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26話 ~晴れのち嵐のステージ演出~

「貴様か...息子をたぶらかし、神を偽る悪女は」

王宮の中庭に案内されると開口一番、皇帝ジュノーは私を蔑むように見下ろしていた。

無表情でその感情は読めないが、私の事など眼中に無いという姿勢は伝わってくる。

「この度はご拝謁のご機会賜り、光栄ですわ」

私も感情を込めず皇帝と対峙した。

「...」

値踏みするように皇帝の目線が上下する。

「小娘が」

皇帝はただそれだけ呟くと何も語らずディオネ君を睨みつけた。

周囲の空気は緊張ではち切れんばかりである。

「皇帝ジュノー、先の書簡通り...この度は私めに譲位を要求しに参りました」

ディオネ君も堂々と宣告した。

皇帝の周りにいる兵士たちは驚きを隠せないのか、ざわめきたっていた。


「静まれ」

長い時間の睨み合いの末、皇帝が口を開く。

「何を言い出すかと思えば...気でも狂ったか、ディオネ」

「血を流さず、民を救うには最善の提案を申し上げただけです。父上」

私はまだ微動だにせず、ことの成り行きを見守っていた。

話し合いで解決するのは、私の最後のお情けである。皇帝側の兵士は長く続いた食糧難で立っているのがやっとという様子だ。

それに比べこちら側に下った軍門は既に王宮を取り囲み、いつでも私の指示で皇帝の首を取れるよう配置してある。

既に負け戦なことを承知で皇帝は精一杯の威厳を私達に突きつけているだけなのだ。


「私は寛大なのよ」

膠着した雰囲気に私は口火を切った。

「何を言っている?」

「餓死か譲位か、選択肢をあげたのよ。答えを聞きましょうか?」

皇帝は押し黙った。自分の不利を悟っているようだ。

「貴方の自尊心で誰かが死ぬことは認めない。神への冒涜よ」

私の言葉に皇帝の眉がぴくりとはねあがる。

「貴様が神を語るか、邪教徒め」

「貴方に何ができるの?、ほら」

私は風のマナを発動させた。

圧縮した空気は風に乗ると、皇帝の頬に一筋の血しぶきが走った。

「...」

マナの力を見るのは初めてなのだろうか、皇帝は目を見開き動揺していた。

「風の力を利用した初歩的な魔法よ、次ね」

水のマナを発動し私は皇帝の傷口を洗い落とす。そして生のマナで傷口そのものを治癒させた。

「火のマナで火傷させてもいいけど...どう?」

手のひらに火の玉を掲げる。

すっかりと兵士たちは意気消沈してしまいガタガタと手に持っていた武器を床に投げ捨てた。

「...皇帝の座が欲しければさっさと私の首をはねればいいのではないか?」

私は皇帝の言葉に首を振った。

「神も私も許しはしないわ、それに...」

私はもう一度風のマナで皇帝の頬を傷つけた。

「貴方が神のまま死なれると困るのよ」

私は右手を上げた。


イオシスに予めセットしてあった光のマナの応用プログラムが作動した。

光は電磁波でもある。つまりは電気を操作することも可能なはずだ。

風、水、光の属性を駆使すれば天候の操作も可能である。

私はタイミングを狙ってプログラムの第一段を発動させる。

「これが神の怒りよ。民にパンを与えられなかった愚か者め」

風が舞い、水蒸気と上昇気流により、中庭の噴水を中心に小さな霧雲がもくもくと湧き始める。

雲は凝縮され空に向かって一直線に伸びて行った。

「なっ」

私の取り巻きを含め、一同が絶句している。

ディオネ君を除いて...


はっきりいってはったりである。マナの出力には限界がある。だから私はそのほとんどをこのプログラムに注ぎ込んでいた。

「皇帝ジュノー、あなたは神に見放されました」

ディオネ君が私の前に出て言い放った。

私はその間を利用してマナの制御に集中する。

電磁力のマナというのは完成しきれていない中途半端なプログラムである。出たとこ勝負だ。

例えるならバグだらけのシステムを無理やり稼働させる。

未完成の振り付けのままステージに立つ。

私の人生そのものである。


「終わりよ」

私は上昇気流に乗せて金貨を上空まで巻き上げた。精密なコントロールはイオシスがサポートしてくれている。

狙いは一点。

噴水の金口と上空の金貨の間。


轟音と閃光とともに噴水が砕け散った。

あまりの衝撃に私はよろめきそうになったが、威厳を保つためにふんばっていた。

霧が晴れると皇帝は尻もちを着いて震えていた。

毅然と立っていられたのは私とディオネ君だけだった。

「神の名において、この者を捉えよ!」

私は凛とした声で叫んだ。

まあ脚本通りに喋っているのだが気分は良い。

ひとり、ふたりと我に返った兵士たちがよろよろと皇帝の身柄を拘束する。

私の前に膝まづく者もいた。


現代科学を駆使すれば簡単。上空の金貨と噴水の金口に電磁波を通して、帯電した道筋に電位差を作るだけ。つまり人工的な雷を発生させたのだ。金貨はただ光のマナのターゲットマーカなのだがこれも演出のひとつ。

王宮の外からもレーザー光線のように光が走り見えたことだろう。

光で全てが見えなくなった瞬間に、マナの力を一点に集めエネルギーを熱として解放する。

こうして噴水を爆発させたのだ。


「餓死か譲位か」

皇帝を指さし、私は最後の決めゼリフを言い放つ。

轟音にすこしチビりそうになったのは私だけの秘密である。

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