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第13話 スコラ・シャルロ魔法競技会 予選①

 1ヶ月後──。


 私──ミレイアは、スコラ・シャルロ魔法競技会の参加競技者に決定した。


 多分、マデリーン校長が推薦(すいせん)してくれたんだろう。


 土曜日の午後2時、私は競技パートナーのナギトと一緒に、馬車に乗り込んだ。


 予選の場所、シャルロ王国の東、リリシュタインの森に向かうためだ。


「結局、対戦相手は分からないのですか?」


 馬車にゆられながらナギトに聞くと、彼は答えた。


「分からないな。予選は4組、計8名選ばれている、ってことは分かるんだが」



 午後3時30分──。


「着いたわよん」


 御者(ぎょしゃ)のマリオット先生が言った。

 目の前は、森が広がっている。リリシュタインの森だ。


「スコラ・シャルロ魔法競技会の予選A組は、このリリシュタインの森で2日間、戦うわよ」


 マリオット先生は、口ひげをなでながら言った。


「相手も同時刻、森の西から入るはず。火や雷の魔法も使用していいわ。木々や植物に、火は燃え移らないように、魔法がかけられているから──。怪我しないことを祈ります」


 マリオット先生は、私に森の地図を手渡してくれて、投げキッスを送ってくれた。


 ど、どうも……。


 ──私とナギトは、リリシュタインの森に入っていった。




 森の中は湿(しめ)り気を感じる。

 当たり前だが、周囲は木々と植物、地面は土。

 都会からほとんど出たことがない私には、とても珍しい光景だった。


「オレが前を行く」


 ナギトは言った。


「お前は後ろを見張ってくれ」

「ええ」


 ナギトがズンズン歩いていく。


 ──その時!


「ミレイア!」


 ナギトは急に私を抱きしめ、私を地面に押し倒した。


 ガスッ

 ガスッ

 ドスッ

 

 鋭い音がして、何かが、地面に突き刺さった!


 あれは! 魔法でできた光の矢! しかも三本──。


 上を見上げると、ぼんやりとした光る透明の霊体は、弓矢を構えて私たちを狙っている。


「ハアアッ」


 ナギトはナイフを投げ、頭上の霊体を攻撃した。しかし、突き抜ける。


 ナギトが助けてくれた……? あの場所にいたら、魔法の矢が、私の腕に刺さっていた!


「いきます!」


 私は宙から聖女の杖を取り出し、身構え、魔法を放った。


「天の(さば)きをくらえ! アストラペ・ライトニア!」


 バーン! 


 超高速で、私の魔法の雷が、天から落ちた。この雷は霊体にも損傷(そんしょう)を与える。なぜなら、この雷は、霊の世界に存在し、この世に落ちてきたものだからだ。


『ウググッ』


 霊体は少しは焼け()げ、ギロリと私をにらんだ。脳天から雷が落ちたのだ。ダメージはかなり大きいはず。


『や、やるね……。予想通り、ミレイアか』

「あ、あなたは?」


 私が声を上げると、霊体の代わりのナギトが言った。


「あいつ、ゾーヤだ。ゾーヤ・ランディッシュの声だぜ。霊体だから、顔はよく分からんがな……。魔法使いコースの女子だ……。あいつが、今回、オレたちの相手だ!」

『ふん、バレたか。そうだよ、あたしはゾーヤ。肉体から霊体だけ抜け出し、挨拶(あいさつ)にきたよ。私の肉体は、ここから遠い場所にある』


 霊体はクスクス笑った。私はゾーヤを知っている。同じクラスの女子だ。ジェニファーの取り巻きの一人でもある。


『ジェニファーに言われたんだよ。ミレイアが来るはずだから、容赦(ようしゃ)なく、叩きのめせってさ!』

「ふーん……でもそれ、すごい技よ! 『幽体離脱』よね?」


 私は敵であるゾーヤを()めた。


「どうして、そんなすごい技を使えるあなたが、ジェニファーなんかとつるんでいるんですか?」

『うるさい!』


 霊体のゾーヤは声を上げた。


『ミレイア、あんたがムカつくだけさ。真面目ぶっちゃってさ。さあ、地図を持ってきたかい? ×印が書いてあるだろう。そこで、明日の朝、正々堂々、勝負だ。あたしのパートナーも来るからね。──じゃあな!』


 霊体のゾーヤは、ヒュッと姿を消してしまった。本体に戻ったんだろう。


「ゾーヤは、明日、どこかで待っていると言ってたな」


 ナギトはマリオット先生からもらった地図を広げた。


 地図を見てみると、森の中央部に、確かに×印がついている。

 これは……?


「へえ? あんがいお宝があったりしてな。明日、行ってみようぜ。今日はもう夕方5時だ。下手に動くと、森にひそむ猛獣(もうじゅう)が襲ってくる。──おっしゃ、晩飯(ばんめし)の用意をするぜ。──っと、見つけた!」


 ナギトは左腰につけた小さい(さや)から、また小型ナイフを取り出し──。


 ヒュン


 投げた!


「キキッ」


 そんな鳴き声がした。ナギトが前方に駆けていく。


「ほーれみろ。大当たりだ」


 ナギトは大きな茶色いウサギを抱えていた。ぐったりしたウサギの脇腹に、ナイフが突き刺さっている。


 ええっ? 見えなかった。そうか、大ウサギの体毛が、土と同色だから分かりにくかったのか。


「おっと、忘れちゃいけない。血抜きをするぜ」


 ナギトはウサギに刺さっているナイフを、もう一度ウサギの下腹部に刺し、上の方に斬りあげた。


 血が飛びだす。


 ナギトはウサギの内臓を取り出し、そのウサギを大きな葉っぱの上に置いた。


「血をぬいておくと、臭みがとれて肉が美味しくなるんだ」

「うわああ……」

 

 私は顔をしかめていたが、なぜか「見なければいけない」という使命感がわいて、解体されたウサギを見ていた。


「ミレイア、ヨモギだ。他に薬草類を()んでこいよ。『パレック』って植物も忘れるな」


 ナギトは私に言った。


「あ、はいっ」


 おそらく、ウサギ肉の臭み消しに使うんだろう。私は周辺を探し周り、ヨモギ、ミント、オレガノなどを見つけた。

 

 薬草類のあつかいは、アルバナーク婆に習ったから、慣れている。パレックもあった。これはどんな植物だっけ? えーっと……。


 私が考えていると、ナギトはもう1匹、大ウサギを仕留めて、大はしゃぎだ。

 



 私たちはそこから2キロ歩き、小川の近くに洞窟を見つけた。


「ここを宿にしよう」


 ナギトが言った。


 あれ? もしかして、ナギトと一緒に、1晩過ごすことになるの?


 ……男の子と一緒に、夜をすごすなんて……初めて……。

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