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第32話 その頃、ジェニファーは?⑧

 ミレイアは保養地オーマシェリで、宿敵ジェニファーの(うわさ)を聞いた。


 ジェニファーはスコラ・シャルロを自主退学した。彼女はこう言ったらしい。


「私は、エクセン王国の聖女になるわ」


 そんなことがありえるのか? あの悪魔の心を持ったジェニファーが、エクセン王国の聖女になるなんて?



 ジェニファーは飛空艇(ひくうてい)でエクセン王国に帰った。競技パートナーの、ゲオルグも一緒だ。そしてすぐ、エクセン城の軍隊指揮官の執務室に戻った。軍隊指揮官は、ジェニファーの役職だ。かなりの日数、さぼっていたけど……。


「ジェニファー! いままでどこで遊んでいたんだ?」


 執務室で待っていたのは、婚約者のレドリー王子だった。副隊長のゴーバス、アルバナーク婆もいる。


「それに──そ、そいつは誰だ?」


 レドリーはゲオルグを見やりながら言った。


「クラスメートのゲオルグよ。一応、魔法や戦い方を教えてもらっているわ。私は、スコラ・シャルロで勉学にはげんでいたのよ」


 ジェニファーはソファに、ドカッと座りながら言った。


「もう自主退学したけどね。つまんないから」

「おいっ! 遊んでいる場合か! 魔物の襲撃が、4倍に増えたんだぞ」

「あっ、そ」

「『あっ、そ』じゃないよ、君が軍隊を指揮する役目だろう?」

「じゃあ、その軍隊指揮官は責任とってやーめた」


 ジェニファーは口笛を吹いて、あっさり言った。


「その代わり、私を聖女にしなさい!」

「えっ、な、なに?」


 レドリー王子は目を丸くした。


「そ、それは……。ジェニファー、君には無理じゃないかな」


 ジェニファーの魔力では、とても聖女にはなれないはずだ……とレドリーは思った。だから、軍隊指揮官にしてやったのに。


 すると、ジェニファーはレドリーに言った。


「じゃ、あんたの浮気を、国民にばらすわよ」

「げ、げべっ」


 レドリーは変な声を出した。ジェニファーはレドリーをにらみつけた。


「あんた、私がいない間、色んな女に手を出して浮気をしていたのは、もう分かっているのよ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待て」

「それを国民にばらすわよ」

「そ、それはヤバい。そんなことをしたら、僕のイメージダウンにつながる。僕は父親が死んだら、王になる予定なんだぞ」

「うるっさいわね! 私は聖女になるのよ。こっちはミレイアに負けてばっかりで、腹が立ってるの! 聖女になって見返してやる」


 ジェニファーが声を上げると、それまで黙っていたアルバナーク婆が、クスクス笑った。元聖女ミレイアの師匠(ししょう)──現在は、エクセン王国の術師たちの相談役でもある。


「ジェニファー、お前がこの国の聖女になるというのか? バカな……」

「そうよ、アルバナーク婆さん。何が悪いの? 私はミレイアより能力が上だってことを、証明したいのよ」

「ほほう。子どもっぽい動機だのう」

「私には才能があるわ。結界を張れる能力はあるはずよ」


 アルバナーク婆はギラリ、とジェニファーを見た。アルバナーク婆の目には、ジェニファーの「気」「魔力」が見えていた。


「ふむ……。お前さんが結界を張れる能力があるのは、事実のようじゃな。しかし、つい半年前は、そんな魔力はなかったはずだ。何があったのだ?」

「何度も言わせないでよ。修業したのよ!」

「ほほう。では、そのお前さんの体にまとわりついている、悪魔の『気』はなんなのかね?」


 ジェニファーはピクリとアルバナーク婆を見やったが、すぐに笑った。



「見間違えじゃないの?」

「ジェニファーよ! お前、悪魔と契約したな!」

「あははは!」


 ジェニファーはお腹をかかえて笑った。


「この婆さん、邪魔よねえ。──ゲオルグ!」


 ゲオルグは、アルバナーク婆の額を手でつかんだ。


「な、何を……!」


 アルバナーク婆は声を上げた。


 ギュウウンッ


 何かが吸い取られる──そんな音がした。


 アルバナーク婆は、ソファの上で失神した。


「この婆さんの精気を吸い取ったのだ」


 ゲオルグはクスクス笑って言った。


「もともと婆さんだから、精気の量が少なくて楽だったが」


 アルバナーク婆は、ソファの背もたれに寄りかかって、動かない。その姿は変わり果てていた。


 80歳の老婆だが、それを飛び越えて、ほぼミイラに見える。


「ひ、ひいい! そ、そんな。この国最高の術師、アルバナーク婆が!」


 レドリー王子は、副隊長ゴーバスと抱き合って、悲鳴をあげた。


「あははは! この国最上の術師? 単なる婆さんじゃん」


 ジェニファーは笑ってレドリーに言った。


「んで、聖女になることを、許可してもらえるかしら。ダーリン」


 ゲオルグは、両手をレドリーとゴーバスに突きつけた。


「ひゃあああ~!」


 レドリー王子は声を上げた。


「ぼ、暴力反対! ちゃ、ちゃんと魔物を侵入させないってんなら、いいけど!」

「あ、許可してくれるわけね」


 ジェニファーはレドリーに投げキッスを送った。


「ウフフッ。魔物を侵入させないどころか、最強の国家にしてみせるわ。このエクセン王国をね──。そうでしょ、ゲオルグ」

御意(ぎょい)


 ゲオルグはニヤッと笑った。


「嫌な予感がするんですけど!」


 レドリー王子は泣き声を出した。

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