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第52話 準決勝第1試合②

 シルビアは岩場の上から飛び降りた。


「さあて」


 シルビアは笑った。


「精霊族の力を見せてあげるわ」


 彼女は杖を振るい、火の球の魔法を撃ち出すと、再び岩場のほうに駆け上がった。


 私はシルビアの火の球を魔法で打ち消す。


 この火の魔法は牽制(けんせい)だ。


 岩場から降り、再び岩場に駆け上がる意味は──?


「はあっ!」


 タッ


 シルビアは岩場を蹴り、大きく飛び上がり体を反転させると──。


 彼女は空中で唱えた。


「アルコンソード!」

 

 上空から、鳥の翼のような物体が、無数に降ってきた。


 その翼、一枚一枚が鋭利(えいり)な刃物だ!


 ズババババババッ


 私はとっさに()けた。


 鳥の翼が、地面に次々と突き刺さる。


 私が逃げると、次々と、私を追いかけ回すように、鳥の翼が襲ってきた。


(追尾魔法か! 逃げるわけにはいかない)


 私は振り向いて、魔法の防御壁(ぼうぎょへき)を発動した。


 ガガガガガガ


 私の防御壁(ぼうぎょへき)を、鳥の翼が(けず)り取る。


(シルビアは?)


 どこだ?


 ──いつの間にか、シルビアはまた岩場にいた。素早い!


 ブワッ


 そんな音とともに、彼女は再び岩場を飛び上がり──。


 大きく飛んだ。


 今度はまるで鳥のように、空を飛んでいる。背中には、魔法の翼が生えているのだ。


「見事ね」


 私は驚きつつも、彼女を()めた。


「まさか、空を飛ぶとは思わなかったわ。さすが精霊族」

()めるのは、まだ早いんじゃなくて?」


 シルビアは魔法の翼を羽ばたかせ、上空で杖を振った。


「さあ、これでお仕舞(しま)いにしましょう。有能なエクセン王国の元聖女さん」


 あら、よく知っているのね。


「アルコンソード・ライトニア!」


 シルビアが唱えた。


 ズドドドドド


 その瞬間、空から雷を帯びた魔法の鳥の翼が、無数に降ってきた。


 私は逃げ、その鳥の翼を、魔法の防御壁(ぼうぎょへき)を使いながら、()ける。


 ガガガッ バリバリッ


(今度は雷属性の魔法か!)


 鳥の翼が防御壁(ぼうぎょへき)()れると、バリバリと音がする。


 これに()れたら、感電して失神する! 失神したら、鳥の翼が、私を(つらぬ)くだろう!


「アハハハ!」


 シルビアは上空を飛び回り、笑っている。


「私は高みの見物よ。逃げ回りなさい、ミレイア・ミレスタ!」


 その瞬間も、雷属性の鳥の翼がひっきりなしに、空から降ってきていた。


「そんなに()け続けたら、(つか)れちゃうじゃない? あきらめて雷属性の攻撃を受けて、失神することをおすすめするわ」


 シルビア! 恐ろしいことを言う。だが、私はすでにこの状況の打開策を導き出していた。


 私は()けるのをやめ、全速力で前に進み出た。無数の鳥の翼は、私の後方の地面に刺さり続けている。


「んっ?」


 シルビアは空中で飛び続けながら、驚きの声を上げた。


「ふん、前に行くとは? しかし、アルコンソード・ライトニアが、あなたを(つらぬ)くのは、時間の問題ね」


 シルビアが、魔法を放出する位置を、杖で調整しようとしたとき──。


(ここだっ!)


