表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/64

第10話 これは運命? ナギトと再会

 私はシャルロ王国の勇者、聖女養成学校──「スコラ・シャルロ」に編入した。


 その学校の廊下で、ぶつかった男子は……!


「本当にいってぇなあ! ったく、誰だよ!」

「私だって痛いわよ!」


 私は廊下に尻もちをつきながら、声を上げた。もう、その男子がナギトだと分かっていた。


 ナギトは私を見て、わめいた。ナギトはまだ、私だと気付いていないらしい。


「何だ、こいつ! 思いっきりぶつかってきておいて」

「あなたこそ! ナギト!」

「おい、(あやま)れっつーんだよ! ……って、あれ? 俺の名前を知ってるのか?」


 私もナギトが目の前にいることに驚いていたが、ナギトも目を丸くしている。


「ミレイア? 何で、こんなところにいるんだ?」


 私だってあわてている。


「そ、それはこっちのセリフ。ナギトこそ、なんで、スコラ・シャルロにいるの?」

「オレが、スコラ・シャルロの生徒だからに決まってんだろ。ええ? ……ってことは、お前、ここに編入したのか? 本当かよ!」


 廊下にいた生徒たちも、噂をし始めた。


「ミレイアって、ナギト君と知り合いなの?」


 すると、ジェニファーも騒ぎを聞きつけ、教室から廊下に出てきた。

 ナギトを見て、目を丸くしている。


「まさか! この男の子、グリンマゼル団の子息でしょう? 新聞で見たことがあるわ。ミレイア、あなた、何でグリンマゼル団と知り合いなのよ?」

「ジェニファー? べ、別に、飛空艇(ひくうてい)で一緒になっただけだよ」


 私はあわててジェニファーに言った。しかし、ジェニファーの興奮はおさまらない。


「グリンマゼル団といえば、エクセン王国の国家予算よりも、お金を持っているって有名よ! 何よ、ずるいわね!」

「あのね、ナギトとは知り合ったばっかりだし」

「くやしい! 王子のレドリーは最近冷たいし」


 ジェニファーはブツブツ言っている。しかしナギトは構わず、私を助け起こしてくれた。周囲の女子からの悲鳴があがる。


「あ~! ミレイアがグリンマゼルのご子息と手をつないだわ!」


 ナギトは騒いでいる女子たちをジロリと見やり、また私に言った。


「ミレイア、お前とは何か(えん)がありそうだな。じゃーな」


 ナギトはさっさと歩いて行ってしまった。


「キーッ」


 ジェニファーは猿のように、地団駄(じたんだ)()んで、くやしがっている。


「『お前』だって! なんでそんなに親しげなのよ!」


 ジェニファーは声を上げた。


「何かムカついたわ! 勝負よ、ミレイア!」

「しょ、勝負って?」


 私はぽかんとして、ジェニファーを見た。ジェニファーは叫んだ。


「あんたも、『スコラ・シャルロ魔法競技会』に出場なさい!」

「ええ?」


 スコラ・シャルロ魔法競技会とは、この学校の、聖女を目指す生徒たちが出場する、術や魔法を使った競技会らしい。


「私と勝負よ! どっちが優れた人間なのか、決着をつけてやる~!」


 ジェニファーは一方的に騒いで、取り巻きたちと一緒に教室に戻ってしまった。


 するとその時……。


『ミレイア・ミレスタさん。ミレイア・ミレスタさん。至急、校長室までおこし下さい』


 魔導拡声器(まどうかくせいき)で放送がかかった。な、何なのよ、もう……。



 私が職員室の奥の、校長室まで行くと、そこには30代後半くらいの()せた美しい女性が、客用ソファに座っていた。クッキーをポリポリ食べている。


「ほこにふわって(そこに座って)」


 女性……おそらく校長は、自分の前のソファを指差した。


「えーっと……このスコラ・シャルロの校長先生ですか?」

「そうでふよ(そうですよ)」


 校長先生は紅茶を飲んで一息つくと、ニコッと笑った。


「ようこそ、エクセン王国の聖女、ミレイアさん!」

「ええっ?」


 私は驚いた。私がエクセン王国の出身であることは、履歴書や手続き書に書いた。しかし、聖女であることは書いていないはずだ。

 エクセン王国は無名で小国だし、聖女の名前など、あまり知られていないはずだ。


 すると、校長先生は笑顔をたやさず、言った。


「だって、アルバナーク婆様の弟子でしょ。私もアルバナーク婆様の弟子よ」

「ええっ? そうなんですか?」


 スコラ・シャルロの校長は、私の師匠、アルバナーク婆の弟子だったらしい。


 校長は言った。


「私の名前は、ミランダ・マデリーンです。よろしく」

「え、はあ……。それで、何のご用でしょうか?」

「ミレイア、あなた、スコラ・シャルロの魔法競技会に出場なさい」

「ええええっ?」


 ジェニファーとおんなじことを言ってる! 私は人と競うことが苦手で、好きじゃない。


「そういうのは、ちょっと苦手です」

「ミレイア、アルバナーク婆様の一番の教えは、何でしたか?」

「……『常に向上せよ』です」

「分かっているじゃないの。だったら、魔法競技会に出て、自分を高めなさい」

「でも……」

「ミレイア、あなた、『(やみ)堕天使(だてんし)』を()たのではないかしら?」


 はっ……。そう、私は()た。確か、エクセン王国を出る時、不気味な、彫像のような、化け物のような謎の存在を()た!


「あ、あの存在を、マデリーン先生も()たのですか?」

「ええ、私も()ていますよ。この世界は近いうち、(やみ)堕天使(だてんし)(ひき)いる、魔物たちとの大戦争になるでしょう」

「そ、そんな!」


 や、(やみ)堕天使(だてんし)と魔物との大戦争!


「ミレイア、あなたはこの学校の魔法競技会に出場なさい。世界に危機がおとずれるかもしれません。その時に備え、自分を高めるのです」

「は、はあ……どうしよう」


 私は、腕組みした。


 この世界に危機……? 


 だとしたら、私は強くならなければいけない……!

☆作者からのお知らせ


 このお話を読んで、「面白かった!」と思った方は、下の☆☆☆☆☆から、応援をしていただければうれしいです。


「面白かった」と思った方は☆を5つ


「まあ良かった」と思った方は☆を3つ


 つけていただければ、とてもありがたいです。


 また、ブックマークもいただけると、感謝の気持ちでいっぱいになります。


 これからも応援、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