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第26話 ミレイアVSジェニファー⑥

「スパイラリ・デンドロン!」


 魔法競技会決勝──。私は、自身の最高の魔法である、スパイラリ・デンドロンを放った。


 低い音とともに、ジェニファーの足元から木が生えた。その木が舞台の下の土から、石畳(いしだたみ)を突き破る──。


 すさまじいスピードで、木が成長していく。


「へ? 何?」


 やがて木はジェニファーの体を巻き込み、巨大化した。


「きゃああああー!」


 ジェニファーが叫ぶ。いつの間にか、私の目の前には、巨木が生えていた。


 木の幹の中からは、「ちょっとぉ! 何よこれ~! 狭いわ!」と大声がする。


 木の幹の中に、ジェニファーが取り込まれているのだ。


「『まいった』しないと、一生出られないわよ」


 私は、忠告した。


「だ、誰がするもんですか!」


 ガスッ ガシッ


 ジェニファーが木の幹の中で、抵抗する音が聞こえる。


 ムダだ。ジェニファーは、数分後には養分を吸い取られ、衰弱(すいじゃく)する!


「ち、力が、入らない……!」


 ジェニファーは木の幹の中でうめいた。


「どうするの? そのまま干からびて、ミイラの出来上がりよ」


 私は言った。


「うわああああ~! 冗談じゃない!」


 ガスッ ガスッ ガスッ


 ジェニファーはなおも抵抗している。手で木の幹の内部を殴っているのだろう。


 ミキミキミキ、ビキビキビキ


 私は、幹の内部を操作して、締め付けてやった。


「あいたたたたた!」


 ジェニファーの叫び声が聞こえる。


「『まいった』する?」


 私がジェニファーに聞くと、叫び声が返ってきた。


「うるさい! 誰がするもんか。このハリボテの木から出たら、あんたたち全員を八つ()きにしてやる!」

「では──最後の攻撃を受けていただくわ」


 私は天を見つめて、唱えた。


 ジェニファーへの躊躇(ちゅうちょ)はなかった。レイラや彼女の家族にした非道のかぎりを、私はゆるすことができない。


「天の裁きをくらいなさい! アストラペ・ライトニア!」


 カッ


 天からすさまじい勢いで、雷が落ちた。


 スパイラリ・デンドロンでできあがった巨木を、魔法の雷が切り裂き──。


 バーン


 幹の中央に達するときに、とんでもない爆発を起こした。


「ふうっ」


 私は爆風から体を守りつつ、息をついた。


 巨木はまっぷたつに割れ、(けむり)が立ち昇っている。


 グゴゴゴゴ……。


 どうなった? 私はジェニファーの様子を見守った。


 ズシャ


 そのあらわになった幹の内部から、人間がはい出てきた。


「あ、ぐ、う……」


 ジェニファーだ。髪の毛や体が()げている。舞台上に突っ伏し、力なく、私を見上げている。


「このぉ……ミレイア……あんたを八つ()きに……!」


 ジェニファーはヨロヨロと、立ち上がる。ゆっくり、私に近づいてきた。


(なんという執念(しゅうねん)かしら)


 私は声に出さずに、そう思った。


 ジェニファーは、妖術師に操られている死人(しびと)のように、私に向かって両手を突き出した。目は充血し、衣服は()げてボロボロ。髪の毛もチリチリに()げている。その手は、ブルブル震えていた。


「まだあきらめないわよ……」


 ジェニファーは私の首に、自分の両手をかけた。


「うう……」


 ジェニファーは私の首にさわる。


(もだ)え苦しめ!」


 ジェニファーはカッと目を見開いた。


 ジェニファーの力が、急に強くなった。彼女の手から、呪いの力が発せられようとしている。私の首筋から、呪いを注入する気だ!


「うらあああああっ!」


 ジェニファーは、呪いの魔力を込めて叫ぶ。


「呪われろおおおおっ!」


 鬼だ! ジェニファーは鬼の形相!