 私は唱えた。


「グラビティ・ネブリナ!」

「え?」


 上空のシルビアは眉をしかめた。


「う!」


 ドチャ


 そんな音と共に、シルビアは地面に墜落(ついらく)した。


「ひ、ひい! い、痛い!」


 彼女は地面にうつ伏せになって、声を上げた。


 約8メートルの高さから、地面に落ちたのだ。


 シルビアは墜落(ついらく)しそうになったとき、防御魔法を瞬時に体に張ったようだ。しかし、体が痛くないはずがない。


「ま、まさか! 重力魔法とは!」

「飛んでいるあなたを打ち落とすには、あなたに重力をかけるしかないと思ってね」


 彼女は地面にうつ伏せになり、起き上がろうとする。


 ミシミシミシ


 しかし、私の重力魔法のせいで、立ち上がれない。


 私はどんどん重力を強める。

 

 シルビアの体が、少し地面にめり込んでいく。


「このまま重力をかけ続ければ、骨折はまぬがれない。防御魔法で全身を守っているといっても、それがいつまで持つかしら」

「ひい……」

「まいったをしなさい」

「い、いやよ!」

「では──」


 私は聖女の杖をかかげた。まいったをしないなら、しょうがない。


「グラビティ・ネブリナ!」


 ミシミシミシ


「キャアアアアア!」


 うつ伏せのシルビアは声を上げた。また体が、地面に少しめり込んだようだ。もう彼女が身動きするのは、私が重力魔法を解くしかない。


『試合をいったん、停止しなさい!』


 その時、審判団の声がした。


 審判団が向こうのテントから駆けつけたのだ。


 私は重力魔法を弱めた。


 審判団長が、地面にうつ伏せになっているシルビアに声をかけた。


「シルビア、もう『詰み』だ。君が勝てる見込みはなくなった」

「い、いやよおお! 『まいった』するなんて!」


 シルビアはうつ伏せになりながら、ワンワン泣き出した。まだ、私の重力魔法はかかったままだ。威力は弱めに調整してあるが。


 審判団たちは一緒に来た白魔法医師たちと、相談していたが、すぐに──。


 審判団長は私を指さし、魔導拡声器(まどうかくせいき)で、声を上げた。


『8分38秒、シルビアは試合続行不可能とみて、ミレイア・ミレスタの勝ちとします!』


 私はホッとため息をついて、重力魔法を解いた。


「ひいいい……」


 シルビアはため息をつきながら、ごろりと仰向けになった。


「お、恐ろしい強さね、あなた!」

「どうも。でも、あなただって素晴らしい技を持っていたわ」


 私が言うと、シルビアは疲れ切ったように笑い、「ありがとう」と言った。




 少し時間が経った。

 

 シルビアとドルコイは、白魔法医師の診察を受けている。


「勝ったんだな」


 ナギトが、ヨロヨロと私のほうに歩いてきながら言った。


「つ、疲れた……ぜ。肩が(いて)ぇ」


 ナギトはよろける。無理もない。ドルコイの巨大魔力模擬刀(まりょくもぎとう)が、肩に刺さったのだから。


 私は、ナギトの体を支えた。


「大丈夫」


 私は言った。


「私が……あなたを支えるから」

「それにしてもよ」


 ナギトが言った。


「シルビアって、スタイルよくて、美人だったよなあ……やっぱ精霊族はモノが違うぜ……」

「あっそ」


 私はナギトを突き放し、さっさと馬車に戻ることにした。


 ナギトは地面にすっ転んだ。


「いてぇ! お、おいっ。何してくれんだよ!」

「自分で起きて! 早く帰りましょ」


 私はちょっと腹を立てながら言った。


「なに怒ってんだよ!」


 ナギトはブーブー文句を言っている。白魔法医師の1人はナギトに、「君、大丈夫かね」と心配している。


 世界学生魔法競技会準決勝──私は、ナギトの協力のおかげで勝利をおさめた。


 明日の昼、フレデリカとジョゼットの試合が始まるのだ。


 勝ったほうと──決勝戦になる。


 必ずフレデリカが勝ち上がってくる。


 私は確信していた。


 しかし気になるのは……ジョゼットはともかく──。


 フレデリカの競技パートナーが、一体、誰になるのか、ということだった。

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