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第19話 その頃、ジェニファーは?⑦

 ジェニファーが軽くゴルバルの杖を振ると、レイラは5メートル吹っ飛んだ。


 レイラは驚いていた。


 あのジェニファーに、こんな魔力があったなんて、信じられない。


「本当の『重力の霧』はこうやって放つのよ! ジェニファー式『グラビティ・ネブリナ』!」


 ジェニファーがゴルバルの杖を空に(かか)げると、レイラの頭の上に、奇妙な闇の(かたまり)が振ってきた。


「うっ、ぐっ」


 レイラの体に、闇の(かたまり)がまとわりつく。


 四方八方から、締め付けられるようだ! 360度から重力が襲い掛かってきている。


「な、何てこと!」


 勝負を見ていたユウミが、声を上げた。


「常識的な術ではない! 上下左右から重力をかけるなんて、そんなバカなことが? そんなことができるのは、アルバナーク婆様くらいだわ」

「だ、大丈夫よ。ユウミ」


 レイラはそう言いつつ、自分に光の防御壁(ぼうぎょへき)を作った。


 バーン


 その防御壁(ぼうぎょへき)を飛び散らせることにより、その重力の(かたまり)を打ち消した!


「あらあら」


 ジェニファーはレイラを見て、笑った。


「防御に全力を使っちゃって」

「黙りなさい!」


 レイラは声を上げた。

 

 その時、レイラはジェニファーの背後に、不気味なものを見たような気がした。──翼? 悪魔の翼!


 ジェニファーは恐ろしい顔でニヤニヤ笑っている。

 まるで──魔族!


(いけない。集中して──)


 レイラは気力を振り絞った。


「私の最強の術を受けよ! レイラ・ライトニア!」


 バアアアアアン


 すさまじい勢いで、天から雷が落ちた。しかし──。


 ジェニファーはゴルバルの杖を、すでに天に(かか)げていた。


 レイラの雷の魔法は、ジェニファーの頭上で消え去った──。


「な、そんな……」


 レイラは目を丸くし、一歩後退した。


 ジェニファーのゴルバルの杖が、避雷針(ひらいしん)のごとく、雷の魔法を打ち消したのだ。


「エクスプロジオン!」


 ジェニファーはレイラの足元を爆発させた。レイラは5メートルは吹っ飛んだ。


「軽めの魔法を使ったのに。結構、吹っ飛んだわね」


 ジェニファーは笑っている。


「ば、化け物……。い、いや、悪魔……」


 レイラはジェニファーを見て、そう言った。エクスプロジオンは初級の爆発魔法だ。しかし、ジェニファーの爆発魔法は、上級魔法くらいの威力があった。


「悪魔って言った?」


 ジェニファーはクスクス笑った。後ろでゲオルグも笑っている。


「悪魔なんてよく分からないけど、勝った者が正義よ! ──アイスバーン!」


 ジェニファーが唱えると、レイラの足が、一瞬にして(こお)りついた。


「ああっ!」


 レイラが痛ましい声を上げる。レイラはもう立ち上がれない。


「ま、待って!」


 ユウミとサラがあわてて、レイラの前に立ちはだかった。


「なぁに?」


 ジェニファーは、ニタリといやらしい笑みを浮かべた。


「しょ、勝負は──」


 ユウミが、レイラを守るようにして涙を流しながら言った。


「勝負はつきました」


 ジェニファーは、「オホホホ」と笑った。


「どういう意味? どういうことか、ちゃんと言ってごらんなさい」

「……レイラの──私たちの負けです」

「あらそう。じゃあ──」


 ジェニファーはニヤリと毒々しく笑った。


「ユウミとサラだけでもいいから、土下座してね」

「う、ううっ……」


 ユウミとサラは顔を見合わせた。なんたる屈辱(くつじょく)……。


 しかし、このままではレイラが殺されてしまうかもしれない。


「ま、参りました……」

 

 ユウミとサラは、涙を流して……土下座をした。


 ぞくぞくぞくっ……。


(たまらないわ!)


 ジェニファーは全身に歓喜(かんき)を感じていた。


「ひれ伏しなさい! もっと、もっとよ!」


 ガスッ


「ぎゃっ!」


 ユウミは悲鳴を上げた。


 ジェニファーはユウミを蹴り飛ばし、高笑いしたのだった。

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