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27話 ~何かしなきゃって時はなんも出来ない~

かくて皇帝ジュノーは権力を失った。

私の力の前に兵士たちに引きずられるように退場したのだ。

当初の打ち合わせ通り、強引な手段は取らずその身柄を軟禁することにした。

後は周りの仕事である。会談の場に雷雲と閃光がいきなり現れ、ディオネ君が一方的に譲位を宣言する。民衆の間では「神の怒り」があることないこと尾ひれが付いて私が祭り上げられていく。

いち早く私の門下に下ったディオネ君の箔も自動的に上がると、まあここまで上手く行くとは思わなかったが、おおむね計画通りである。


かくいう私はというと、慣れない皇宮生活に身体が溶けかかっている。いかんせん一般庶民の感覚から抜け出せない。前世でいえば五ツ星ホテルに住んでいるようなものだ。

『この世界の支配者なら当然の処遇では?』

イオシスがインターフェース越しに話しかけてくれるのが唯一の救いである。

そうなんだけどさぁ、畏怖か尊敬かしか態度に表せない周りの人間に囲まれてるとなかなか精神的にはくるのよ

何もしなくても食事は出るし、着替えも洗濯も誰かが手伝ってくれるんだし、自堕落そのものですよ...


皇帝とディオネ君の兄は軟禁されている。

処刑や拷問は固く禁じたので、まあそれなりの生活は保証されてるだろう。

ディオネ君は譲位後の国の掌握に、アイリス教の幹部たちは連日洞窟と皇都を往復し信者と国民に私の神格化を、それぞれ進めている。

とりあえず私は姿を見せぬようにして、民衆の間にあることないことの噂を広めさせる待ちの時間を持て余していた。

雷ひとつ操っただけで、初代ローマ皇帝と同じ立場になったのだ。

その立場になった後のことなど分かるはずがない。

計画通りなのだが、新世界の神様こと私は時間を持て余していた。


働かなきゃ負けかなと思ってる...社畜精神は転生しても変わらない。

やることはいっぱいある。

民にレトルト食品ばかり食わせておくわけにはいかないので、農地の改良や街道の整備、水道などの自動化...

アイディアは尽きない。

いずれにしてもマナの組み合わせを考えて地道に進めていけばいい話である。

『自動化のプロセスはお任せ下さい』

...私にやることがないのである。

イオシスは元々移民宇宙船の搭載コンピュータである。

人口を増やし星に文明を根付かせるプログラムに関しては豊富なライブラリを持っているらしい。

私がこの国の権力を掌握して以降、プログラムの必要実行条件が満たされたらしく、五次元からせっせとナノマシンを取り出しては私のやるべきリストをどんどんと進めている。

オートプレイのゲームよろしく私の個人的意思だけが放置されているのだ。

「はぁ...」

ため息をつくしかない状況だ。


自分で決めたこととはいえ、神様というのは退屈な仕事である。

何もしなくても周りが勝手に意志を汲み取ってくれる。自らが動く必要が無い。

神ニート説なる哲学を思いついたが、まあ私の威厳のために表沙汰にすることは出来ない。

というか、今までいた仲間がみんな忙しそうにしているのに、私一人がベッドのお友達なのだ。

精神的にはまいってしまうわけだ...


そんな虚無的な時間をしばらく過ごしながらも次にやりたいことは見つからなかった。

せいぜいが本で現地の文化を吸収したり、運動不足を解消するためにダンスの練習をしたりするだけだ。

皇宮の噴水に私の石像が経ったらしいが、正しく現人神としての私の仕事は偶像よろしくそこにいてニコニコしているだけで良いみたいだ。

洞窟で開いていた女子会が懐かしい。

神様であり独裁者でもある私は孤独だった。


鏡を見ると少し頬がこけていた。

見えないストレスというやつである。

それもそうだ。

毎日こんな生活しつつ、今日も計画は順調ですと報告にくる幹部たちとしか喋る機会がない。

ディオネ君は国内の混乱を収めるために忙しいし...

彼の顔が浮かぶ。

せめて彼に会った時だけは綺麗でいたいという気持ちだけで私は運動を怠ってなかったのだ。

もうディオネ君が好きという気持ちを隠すつもりはない。それに国内の混乱が収まれば正式に婚約を交わす予定だ。

打算も思惑も絡んでいた婚約だが、私の中では幸せな家庭を気づく乙女の妄想だけが、割りと精神安定に寄与している。


...その彼が仕事が忙しすぎて会いに来ないのである。

というか、地方に遠征に出ていて帰ってこないのだ。

自動化されているとはいえ、私の出した帝国近代化計画の進捗を私の代理で視察してくれている。

そうして国民に顔を出すことで権力を、私は顔を出さないことで神格化を図っている。

時々交わす手紙だけが私たちの絆になっている。

この世界にラインがないのが悔やまれる。

そうして枕を濡らしながら彼を待ち焦がれる私。


神の実態なんてこんなもんかと悟る肉体年齢十代、精神年齢アラサーの私の夜は毎日こんな感じであるのだ。

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