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第35話 フレデリカと私、スコラ・エンジェミアで会う②

 ここはスコラ・エンジェミアのフレデリカ専用の部屋。


 私とフレデリカはソファに座り、過去視体験魔法(かこしたいけんまほう)を発動させた。


 この魔法を使えば、フレデリカと一緒に、過去の記憶が体験できる。


(見えてきた)


 エクセン中央公園だ。7歳のころの私がいる。

 砂場で、1人で遊んでいる。これは……フレデリカに会う前のころだろう。


(大きな大きなお城を作ろう)


 私は一生懸命、無邪気に砂で大きな城を作った。子どもが作るものだ。城というよりは、単なる砂の山に見える。


 私が7歳のとき、両親は共働きで、私はいつも一人ぼっちだった。数年後、両親は二人とも事故で死ぬのだが……。


 そのとき──。


 グシャッ


 私がせっかく作った、砂の山──いや、砂の城を、誰かに足で()みつぶされた。


「誰?」


 私は怒って振り返った。そこには、近所の意地悪な小学部の男子生徒──バルケス・アドレンドが立っていた。彼が城を()みつぶしたのだ。

 彼の取り巻き連中も2人いる。


「何するの!」


 私が怒ると、バルケスは巨体をゆらしながら笑って言った。


「は? 邪魔だったから、壊したんだよ。どけ! 俺らが砂場を使うんだよ」


 バーン!


 バルケスは私の砂の城を、蹴っ飛ばして粉々にした。


「やめて!」

「うるせえなあ。さっさとどけよ」


 私とバルケスが押し問答していると、後ろから、「おい、やめろ」という声が聞こえた。


 短い髪の毛の女の子が立っていた。7歳の「私」はこの少女を知らない。しかし、17歳の今の「私」は、この女の子のことを知っている。


 7歳のフレデリカだ。バルケスはフレデリカに(すご)んだ。


「なんだぁ? てめえは」

「私? フレデリカ・レイリーンだ」

「フレデリカ? 知らねーな」


 バルケスがフレデリカに(すご)むと、フレデリカはバルケスの右手首をつかんだ。


 ミシッ


 という音がした。


「ギャア!」


 バルケスはあわてて、手を引っ込めた。


「ひゃああああああ! いてえ! いてぇよ!」


 私は目を丸くした。バルケスは逃げ帰ってしまった。


「な、何をしたの?」


 私がフレデリカに聞くと、フレデリカは事も無げに言った。


「魔法の力で、ヤツの骨に、ちょっとひびを入れてやったのさ」


 ま、魔法で骨にひびを?


 当時、7歳の私は、学校の小学部で魔法は勉強していた。紙を宙に浮かせるとか、鉛筆を手を触れずに転がすとか、そんな基本的なものばかりだ。


 しかし、フレデリカは7歳で攻撃的な魔法を習得していた。同年代の子が、躊躇(ちゅうちょ)なく他人に魔法を発動するなんて、驚きだった。


 ……怖さも感じた。


「でも……やりすぎじゃ」


 私は怖々(こわごわ)言った。すると、フレデリカはフッと笑って静かにつぶやいた。


「そうだな……。私は怒ると、自分が自分でなくなってしまうんだ。混乱してしまう」


 私たちは友達になった。私も両親が共働きでさみしかったし、フレデリカも家庭に何か問題を抱えているようだった。


 さみしい者同士、気持ちが通じたのだろう。




 3年が経った。私とフレデリカは毎日公園で遊んだ。砂場で遊ぶことが多かった。フレデリカは1週間に1度は、バルケスとケンカした。


「ミレイア、私の家に来る? 面白いカードゲームがあるんだ」


 フレデリカは何気なく言った。こんな(さそ)いは初めてのこと。フレデリカの家には、1度も行ったことがなかった。


 私は興味があったので、「うん」とうなずいた。


 フレデリカの家は、大屋敷だ。私の家は一般住宅なので、私の家と比べると30倍は大きい。


「ただいま」


 フレデリカが玄関で言った。フレデリカと私がリビングに行くと、彼の父親らしき人がいた。太っていて、ヒゲを生やした、非常に厳格(げんかく)そうな人だ。彼は、ゲーリック・レイリーン(きょう)。レイリーン家──大貴族の(おさ)だった。


「フレデリカ、帰ってきたか」


 レイリーン(きょう)は、顔をしかめた。フレデリカの顔には青あざができていた。


「またケンカしたのか! 貴族らしくふるまえと言っているだろう!」

「あんたには関係ないね」


 フレデリカは言い返した。私は目を丸くした。


「いい加減、私の言うことを聞いたらどうだ!」


 パシッ


 レイリーン(きょう)は、フレデリカの(ほお)を叩いた。


「お前は、レイリーン家を()ぐのだぞ! 女らしくふるまえ。将来は王族と結婚し、レイリーン家の繁栄(はんえい)(つと)めればよい!」

「フン」


 フレデリカはニタリと不敵(ふてき)に笑った。


「あんたの言うことを聞くわけにはいかないね。私はあなたの(こま)じゃない」

「この……! 大バカ娘が! 子どものくせに、生意気な!」


 バシン!


 レイリーン(きょう)は、再びフレデリカの(ほお)をひっぱたいた。フレデリカは1メートルは吹っ飛んだ。レイリーン(きょう)は太っていて、大柄だった。


 私はもう唖然(あぜん)として、その親子ゲンカを見ていた。

 

「必ず、お前にはレイリーン家の女として、役目をはたしてもらうからな。くそ、お前が男だったら、もっと家を()ぐのに積極的だっただろうが……。あいにく、私の家には男は生まれなかった」


 レイリーン(きょう)は、冷たくフレデリカを見下ろしていた。


 そしてフレデリカに言った。


「お前が生まれてきたのは、間違いだったんだよ、フレデリカ」


 ──その1ヶ月後、レイリーン(きょう)は謎の死を()げる。


 誰かに頭蓋骨(ずがいこつ)(つぶ)されていたということだ。新聞に載るほどのニュースになったが、王立警察は、犯人を捕まえることができなかったと思う。


 その頃から、私とフレデリカは疎遠(そえん)になった。


 フレデリカはシャルロ王国に引っ越し、私はエクセン王国の聖女を目指すことになった。


 ◇ ◇ ◇


「なつかしい」


 フレデリカの声がした。私は目を開けた。


 ここは……スコラ・エンジェミアのフレデリカの部屋だ。17歳のフレデリカがすでに目を開けて、私を見て笑っている。私は笑わなかった。


 フレデリカは言った。


「色々あったな」

「ええ」

「重要な話がある。茶を入れよう。うまい茶があるんだ」


 フレデリカは茶を入れに、台所へ歩いていった。


 私は茶を入れにいったフレデリカの後ろ姿を見ていた。


 私は彼女の心の(やみ)を、ずっと感じていた。

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