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第18話 その頃、ジェニファーは?⑥

 ジェニファーは、元聖女ミレイアを支えていた、下級聖女レイラに勝負をいどまれた。


 レイラはスコラ・エクセンの成績優秀者。


 いつでも聖女の仕事ができるくらい、有能な下級聖女であり、術者である。


「レイラなんかに負けるわけにいかないけど」


 ジェニファーは、ゲオルグに向かって言った。


「ミレイアとの魔法競技会決勝前に、怪我なんかさせられちゃ、たまわらないわ。成り行きで、勝負を受け入れちゃったけど」

「大丈夫だ。僕についてきてくれ」


 ゲオルグはエクセン王国北の、スラム街へ向かって歩いていく。ジェニファーは、恐る恐るゲオルグについていった。




「な、何よ、ここぉ?」


 ゲオルグは足を止めた。大きな古くさい建物がある。


 看板はない。アパートでもなさそうだし、店でもなさそうだ。


「ここは秘密結社ルーファスという場所だ。僕も一応、関係者だ。シャルロ王国にも支部があるぞ」

「……へ、変な場所じゃないでしょうね?」


 ジェニファーが聞くと、ゲオルグはニヤリと笑った。


「確実に君が強くなれる場所だ」


 ジェニファーとゲオルグは建物に入った。一人のローブ姿の者が、ロビーのソファに座っていた。


「よくいらっしゃいました、ジェニファー様。私はゲオルグ様の友人である、マイザル・デルザール」

「な、何よ、あんた。私のこと、知ってるの?」

「知っておりますとも。話はすべて聞いております。ついてきてください。あなた様の魔力が倍増しますよ」

「魔力倍増? ほ、本当なの、それ?」


 このデルザールなるローブ男は、建物の地下に降りていった。


 ジェニファーは首を傾げながらついていく。ゲオルグも一緒だ。



「あ、こ、ここは!」


 ジェニファーは声を上げた。


 祭壇(さいだん)


 薄暗い部屋だ。


 魔法陣が地面に描かれている。周囲には8本の柱が立っており、壁際の棚には色々な色の薬品が入っていた。


「魔法陣の上に立ってくれ」


 ゲオルグが言うと、ジェニファーは怖々うなずいた。


「え、ええ。でも……」

「怖がることはありません」


 デルザールは笑った。


「あなたに素晴らしい力がもたらされますからな……。まるで神のような」

「神のような?」


 ジェニファーの顔が、少しゆるんだ。


「神って、あの……神?」

「そうですよ。あの天上の神。その同等の力を得られるのです」

「まさか……そんな! で、でもそれが本当だったら」


 ジェニファーの声は明るくなった。


「す、すごいわ! 国民が私を神様のように(した)ってくれたら、いい気分だわ。ま、まあ、ものは試し、やってみる」

 

 ジェニファーは、魔法陣の上に立った。


 グオオオオ……。


 どこからか熊のような、怖ろしい声が聞こえる。


 ググググ……。


 ジェニファーは首筋(くびすじ)が締め付けられるように感じた。


「ひ、ひいっ! な、何よ、これ!」

「とり()いたようだな」


 ゲオルグが笑った。


「悪魔ルシフェルが」

「……へ?」


 ジェニファーは体に熱いものを感じていた。心臓の音が高まった。


 ドクン……!


 自分の体に、変化が起きているのを感じた──。



 次の日、ジェニファーとゲオルグが城の庭園に行くと、レイラが待っていた。ユウミとサラも一緒だ。


「さあ、勝負よ、ジェニファー」


 レイラが緊張した面持ちで言った。


「私が勝ったら、ミレイア様をシャルロ王国から連れ戻してちょうだい」

「何言ってんの?」


 ジェニファーは笑っている。


「私は最強の強さを手に入れたのよ。じゃあ、私が勝ったら、あなたは私にひれ付しなさい。いや、そんな必要ないかもね。3分後にはあなたはぶっ倒れているのだから」

「何をバカなことを!」


 レイラは三歩後退し、素早く杖から魔法を放った。


「グラビティ・ネブリナ!」


 ググググ……。


 ジェニファーの頭の上に、重力がのしかかる。重力の術だ。これはミレイア直伝だった。


 しかし、ジェニファーは(すず)しい顔だ。ジェニファーには、まったく重力が効いていない?


「何なのこれ? お遊戯(ゆうぎ)? ──はああああっ」


 ジェニファーが軽くゴルバルの杖を振ると、レイラは5メートル吹っ飛んだ。


 な、何という魔力……?


 レイラは驚きの表情で、ジェニファーを見ていた。


 一方、ジェニファーは、まるで虫けらでも見るように、レイラを見下ろしていた。

【作者タケからのメッセージ】

読んでくださってありがとう! この小説はね、何か聖女のミレイアさんとか、ライバルのジェニファーさんが戦ってるんだよね。魔法バトルしてる。1対1で聖女が戦ってるんだよ(笑)タケが小説を書くと、なぜかこんな風になってしまうんだよなあ……。読んでくださって感謝しています。また投稿しま~す!




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