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第38話 ミレイアVSカロリーヌ

 イージャ歴2023年、11月23日。


 私は全国学生魔法競技会の1回戦に出場するため、エクセン王国のアンドリクスという町に向かった。まあまあ(さか)えている。


 その町の、あまり大きくないタルム競技場で、1回戦がひっそりと行われる。


(ついにこの日が来たわね──)


 私は控え室で、集中した。


(トーナメントBブロックのフレデリカと戦うまで──つまり、決勝に勝ち上がらなくては)


 私は競技場に入り、舞台に上がった。トーナメント1回戦だからなのか、観客はまばらだった。100人程度だろう。この1回戦の対戦場所は、占いで決定したそうだ。


 決勝はエンジェミアで大々的に行われるはずだ。


「ミレイア! 集中しろ!」


 舞台の外で、ナギトが叫んでいる。ナギトは助言者(アドバイザー)の役を買って出てくれた。ゾーヤは、観客席で観てくれている。


「相手はスコラ・エクセン所属だからな」


 ナギトは続けて叫んだ。


「相手のカロリーヌは、ジェニファーと仲が深いらしい。しかもここはエクセンだぞ、相手の応援も多いだろうぜ。気を付けろ!」


 相手のカロリーヌ・ランジェマルケは、もうすでに競技場の上に立っていた。彼女はスコラ・エクセンの1年生だ。


 私をにらみつけている。


「あのさー」


 カロリーヌは舞台上で、私をにらみつけて言った。長い髪をパーマにしている。着ているローブは着崩している。


「ミレイアさん、ジェニファー先輩に、まぐれで勝ったんだっけぇ?」

「あれはまぐれではないわ」


 私は言い返した。


「ジェニファーは強かったけど。あなた、ジェニファーとどういう仲?」

「あたしはジェニファー先輩の弟子だよ。男でいったら舎弟しゃていってヤツ」


 カロリーヌは両手首を、クルクル回している。手首をほぐしているのだ。


「ミレイアさんって、エクセンから追い出されたらしいじゃん? どういう理由か知らないけどさ」


 すると、舞台外にいるカロリーヌの助言者(アドバイザー)たち3名が、クスクス笑った。彼女たちは、スコラ・エクセンの制服を着ている。


「ミレイア、ださっ」

「追い出されたって……ぷぷっ……」

「よっぽど、皆から嫌われてたんだね」


 カロリーヌの助言者(アドバイザー)たちはケラケラ笑っている。


 カロリーヌは宙から杖を取り出した。


「あたしはジェニファー先輩から、100万ルピーもらってんだよ。負けらんないね」

「お金で(あやつ)られているのね」

「はあ? うるっせえんだよ! マジで(つぶ)すぞ!」


 カロリーヌは、杖を振りかざした。


「ライトニング・カロリーヌ……」


 彼女がそう唱えたとき、私は「瞬間移動」を発動した。カロリーヌの(ふところ)に飛び込んだ。


「何!」


 カロリーヌは叫ぶ。


 私はカロリーヌの杖を左手で受け止め──。右手を彼女の腹に押し当てた。


 ドッパァ


 私は初歩魔法の「空圧砲(くうあつほう)」を発動していた。魔法で作り上げた、空気圧の球だ。たいした魔法ではない。

 

 しかし、空圧砲(くうあつほう)は、彼女の腹に完全に入ってしまっていた。


「ゲ、ホ」


 カロリーヌは()き込み、目を丸くした。私はすぐに後方にジャンプし、カロリーヌから距離を取った。


「う、そ……だ、ろ」


 ガクリ


 カロリーヌは舞台に、両膝(りょうひざ)をついた。


「もうおしまい? あっけないわね」


 私は言った。


「あ、あはははっ」


 カロリーヌの顔は真っ青だ。しかし、ひきつりながらも笑っている。


「こんなんで……終わるわけないじゃん……」


 カロリーヌは上体を起こした。


「だあああああっ!」


 彼女は立ち上がり、私に向かって猛然(もうぜん)と走り込んできた。


「くらえっ! フレイマルボールズ!」


 私に向かい、火の球の魔法を放ってきた!


