表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

10 貧乏城にイケメンコック再び&ピンクの仔豚


バートンに付いて行き、広い城――というか邸宅を見学して回る。


一気に見学するのは大変なので、客間などはすっ飛ばして現在主に使っている場所を中心に見る事にした。


「こちらが朝食を摂っていただいた食堂兼広間です。

その後ろに夕食を摂っていただいた大広間兼パーティ会場にもなるダンスホールがあります」


どちらも床は綺麗に磨き上げられてはいるが、壁や窓・天井近くの手入れまでは行き届いていない様だ。

その証拠に埃の溜まりが見えている。


それにシャンデリア等はもう何年も使われていないのが分かった。


細かくチェックすると、天井隅の蜘蛛の巣や、埃の集積が見られたり、窓に木々の枝がぶつかっていたり窓ガラスも外側の曇りがあるなど長年の手入れが出来ていない感が半端ない。


しかし家具自体は品が良く、手入れしながら大事に使われてきたのが分かる。

「――なるほど良く分かったわ」


わたしは次の場所に向かう事にした。


1階の長い廊下を抜けた厨房である。

(あら…こっちって昨日オリバーが歩いて行った方ね)


丁度突き当りが厨房になっていたのだ。

そこには件のイケメンコックが1人で昼食の準備をしていた。


少し長い髪を後ろになでつけ纏めている。

コック服を腕まくりする姿はなかなかに清潔感があり、凛々しい。


(やっぱりイケメンは…明るい時に見てもイケメンなのね)


厨房の扉をバートンがノックすると、やっとコックは気が付いたようにこちらを振り向いた。


「おお…奥様。どうしました?」


バートンはわたしが付いている訳を説明した。

「屋敷内の案内です」

「そうですか」


「厨房に(コック)を入れようという話になりまして」

「おお…本当ですか?そりゃ助かります。いつもデイジーに手伝って貰っているのが悪くて」


コックは空色の瞳をしていて男性らしく大きく、にかッと笑いながらわたしの方を振り向いた。


そのまま昼食の時間とメニューについて二人が話し込んでしまい、手持ち無沙汰になったわたしは、厨房の中を観察した。


広い厨房の一角だけしか使って居ないようだったが、綺麗にしているようだ。

床なんかピカピカだ。


昨夜嗅いだ匂いが見覚えのあるカートからしている。

近づくと口の開いている麻袋があり、そこにはトリュフと茸がゴロゴロと入っていた。


(…昨夜運んでいたのはこれだったのね)


「そう言えば…、昨日言っていたトリュフハンターはどこ?」


袋の中身を覗きながら、わたしは訊いてみた。


「ああ、コレットですか?

多分あいつはトムとオリバーと一緒に庭の手入れに回っているっすよ。

今頃は果樹園ですかね」


コックはわたしに微笑みながら、教えてくれた。


++++++++++++++++++


バートンに庭を案内してもらうと、苔の森が続く庭園風な場所を抜けて、果樹園方向に歩いた。


「奥様。そんなにすたすた歩いて…お休みにならなくて大丈夫ですか?」


「――ん?平気よ?」


領地訪問で鍛えた健脚である。

休まず歩いたからって問題は無いのだ。


バートンの表情を見て、はっとわたしは覚った。


(あ、バートンは結構お年だった…それにすっかりお茶の時間を過ぎてしまったわ)


――うっかりしていたわ。


何せ優雅な淑女のティ―タイムの習慣がわたしには備わっていない。


お茶を飲みながら、又はお菓子を頂きながら最低限のマナーを守りつつも、帳簿や新聞や本を読むかお父様と社会情勢の話しあいをするかだった。


真っ直ぐ前を見ると、道の先には林檎園が広がっている。

十分ひとりでも行先が分かる距離だ。


「分かったわ。じゃあわたしは先に歩いて果樹園で待っているわ。バートンはゆっくりでいいから、お茶の準備をお願いね」


わたしは1人で行ってるからね~と言って手を振ると、あっけに取られるバートンを残しスタスタと歩いて行った。


++++++++++++++++++


果樹園の入り口から想像がつかない程の、ちょっとびっくりするほど広い敷地だ。


手前には林檎が沢山成っていてその奥にも木々はずっと続いている。


多分違う品種か違う果実の木かもしれない。


「随分立派よね…」


林檎を見上げながら呟いた途端、木の影から小さい影が走り出て、わたしの脚元に思い切り体当たりしてこようとした。


それを避けようと後ろに下がると、枝を踏み違えて滑ってしまう。


「きゃっ!」

思わず後ろに倒れて、尻もちをついてしまった。


ぶつかってこようとした影が、ブヒッと勢いよく鼻息を鳴らす。


よく見ると、それは――ピンク色の仔豚だった。

そう言えば、最初にエントランスに居た…気がする。


「ちょっと…びっくりしたじゃない。

なんでわたしにぶつかって来ようとしたの…」


思わず呟きながら起き上がろうとすると、ブヒッブヒッと鳴いて更に威嚇をする。


(な…何なの?この仔豚…めっちゃ敵意を感じるんだけど…)


わたしは青ざめて戦闘態勢を取る仔豚を見つめた。

お待たせしました。


読んでいただきありがとうございます。

良ければブックマーク評価いただけますと嬉しいです。


なろう勝手にランキング登録中です。

よろしければ下記のバナーよりぽちっとお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