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第53話 準決勝第2試合①

 魔法競技会準決勝第1試合の翌日──。


 ガタガタガタ


(結構()れるわね)


 その日の朝10時、私は馬車に()られていた。現在、エンジェミア王国のバウクラフト草原を走っている。


 私──ミレイアは学校を休み、ジョゼットの試合──すなわち、魔法競技会準決勝第2試合を見に行くことにした。


 私はジョゼットと、彼女の競技パートナー、サイモン・マレーカと一緒に馬車に乗っている。


「私はフレデリカ様に勝ちます」


 馬車の中で、ジョゼットは決意したように、私に言った。


「そして、スコラ・エンジェミアを元の楽しい学校に戻すのです」


 馬車は、ジョゼットVSフレデリカの試合が行われる、バウクラフト草原を北に進んでいる。


「僕もかんばるよ」


 私の前に座っている、競技パートナーのサイモン・マレーカが言った。サイモンは、ジョゼットの弟。12歳だ……。


 エンジェミア王立勇者養成学校の中等部、1年生だ。小柄だが、勇者としての才能は中等部で1番らしい。


「姉さんは1人で、僕を育ててきてくれたからね。今日、恩を返すよ」

「今日だけじゃなくて、ずっと恩を忘れないでよ」


 ジョゼットはそんな冗談を言って、クスクス笑った。


「でも、サイモンは12歳……競技パートナーとしては幼なすぎるんじゃ」


 私が聞くと、ジョゼットはさみしそうに言った。


「私は、エンジェミア王国の聖女、フレデリカ様に逆らいました。だから、勇者候補(こうほ)の競技パートナーが、他校から見つかりませんでした。皆、フレデリカ様に逆らうのを怖がっているんです」

「だから、弟のサイモンを?」

「ええ……そうするしかありませんでした」


 そうか……。ジョゼットは、エンジェミアで危険視(きけんし)されているのか。だから12歳の弟を競技パートナーにせざるを得なかった……。


「大丈夫だって! 姉ちゃん、僕、強いんだぜ!」


 サイモンは、やる気まんまんだ。


 しかし、大丈夫だろうか。相手はあのフレデリカ。フレデリカの競技パートナーも気になる。




 バウクラフト草原の目的地についた。グレーゴーンストーンといわれる、古代の先住民族が建造した、石の祭壇(さいだん)がある。


 試合会場はそこだった。すでに世界学生魔法競技会の審判団、白魔法医師たちのテントが張ってある。


「来たか」


 フレデリカは1人で待っていた。ん……? フレデリカの競技パートナーは?


「パートナーは……おや、ジョゼットの弟君かい? ──かわいいねぇ」


 フレデリカはなぜか、2本の魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を持っている。


 そもそも、彼女の競技パートナーの姿が見えないが。


「うるさいっ! 姉ちゃんたちを苦しめて!」


 サイモンは声を上げた。


「今日は勝たせてもらうぞ!」


 私はテント小屋の横に椅子を出してもらい、座って観戦することにした。


 ドーン


 試合開始の太鼓(たいこ)が鳴る──。


「じゃあ……()きな」


 フレデリカは薄く笑った。ゾクッ……私はその瞬間、鳥肌が立った。


 フレデリカの横に、不思議な青色の半透明の物体が現れた。やがてそれが、人間の形に、形作られていく。


「これが私の競技パートナー……ゲンマ! 古代語で『宝石』の意味だ」


 それは人間の形をした、青い半透明の物体だった。美しく宝石のように光り輝いている。


「私は宝石をもとにして、戦闘人形を作り上げた。東洋では『擬人式神(ぎじんしきがみ)ともいうが、名前などどうでもいい。……ゲンマ、やれ」


 フレデリカは手にしていた魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を2本、そのゲンマなる戦闘人形に手渡した。


 すると──ゲンマはその2本の魔力模擬刀(まりょくもぎとう)をそれぞれ左手、右手に持ったのだ。


「二刀流!」


 私は思わず声を上げた。


 一方、フレデリカ自身は岩場に座り込んでしまった。


 ゲンマは、ジョゼットとサイモンのほうに走り込む。


「そんな人形など、破壊します!」


 ジョゼットは叫び、サイモンも走り込む。


 ガッシイイ


 ジョゼットは左から杖を叩きつけ、サイモンは右から魔力模擬刀(まりょくもぎとう)で斬りつける。


 しかしゲンマは2つの魔力模擬刀(まりょくもぎとう)で、左右の攻撃を受けるのだった。


 ドッガアア


「キャアア!」


 ゲンマは前蹴りで、ジョゼットを蹴り飛ばす。ジョゼットは5メートルは吹っ飛んだだろうか。


 サイモンの素早い、上段斬り!


 ガシイッ


 ゲンマはそれを魔力模擬刀(まりょくもぎとう)で受けた。


 ブワアアッ

 

 ゲンマは声も出さず、魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を横に振りはらう。


 サイモンはそれを()け、3メートル後退した。


 ズバアッ


「えっ!」


 私は思わず声を上げた。


 サイモンがいつの間にか、ゲンマの後ろにいて、ゲンマの背中を切り裂いていた。


 分身の術!


()しい」


 するとフレデリカが言った。

魔力模擬刀(まりょくもぎとう)

 次の瞬間──見ると、ゲンマの魔力模擬刀(まりょくもぎとう)がサイモンの腹部を前から(つらぬ)いていたのだ。


 えっ? い、いつの間に? ゲンマの後ろにサイモンがいたはずなのに、今はゲンマがサイモンの前にいる!


「あっ……ぐっ」


 サイモンは目を丸くし、「な、なんで」と言いながら、その場に倒れた。


「お前が背後から切り裂いたゲンマは、分身だよ。分身の術を分身の術で返した」


 フレデリカは笑った。

 

 ゲンマは魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を、サイモンの腹部から抜き取る。


 私は改めて、武器が真剣でなくて良かった──と思った。


「サイモン、単にゲンマのスピード、分身の術がお前を上回っていただけだ」


 フレデリカは岩場を降り、ピシッと指を鳴らした。するとゲンマは光り、宝石となって地面に落ち、泡となってかき消えた。


 サイモンは地面にうつ伏せになって、失神している。


「くっ……サイモン」


 ジョゼットがようやく起き上がった。フレデリカは言った。


「サイモンは魔力模擬刀(まりょくもぎとう)で攻撃されたとはいえ、1日は起き上がれないだろう。ジョゼット、1対1でやるぞ」


 私は息を飲んだ。


 ジョゼットは杖を構えた。


 ──本当の闘いは、これから始まる。

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