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第36話 フレデリカと私、スコラ・エンジェミアで会う③

 ここは世界最高の聖女養成学校である、スコラ・エンジェミア。


 私──ミレイア・ミレスタは、その学校の生徒の頂点であり、エンジェミア王国の聖女でもあり、私の旧友でもあるフレデリカと座布団を()いて座っている。


「お邪魔します」


 そのとき、部屋のドアがノックされ、マデリーン校長が入ってきた。スコラ・エンジェミアのマンフレッド教頭も一緒だ。


「ソファに座ってください」


 フレデリカは立って、広い部屋の向こうのソファを指差した。


 私もソファに座り、マデリーン校長も私の隣に座った。私たちの正面には、フレデリカが座っている。


「スコラ・エンジェミアの見学は終わったわ」


 マデリーン校長は言った。


「まったく、大変なお金のかけかたね、この学校は。学校内に水族館があり、プールが3つ、訓練施設6つ、スタジアムが3つもあるなんて……。維持費(いじひ)がいくらかかっているのかしら」


 マデリーン校長は、ハンカチで額の汗をぬぐった。マンフレッド教頭は、フレデリカの後ろに、静かに立っている。


「なぜ、私とマデリーン校長を、ここに呼んでくれたの?」


 私がフレデリカに聞くと、彼女は答えた。


「『元』聖女協会の副会長、マデリーン氏に、重要な話があるからだ」

「……『元』? 何を言っているのかしら。私は聖女協会の副会長を、やめた覚えはないけれど」


 マデリーン校長は首を傾げているが、フレデリカは言った。


「今日、私は聖女協会の副会長に任命された」

「何ですって?」

「残念ながら、マデリーン校長。あなたは昨日まで、聖女協会の副会長でした。しかし今日、その役職を降ろされました」


 フレデリカの言葉に、マデリーン校長の表情がゆがんだ。私は場の不穏な空気を感じとった。

 

 私は、その聖女協会なる組織のことがよく分からない。


 マデリーン校長が、その組織の副会長だった、ということも初めて知った。


 だが、その聖女協会とは、恐らく全世界の聖女をまとめる上で、重要な組織なのだろう、と想像する。


「何を言っているの? 冗談もほどほどにね」


 マデリーン校長は、フレデリカを鋭い目で見る。今まで見たこともない、鋭い眼光だ。


「では、これを」


 すると、フレデリカは、一通の手紙をマデリーン校長に見せた。




『フレデリカ・レイリーン殿へ


 本日より、聖女協会の副会長は、貴殿に任命する。

(注・スコラ・シャルロ校長のマデリーン氏は解任となった)


 聖女協会会長 ドーラ・マドルビ』



「なっ……」


 マデリーン校長は顔が真っ青だ。


「私は何も聞いていないわよ!」

「後日、マデリーン先生の手元に、あなたが解任された通知がくるはずですよ。お確かめください」


 フレデリカは(うす)く笑いながら言った。


 私はフレデリカとマデリーン校長を見て、はらはらしていた。いつケンカになるのか、と恐ろしくなった。


「マデリーン先生、フレデリカ様の言っていることは本当ですよ」


 マンフレッド教頭は言った。


「……事態がのみ込めないわ……」


 マデリーン校長は、(ひざ)がしらをギリリと握り、マンフレッド教頭を見た。マンフレッド教頭は、ウソをついているようには見えなかった。


 マデリーン校長は、少し息をつき、努めて冷静に言った。


「……なるほど。私の知らない、聖女協会の様々な思惑(しわく)があるようね」


 フレデリカは何も答えない。私は、フレデリカが聖女協会という組織に対して、「力」を持っているのだ、と考えた。でも──いくらエンジェミアの聖女といっても、17歳の少女が、大きい組織で「力」を持てるものなのだろうか。


「フレデリカ、なぜあなたが副会長になったの?」


 マデリーン校長は聞いた。


「理由はあるのかしら」

「数年後──この世は魔物に制圧される……そのような予見が立っています。ご存知でしょう?」

 

 フレデリカが平然とそんなことを言ったので、私は思わず声を上げた。


「噂でしょ、そんなの! 魔王はかなり昔に封印されているはず。魔物は出現するけど、そこまで……」

「政府の最高機関の占い師たちが、『人間と魔物の大戦争』を予言しています。それはおよそ約3年後……」

「占い師? 3年後? バカバカしい!」


 マデリーン校長は、パシッと机を叩きながら言った。


「確かに、人間と魔物との戦争が起こるとは、昔から言われていること。しかし、まさか3年後に『大戦争』にまで発展するとは、今の時点では考えられないわ」

「昨日、入ってきた情報です。聖女協会の副会長の私には、そのような情報が入ってきました」


 暗に、「マデリーン校長、あなたには情報は入ってこない」と言っているようだった。


「分かったわ」


 マデリーン校長はジロリとフレデリカを見やり、言った。


「それで、フレデリカさん。3年後に大戦争が起こるとして、この世はその後、どうなるの?」

「聖女候補、勇者候補、魔法使い候補……その他の若者たち……つまり学生たちが魔物討伐(まものとうばつ)()り出されるはず」

「……確かに、魔物との戦争になったら、学生が動員される可能性は高いわね。あくまで可能性だけど。で、その陰謀論(いんぼうろん)めいた予言が、あなたに副会長に任命された理由だっていうの? 面白いわね!」


 マデリーン校長は、フレデリカをにらんだ。17歳の少女の言葉を、一切信じていないようだった。


 一方の私は、答えが出せなかった。


「本題はここからですよ、マデリーン先生」


 フレデリカは笑い、一気にこう言った。


「来年、すべての勇者・聖女養成学校は、スコラ・エンジェミアの監視下、監督下におかれます。スコラ・シャルロも例外ではありません」

「……どういう意味かしら」


 マデリーン校長はもう身動きすらしなかった。ただ、フレデリカを見つめていた。


 フレデリカは、「フフッ」と笑った。


「来年から、あなたたちのスコラ・シャルロはなくなります」

「えっ?」


 私は耳をうたがったが、フレデリカは続けた。


「スコラ・シャルロの生徒は、我がスコラ・エンジェミアの生徒になる。全員、()れなく。そう申し上げているのです」


 意味が分からない。しかし──。私は、フレデリカが何か、とんでもないことを言っている、と分かっていた。

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