 私の首筋に、怖ろしい闇の魔力が入り込もうとしてくるのを感じる。人を絶望に追い込もうとする、闇の悪意だ! しかし──。


(今だ!)


 しかし、私は彼女の手首をつかみ、「衰弱(アステネス)!」と唱えた。


「あっ……ぐ」


 ジェニファーの手の力が急激に弱くなった。私の術で、彼女の全体の力を奪ったのだ。


「ぐぎぎぎ……」


 ジェニファーは歯を食いしばって、腕に力を込めている。


 私も負けない! 衰弱(アステネス)の魔法を、ジェニファーの手首に流し込む!


 だが、またしても!


「ぐううあああああ! これで終わってたまるかああああ!」


 ジェニファーは今度は、自分の体の奥の奥から、魔力を(しぼ)り出しはじめた。その最後の闇の魔力を、私の首筋に流し込む!


「死ねええええええ!」


 首筋に悪意が入ってくるのを感じる。


 ゴウッ


 そんな音とともに、ジェニファーの背後に、悪魔のような存在が現れた。ジェニファーを包み込むように、(おお)っている。


 その途端、ジェニファーの闇の「気」が、すさまじい勢いで、私に流れ始めたのだ。


「うっぐ……」


 私は歯を食いしばり──ジェニファーの両手を(つか)んだまま、聖なる魔法を唱えた。


「アンジェロ・プレギエラ!」


 すると、ジェニファーの背後の悪魔が、「ギェエエエエエ!」と悲鳴を上げた。


 ここだっ!


浄化(じょうか)!」


 私は仕上げの声を唱えた。


 ビキビキビキッ


 そして、その悪魔の体にヒビが入り──。


 バーン


 悪魔はそのまま、(くだ)け散った……。


「ぐ!」


 ──ジェニファーがうめいた。びくん、と彼女の体が震えた。そして彼女の魔力の流れが止まった。


 ガクリ


 ジェニファーは……そのまま失神した。力を使い果たしたのだ。


 ジェニファーは地面に(ひざ)をついた。もう、両手がダラリと垂れ下がっており、1日は自分で立ち上がれないだろう。


 私は、ジェニファーをただ見下げていた。


 ドヨドヨドヨッ


 と観客は騒然とした。


「おい、ジェニファーはどうなったんだ?」

「失神している?」

「ミレイアが勝ったのか?」


 その時──。


 ドーン ドーン ドーン


 太鼓(たいこ)の音が鳴った。試合終了の太鼓(たいこ)だ!


『試合終了! 20分35秒、ジェニファーを戦闘不可能とみなします!』


 私が振り返ると、観客席にマデリーン校長がおり、魔導拡声器(まどうかくせいき)で声を上げていた。


『勝者! ミレイア・ミレスタ! ミレイアの優勝です!』


 ドオオオオオオオッ


 スタジアムはまたしても騒然とした。


 雷の魔法で真っ二つの、私の作り上げた魔法の巨木は消え去った。私の足元には、ジェニファーがただ、突っ伏していた。


「覚えてやがれ……ミレイア・ミレスタ」


 ジェニファーはそう言い、舞台にかけつけたゲオルグの肩を借りて、舞台から降り去った。


「おい、すげえぞ!」


 ナギトたちが、舞台に上がってきた。ゾーヤやランベールも来てくれた。


「お前は優勝したんだ。何をボーッとしてんだ」


 ナギトは私に言った。


「スタジアムの観客に、手でも振ってやれ」

「あ、うん」


 私はスタジアムの観客に向かって、手を振った。


 ドオオオオッ


 観客が私に向かって、祝福の声を上げてくれている。


「すげえぞ、ミレイア!」

「なんてすごい聖女候補なんだ!」

「まるで本当の聖女みたいだ」


 まぁ、元聖女なんですけど。



 しかし──私の戦いは終わらなかった。

 

 真の戦いが、すぐに始まるとは、私にも予想できなかった。

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