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第17話 その頃、ジェニファーは?⑤

 ジェニファーは、スコラ・シャルロ魔法競技会予選B組を勝ち上がった。


 そして、軍隊指揮官の副隊長、ゴーバスの連絡によって、エクセン王国城の執務室に戻った。

 スコラ・シャルロは休んだ。


 競技パートーナーのゲオルグも一緒だ。


 バタン!


「お前がジェニファーかぁっ!」


 おや? 執務室に入ってきたのは、副隊長のゴーバスではない。鬼のような筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の男だった。


「誰? おじさん」


 ジェニファーはぽかんと口をあけて、その男を見た。


 筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の男は、(ほお)をピクピクさせながら言った。


「貴様……俺を知らんのか。俺は、エクセン王国軍隊長、ガルド・グローデンだああっ!」

「あ、あんたが軍隊長?」


 ジェニファーは目を丸くしながら言った。軍隊長は軍隊指揮官と同等(どうとう)権限(けんげん)を持つ、現場の指導者といえる。自分自身も戦いに参加することも多い。


「副隊長のゴーバスしか見たことがなかったから、隊長なんていないと思ってたわ」

「バカか! 俺は出張で、隣国(りんこく)のザガイヤに行っていたのだ。──何なんだ、このありさまは。昨日、エクセン王国の南のディゴローで、ダークゴブリンが10匹ほど侵入(しんにゅう)したんだぞ!」

「そ、それで、どうなったの?」


 ジェニファーは、このグローデン隊長に気圧(けお)されながら言った。


重傷者(じゅうしょうしゃ)が出とる! 田畑にも大きな被害が出た。が、俺が兵士どもの士気を上げて、1日で退治したわ!」

「……ダークゴブリンに1日? あんなのザコじゃない。……ま、まあ、1日なら評価できるわ」


 ジェニファーはしぶい顔をしながら言った。ゲオルグは、ジェニファーの後ろでクスクス笑っている。


「聖女ミレイアを連れ戻せ!」


 グローデンは声を上げた。


「結界がない状態では、魔物が入り放題だ! このままでは、このエクセン王国が(ほろ)ぶぞ!」

「は?」


 ジェニファーは、グローデンをにらみつけた。


「あんな女を、どうして私が呼び戻さなきゃいけないの? もう追放したのよ!」

「バカめ! くっ、なんでこんな小娘を、軍隊指揮官に任命したのか。レドリー王子は狂っとる」

「余計なお世話。そもそも、あんたたち兵士が強ければ良いじゃない」

「相手は魔族、そうそう勝てるものではない! 戦略を()り、綿密(めんみつ)な行動をしなければ勝てぬのだ。小娘、お前は軍隊指揮官などやめたほうがいい! ──忠告はしたからな!」


 グローデンは怒り狂いつつ、ソファーから立ち上がった。


「はーい、ご苦労さん。私はやめる気、ないですから」


 ジェニファーはグローデンを虫でも追い払うように、手を振った。




「何よ、南のディゴローで被害者が出たの、私のせいになってんの?」


 ジェニファーは城の庭園でぶつぶつ言った。ゲオルグは笑った。


「いや、ジェニファーは学業が優先だろう。しかも今は魔法競技会の最中。仕方ないことだ」

「……まっ、そうよね。どうでもいいけど、スコラ・シャルロを私の支配下に置きたいのよね。ちょろっと買い取りたいのよ。その計画はどうなってんの?」

「大丈夫だ。金はエクセン王国の国家予算から、確保できている。しかし、問題なのはマデリーン校長だ。あの女はかなりのクセモノで……」

「あー、あのオバさん? 別に普通のオバさんじゃないの」


 ジェニファーがそう言った時、「ジェニファー、ここにいたのね!」という声がした。女の子の声だ。


「よくも、ひどい目にあわせてくれたわね!」


 庭園に、3人の15歳くらいの女子たちが入ってきた。


「あらぁ? 見覚えのある子たちだこと」


 ジェニファーはころころと笑った。目は笑っていなかった。


 3人とは、元聖女のミレイアを支えていた、下級聖女、レイラ、ユウミ、サラの3人だ。


 レイラが一歩前に出て、ジェニファーをにらみつけながら言った。


「ディゴローには、私の両親が住んでいるのよ! お父さんはダークゴブリンに殴られて、重症を負った! 車椅子生活になってしまったわ」

「はあ?」


 ジェニファーは木の枝を、ペキリとへし降りながら言った。


「それ、私のせいだって言ってんの?」

「そうよ!」


 レイラが叫んだ。


「ミレイア様がいれば、結界を張ることができた。ダークゴブリンは入ってこれなかったでしょうね。お父さんが大怪我をすることもなかった! でも、あなたはミレイア様を追放した」

「知らないわよ」


 ジェニファーは舌打ちしながら言った。


「あんたの父親、運が悪かったんじゃないの?」

「……ジェニファー!」


 レイラは怒りに満ちた目で、ジェニファーをにらんだ。


「勝負よ! 魔法で勝負よ。明日の午後、ここで! 私が勝ったら、ミレイア様を連れ戻して!」

「……ま、いいけど~」


 ジェニファーは折った枝を、地面に放り捨てた。


「あんた、ぶちのめされたいわけ?」

「レイラはね、エクセン王国魔法競技会15歳の部の準優勝者よ」


 ユウミが声を上げた。


「普段、遊んでばかりいるあなたが、レイラにかなうと思っているの?」

「ふーん」


 ジェニファーはレイラたちに自分の杖を見せつけた。


「あっ……!」


 レイラやユウミ、サラたちは目を丸くした。

 

 ジェニファーが手に持っているのは、ゴルバルの杖だ。


 聖女や魔法使い用の、現代最強の杖と呼ばれている。値段も高い。1年に1回しか製造されない幻の杖だ。


「それでもやる?」


 ジェニファーはゴルバルの杖を見せつけながら言った。


「バカにしないで! お父さんの(かたき)をうってやる。明日の朝よ、ここに来なさい! 勝負よ!」


 レイラたちはそう言って、城のほうに戻っていった。

 

 ジェニファーはまた舌打ちした。


「でも、万が一怪我をしたら、ミレイアとの決勝にひびくかもしれない」


 スコラ・シャルロ魔法競技会の決勝は、1週間後にひかえているのだ。


「まかせろ」


 ゲオルグはうなずいた。


「俺に良い考えがある。ジェニファー、お前がもっと強くなる方法がな」

「えっ? そんなものがあるの?」


 ジェニファーは目を輝かせた。

 ゲオルグは不気味な顔で笑っていた。

【作者タケからのメッセージ】

いつも読んでくださってありがとね~! 最初は、この小説は『対戦魔法聖女ミレイア』っていう小説だったんだよね(笑)自分としては面白いなーと思ったんですが、変更しちゃいましたね。読んでくださっている皆さんには、本当に感謝しています。きっと変な部分や間違いがあるでしょうね(笑)それでも皆さん読んでくださって、ありがとうございます!



☆作者からのお知らせ


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