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24話 ~カリスマって人が勝手に言ってるだけ~

私はディオネ君を介して一通の信書を送った。

同時に帝国内の私の派閥に噂を流すように伝える。

私が密かにつけた作戦名はこうだ。

「神の怒り(厨二病)」

今こそ私のの力の全力投入である。


作戦開始は一週間後。私は不安と戦っていた。

計画はずさんで、いちかばちかの勝負である。

失敗したら命の取り合いになるのだ。

ガチャガチャとキーボードを叩きながら、何とか無心で事を進めるように努めていた。

「アイリスさん」

ディオネ君には計画の詳細を伝えている。他の幹部や信者には、ただ帝国に交渉に乗り込むとしか伝えていない。

「ちゃんと休まれてますか?」

ディオネ君は心配そうに私の肩を叩いてくれた。

「まあ、あまり寝れてないわ。マリアちゃんも

追い出してるしね」

「…独りだと寝れないって言ってませんでした」

抱き枕を兼ねているマリアちゃんが居ないのでここ最近は数時間寝れるのがやっとである。

「大丈夫。徹夜には慣れてるから」

私は前世のデスマーチを思いながら呟いた。

と、

「身体は大切にしてください」

背後から抱きつかれた。

「ちょ……」

一瞬振りほどこうか迷ったが、素直に甘えることにした。男の子の体温は思ったよりも暖かく…悪い気がしないのだ。

「上手く行きます。だから大丈夫です」


『プログラムとプリセットは完了しました』

イオシスが告げてきた。準備は万端なはずである。

『不安ですか?』

いや、なるようになるしかないとは思ってる。

最悪、命の取り合いになったとしても後悔はしたくないのよね。

私は私のベッドでウトウトしているディオネ君をちらりとみた。

利害関係の一致で婚約などと勢いに流されたのだが、今はそれで良かったと思っている。

むしろ彼との未来にワクワクしてもいるのだ。

恋かと言われればよく分からない。

ただ、彼の隣でもっと大きなことをしたいという気持ちが、自然と不安を打ち消してくれるのだ。


私は皆が寝静まっている洞窟を散策していた。

聖堂は整然とした石造りのステージと、中心には石版本体、そして囲むように椅子を並べている。

前世のライブ会場をイメージした作りだ。

食堂と台所はこじんまりとはしているが機能的に料理が出来るように作り上げている。

廊下や壁もむき出しの岩から、直線的な壁に削り出し、整然とした空間となっている。

私がこの世界に来てから、邪教徒と呼ばれる洞窟暮しの人達をここまで文化的な生活に導いたのだ。

数百人も数千人も数万人も変わらない。

私が文化的な生活をしたいのであれば、周りから変えていくしかない。

そのための通過儀式なのだろう、この試練は。


「アイリス様?」

マリアちゃんが聖堂でぼんやりとしていた私に気がついてやってきた。

「眠れないから散歩してただけよ」

そう言って安心させると私は手招きしてマリアちゃんを隣に座らせた。

ちょうど良かった。聞きたいことがある。

「導きで世界を滅ぼすことはできそうにないわ」

それはマリアちゃんから教わったアイリス教の信仰の核である。

世界を壊し新しい世界に導く、確かそんな教義だったはずだ。

「…」

「私は、世界を今あるまま少しづつ作りかえる方が好きみたい」

そして問う。

「信じてきたことと、私という個人の意見、どっちが大切かしら」

酷な質問である事は承知している。

宗教的な信仰心の核を、信仰している個人に否定されたのだ。

マリアちゃんは少し俯いて考えていた。

「アイリス様は…」

手を握られた。マリアちゃんの体温が伝わってくる。

「すごく優しくて…私達と対等であろうとしてくれてますよ」

私は答えを待っていた。

「アイリス様がどんな世界を作るのか、壊さないで見ていたいです」

恐らくそれが信者の総意なのだろう。


私はここまで積み上げてきた、作り上げてきたものを見て、作戦の成功を信じることにした。

今はやるだけのことをやって、ステージに立つ前の舞台袖にいる時間と変わらない。

じたばたしても舞台は始まるのだ。

帝国…皇帝との対決で、相手を精神的に打ち負かす。

そのための根回しと、準備は整えている。

客席には私の味方が私のステージを楽しみにしている。

あとははったりだ。失敗しようが成功しようが、持ち時間の中で最高のパフォーマンスを客に見せるだけ。

敵である皇帝は私の事なんか見ていない別のアイドルのファンと思えばいい。

私のパフォーマンスにひれ伏せばいいのだ。

そうやって地下アイドル時代は少しづつファンを獲得して言った。

ただ今回は一発勝負というだけだ。

やるしかない。

そう思うと自然とワクワクしてくる。

この気持ちは舞台に上がったことのある人間にしか分からないだろう。


気持ちが晴れると、私は自分の部屋に戻った。

ディオネ君はすっかり寝入っていた。

イタズラ心が刺激され、私は布団に潜るとディオネ君を抱き枕にして寝入ることにした。

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