 ここだ!


「ハアアッ」


 私は、火属性の衝撃波(しょうげきは)を放った。これも、「気」の(かたまり)のようなものだ。


 ボンッ


 私の目の前で、カロリーヌの魔法──火の球はかき消えた。「空圧砲」と似ているが、火の魔力が多めに込められえているため、魔法を相殺(そうさい)できる。


「あ、が! そ、そんな……」


 カロリーヌは走り込んでくるのをやめ、その場にとどまった。


 私は、カロリーヌに杖を突きつける。


「グラビティ・ネブリナ!」

「う、うがっ!」


 カロリーヌは片膝(かたひざ)をついた。カロリーヌの頭上で、重力を発生させたのだ。巨大な鉄の(かたまり)が、体にのしかかってくるように感じていることだろう。


 ギシギシギシ


 彼女の骨がきしむ音だ。


 カロリーヌはまたしても、両膝(りょうひざ)をついた。顔が真っ青を通り越して、白くなった。


 ギシッギシッギシッ


 カロリーヌの背骨がきしむ。私は、魔法の威力を、彼女が骨折する寸前でコントロールしている。


 どこまで耐えられるかしら?


「う、ううううう!」


 カロリーヌはようやく声を上げた。


「ま、まいった! まいったああああ~!」


 ふう……。私は魔法の放出を止めた。


 観客はざわついていたが、すぐに白魔法医師たちが、リング上に駆けつけた。


 カロリーヌは、両膝(りょうひざ)をついたまま、青ざめて天を(あお)いでいる。


 白魔法医師たちは、カロリーヌの顔色を確認すると、審判団に向かって両手でバツの字を作った。


 すると、魔導拡声器(まどうかくせいき)で放送がかかった。

 

『ご、58秒! スコラ・シャルロ所属、ミレイア・ミレスタの勝利でございます!』


 観客はざわついた。


「も、もう勝負ついたのか? あのミレイアって子、強いな。何者だ?」

「確かこの国の元聖女だったらしいよ」

「え、マジ? 知らなかったな。2回戦要チェックじゃね?」


 さんざん私に暴言を吐いていたカロリーヌは、タンカに乗せられて運ばれていった。


 私を笑った助言者(アドバイザー)の3名も、あわててカロリーヌについていった。


 私がホッと息をついて、舞台から降りたつかの間──。


「どきな」


 舞台を降りた私の横を、1人の少女が通り過ぎた。彼女は振り返った。身長は……おそらく約180センチある。長い銀髪、()せ型の長身、小麦色の肌──まるで雑誌のモデルだ。


「ミレイア・ミレスタ、だよね。あんた」


 私はピクリと彼女を見た。そうか、この子が……!


「あたしはナターシャ・ドミトリー。これから試合だよ」


 この子か、ジェニファーの姉は! ジェニファーはそれほど身長は高くないが、姉は高身長なのか。


 そういえば1回戦の第2試合は、同日、ここ、タルム競技場で行うと聞いていた。


 ナターシャの厚めの(くちびる)から、言葉が放たれる。


「何見てんの? あ、身長? 父親がジェニファーと違うから」

「へえ、そう」


 私は興味無さそうに言った、分かっていた。ナターシャ・ドミトリーのそばに立っているだけで感じる圧力、魔力の大きさ、スケール感。私はビリビリと感じていた。


 ナターシャ・ドミトリー。ジェニファー・ドミトリーの姉! おそらく、ジェニファーの何十倍も強いだろう!


 しかも、スコラ・エクセン所属ではなく、スコラ・エンジェミア所属だ……。


「見ておきな」


 ナターシャは言った。


「あたしの戦い方」


 私は控え室に戻るのをやめ、空いている観客席に座った。


 ナターシャの戦い──見たい──と思った。

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