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第15話 スコラ・シャルロ魔法競技会 予選③

 スコラ・シャルロ魔法競技会──リリシュタインの森の予選。


 ナギトとランベールが負傷し、今度は私、──ミレイアとゾーヤが向かい合った。


「あたしは、あんたみたいな真面目な女が、一番嫌いなんだよね」


 ゾーヤはクスクス笑いながら、何事か唱えた。

 すると、ゾーヤの体が分裂し──。


「分身の術」が発動した!


「分身の術? あなた、こんな高度な魔法を!」


 私は驚いて声を上げた。

 三人のゾーヤに囲まれている。


「ゾーヤ・エクスフランマ!」


 ゾーヤは呪文を唱えた。


 凄まじい勢いで、三人のゾーヤから火炎が放たれる。


 私はそれを()けるために、飛び上がった。


 タッ


 王の間の壁を三角蹴(さんかくげ)りして、下のゾーヤに向かって、声を上げる。


(こお)れ! アクス・ゲフリーレン!」


 キイイン


 火炎が一瞬にして(こお)る。氷結(ひょうけつ)魔法──アクス・ゲフリーレンは、どんなものでも(こお)らせてしまう。


 攻撃範囲(はんい)が狭いのが欠点だが。


「やるねぇ」


 ゾーヤは笑っていた。分身の術もやめてしまった。


 タッ


 私は床に降り立った。


 しかし──。


 周囲を見回すと、そこは花畑だった。


「な、何? これって?」


 王の間が一瞬にして、花畑になってしまったのだ。


 かわいいタンポポやスミレが辺り一面、咲いている。


 美しい! しかし──だからこそ危険!


「ああっ……」


 私はよろめいた。


(いけない、これは──)


「そうだよ、魔導幻覚まどうげんかくだよ」


 ゾーヤはケラケラ笑った。中枢神経(ちゅうすうしんけい)を狂わせる魔法だ。補助魔法だが、その効果はすさまじいものがある。


 私は、この美しい風景を見たままで、めまいを感じた。こ、このままでは、ゾーヤの攻撃魔法を、まともにくらってしまう!


「さーてと、焼き料理の時間だ」


 ゾーヤは自分の杖を構えた。


「ゾーヤ・エクスフランマ!」


 ゴオオオオッ


 花畑に火がつき、燃え広がる! あ、熱い!

 

 火が波のようになって、私に襲い掛かってくる!


 その時──。


 シャッ


 そんな音がした。


「あ、あぐっ!」


 ゾーヤが声を上げていた。


 ゾーヤの左手に、魔力模擬刀(まりょくもぎとう)が突き刺さっている。


 もちろん、魔法の刃だから、血は出ていない。だが、ゾーヤの手の平には、すさまじい電撃の痛みが走っているはずだ。


 魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を投げたのは、ナギトだった。


「──違う、ミレイア! オレは何もしていない。まやかしだ!」


 ナギトは叫んだ。私は戸惑った。ど、どういうこと?


「クククッ」


 ゾーヤは笑う。手の平に魔力模擬刀(まりょくもぎとう)が突き刺さったまま。


(そうか!)


 私は理解した。


 さっきのナギトのゾーヤに対する攻撃も、幻覚だ。

 そう思った時、花畑も、火の波も消え去った。ゾーヤの手に刺さっていた魔力模擬刀(まりょくもぎとう)も、いつの間にか、ない。


(なぜ、こんな幻覚を見せる?)


 ゾーヤは何やら魔法を唱えようとしている。大きな魔法の発動をしようとしている!


 幻覚を見せて、時間稼ぎをしているのか!


「それならば」

 

 私はつぶやいた。


「なーにが、『それならば』だ。あたしはあんたに幻覚を見せて、時間をかけ、体に魔力をため込んでおいたのさ。勝負はもう決まった。あたしの勝ちだ!」


 ゾーヤは余裕だ。それとともに、すさまじい殺気!


「ゾーヤ・トルナードフランマ!」


 ゾーヤの杖から、私に向かって、炎の(うず)が放たれた。これはゾーヤの最高の呪文らしい。

 これは幻覚ではない! 本物の攻撃だ。


 しかし──ここだ!


「ヴィントシュトース!」


 私は炎の(うず)に向かって唱えた。


 私の聖女の杖から、すさまじい突風が放たれた。


「あっ」


 ゾーヤは声を上げた。


 炎の(うず)が、私の魔法──ヴィントシュトース(突風)に押し返され──。


 逆にゾーヤに襲い掛かった!


「う、うああああああっ!」


 ゾーヤはあわてて身をかがめた。


 しかし、ゾーヤには私の魔法は届かなかった。


 いや、私が魔法を止めたのだ。


 勝負はついた。


 なぜなら……。


「うう……」


 ゾーヤは身をかがめながら、私をうらめしそうに見た。


「なぜだ、なぜ、とどめをささない?」


 ゾーヤの背後には、魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を持ったナギトが立っていたからだ。


「王手ってやつか……」


 ゾーヤはくやしそうに言った。


 しかし、その時だ。


「たああああー!」


 今度はランベールが襲い掛かってきた。


「ナギト君! 僕の剣技を受けたまえ!」


 ガギイイッ


 ナギトの魔力模擬刀(まりょくもぎとう)と、ランベールの魔力模擬刀(まりょくもぎとう)がぶつかり合う! 魔力の光の刃が、光の火花を散らした。


「でえええいっ」


 ナギトは鍔迫(つばぜ)り合いから、ランベールを体で押し、自分の足でランベールを転ばせた。


 ナギトは魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を、倒れ込んだランベールに突きつける。


 ランベールは腕を抑えている。腕の負傷がかなりひどいらしい。


「この腕の痛みが無かったら……! くそ!」


 ランベールは表情をゆがめた。


 まともに刀をあつかえそうになかった。


「待て! ナギト!」


 ゾーヤが声を上げた。


「私たちの負けだ。まいった! だからもう、ランベールを傷つけないでくれ!」


 すると、倒れ込んだままのランベールは、声を上げた。


「ゾーヤ! まだ勝負はついていない!」

「ランベール、あんた、負傷したのは利き腕だろ。どうやって魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を振るんだ」


 ゾーヤは言った。ランベールは、「うう……」とうなり、そしてため息をついた。利き腕を負傷したら、武器をまともにあつかえるわけがない。


「それに、私が負けを認めたのは、ランベールのせいじゃない。あたしと、ミレイアの魔力の力が違いすぎたのさ」


 ゾーヤは私をにらみつけた。


「私の炎の(うず)を、突風で押し返すなんて──ちょっと信じられない。ミレイア、あんた何者だ? あたしたちが負けるのは、時間の問題だ……てなわけで」


 ゾーヤは伸びをしながら、言った。


「あたしたちの負けっ!」


 そしてゾーヤは、私に手を差し出した。


 ナギトは叫んだ。


「ミレイア! (わな)かもしれねーぞ! そいつ、ジェニファ―の仲間だろ」


 しかし、ゾーヤは私の手を握って、握手してくれた。


「ジェニファーがあたしの仲間? ふん、あたしはあいつの目的を探っていたのさ」


 ランベールも、魔力模擬刀(まりょくもぎとう)を背中の(さや)に戻しながら言った。


「ゾーヤの言う通りだ。ジェニファーは、スコラ・シャルロを乗っ取るつもりだ」


 私とナギトは顔を見合わせた。

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