23話 ~革命家アイドルって無理無理~
やるべき事は決まった。あとは手段だ。
「…」
ディオネ君は俯いて固まっていた。
私の決意を伝えた後に恥ずかしくなったようである。
散々為政者マウントを取られていた腹いせ(被害妄想)に、
「貴方が皇帝になって、私と結婚するわよ。子供は二人は欲しいわ」
と、やけ気味に宣言したのだ。
さすがにこちらも恥ずかしいのだが精神年齢大人の余裕で私は会議を進めていた。
さて、現実的な選択は革命、反乱による皇位継承である。ディオネ君のお父さんとお兄さんを亡き者にするだけの簡単な仕事である。
「私はこれは最終手段にしたいわ」
甘いと言われようが血を見るのはご勘弁である。
同じ理由で兵糧攻めも選択したくはない。
皇族は別として、そこに使える人達に飢餓を与えるというのは間違っている気がするからだ。
無論、恨みを買って後にしこりを残したくないという自己防衛の感情もそこには含まれていた。
そうすると、私自身の力で相手を屈服させる必要があるだろう。負けを認めさせるだけの何かがあればいい。
「マウントかぁ」
私はディオネ君を見つめながら呟いた。
精神年齢で10歳は離れているはずだがその差を感じられないことに勝手に腹を立てたのだか…俯いて顔を真っ赤にしている姿を見ていると愛おしくも感じられる。
そして、この未来の旦那さんが1万近くの軍人とその数倍の民を従えさせる力を今の時点で持っているのだ。
敵はほぼ同数だが、私達が配給した食事に手を付けず疲弊している。
この時点で勝ちには持って行けるのだが、出来れば相手を屈服させて勝ちたい。
私自身の力が何であるかが問題だ。
「ディオネ君みたく、ちょろくはないよね」
今思えばあっさりと軍門に下った彼は稀有な存在である。
気づきあげたプライドや地位への固執がある今の為政者に権力の座から穏便に引いてもらうには…選挙制度の無い帝国では自主的譲位しかありえない。
圧倒的な力の差を見せつける必要がある。
そう考えると、戦力が五分五分の場合なかなか難しい話だろう
「…ん、みんな考えてるの?」
私は幹部の顔を伺った。呑気にニコニコとお菓子を食べたり、うとうとしてたりと…好き勝手にまったりしている。
「物思いにふけってるアイリス様に声をかけると、機嫌が悪くなりますから」
…エリスさんが子供を諭すような口調でのたまった。
まあ、自覚がない訳では無いが…イラッと来ると無意識に無口になるらしい。ついで微かにマナが乱れて近寄り難い雰囲気になるという…
そして会議は行き詰まっていた。
軍事力利用以外、ろくな案が出てこない。
からかうように孫の顔見せて「おじいちゃん、皇位ゆずって」と泣き落とす作戦を提唱してきたエリスさんには、軽く一蹴りを入れておいた。
あとは帝国内でライブをやって皇帝に「感動した、譲位する」作戦なる計画をディオネ君が提案したが、却下である。
あなたみたくチョロければ世の中苦労しない。
限られたファンで成り立つのが地下アイドルだ。
ディオネ君が私の歌と踊りを絶賛してくれるのはいいが、皇帝の前でそれをやってバッサリ切られたらなんのために二度目の人生送っているか、分からなくなる。
だいたい、反乱や革命にライブ活動を利用できるなんて、歌と踊りで平和になる的なアニメの世界だ。
ちなみにイオシスはこういう時にまるで役にたたない。
技術面の指導にはマウントを取ってくるが、歴史と人間の機微には疎いのだ。
『さっきからマウントという概念を繰り返してますが、ニュアンスを捉えられません』
イオシスが尋ねてきた。
ん、要は上から目線で見下すってことよ。
少し考え脳内で言葉を定義する。
…ん、まてよ
力で圧倒的有利なのはこちらだ。あとは精神的に負けを認めさせる何かを探しているのだ。
イオシス、前にインターフェースを持ち込めば惑星内どこでもマナを使えるって言ったよね?
『システム上可能です。プログラムするまでもありません』
…なるほど。
私は一つ思いついた。
「あ、顔がにやけてますね」
「で、どうしますか」
幹部たちが手を休めて私に詰め寄ってきた。
相変わらず、私は表情に出やすいようである。




