


 すると──フレデリカが檀上(だんじょう)の机の上にあった、コップの水を、その少女にかけた。


「お前!」


 フレデリカが、少女に向かって声を荒げた。観衆はシーンと静まり返った。


「お前……レイリーン魔導術の訓練をさぼっているな」

「い、いえ!」


 少女は泣きながら、言った。


「そんなことはありません!」

「お前の体から出ている、悪魔色の『気』を見れば分かる。魔導術の訓練を(おこた)えば、悪魔がとり()いてしまう。教育部屋に連れて行け!」

「や、やめてください! どうか、フレデリカ様、おゆるしを!」


 隣に座っていた少女の母親は叫んだ。しかし、少女は黒ローブの男たちに、連れていかれてしまった。


 フレデリカはそれを見て、うなずきながら言った。


「レイリーン魔導術を学ぶ者は、二度と引き返せない! しかし、その先には永遠の幸せが待っている」


 そして続けた。


「今年、全国の養成学校が統合し、スコラ・エンジェミアの支配下に入る」


 フレデリカは声を張り上げた。


「そのとき、我がレイリーン魔導術が、学生たちの魔法技術の基礎(きそ)となるのだ!」


 ドオオオッ


 観衆が歓声を上げた。


「フレデリカ」


 すると、後ろから母親のアグディアーナが小声で言った。


(あの言葉を言いなさい)

(分かりました、母上)


 フレデリカはうなずき、観衆の方に振り返った。


「すべてはレイリーン魔導術のためにささげる! 世界を1つにまとめあげ、レイリーン魔導術で染め上げる!」


(すべてはレイリーン家が支配するためだ。聖女王など、もう信頼するものか。私が、聖女王を超えた存在になる!)


 フレデリカはそんなことを思いながら、観衆の声援を聞いていた。




 その2時間後──庭園内、フレデリカの自宅、「レイリーン屋敷」の客間では──。


「大丈夫なのかね、その子で」


 円卓(えんたく)に座った老人──バルフォード・バルダ氏は、正面のフレデリカを見ながら言った。彼は政治家だ。


 すでに、レイリーン魔導術集会所の観衆は、帰ってしまっていた。


「大丈夫、とおっしゃいますと?」


 フレデリカはギラリとバルフォード氏をにらみつけた。


 今にも椅子から立ち上がろうとしている。


「フレデリカ、おやめ」


 アグディアーナはフレデリカの肩をさわって、落ち着かせた。


 バルフォード氏は舌打ちをし、あごヒゲをなでながら言った。


「世界学生魔法競技会の決勝で、勝算はあるのか、と聞いている。あのミレイア・ミレスタという女子学生に」

「必ず、勝つ。そういうことです」

「レイリーンさ~ん。今度のスコラ・エンジェミアを中心とした全世界学校統合計画の成否は、君にかかっているんスよ~」


 若い青年が言った。彼はエンジェミアの有名実業家、ダバーダス・マイクル。


「だって、この計画の広告搭(こうこくとう)みたいなものなんスからね」

「敗北されてしまうと困るねえ」


 今度は緑色のスーツを着た、ブレンダン・リーキ公爵(こうしゃく)が言った。


「古代からレイリーン家に連綿(れんめん)と続く、レイリーン魔導術。それを世界各地に広めるため、我々は尽力(じんりょく)した。今日は久々の集会だったと聞く。にわか信者も増えたらしいな」

「ありがとうございます」


 アグディアーナは娘の肩を抱いて、言った。


「しかしそのために、我々は何億もの金を出した。2倍にして返してもらう約束だぞ。この計画、必ず成功させてもらう」

「まずは、決勝戦を勝てばよろしいのでしょう」


 フレデリカは言った。


「そして私は、聖女王以上の存在になります」

「へええ?」


 マイクル氏は笑いをこらえながら言った。


「そりゃ言い過ぎじゃないの? 聖女王以上? フレデリカさん」

「レイリーン魔導術を学ぶ者は、二度と引き返せない。しかし、その先には永遠の幸せが待っている」


 フレデリカは唱えるように言った。


「これはレイリーン家に伝わる言葉です。それが私の信じる道筋(みちすじ)

「ふん」


 バルフォード氏はつぶやくように言った。


「修羅の道を行くというわけか。頭蓋骨(ずがいこつ)(つぶ)されて死んだ、父親とそっくりだな」


 フレデリカはギリリと(くちびる)()んだ。

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