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20話 ~この気持ちってなんだろう~

何故か心が踊る。

音楽は古めかしいこの世界の物だが、踊る私に見つめるディオネ君。

それだけで嬉しい。

私は自己陶酔に浸っていた。

久々の感覚である。

体のキレもよく、純粋に踊っていた時の気持ちが思い出される。

思えばアイドル活動の後半は売れるかどうかだけ考えて踊っていた。ついでに緊張を誤魔化すためにファンのことなんか見ていなかった。

今となってはそれだけ失礼なことも無い。

仕事が忙しいと、地下アイドル活動をおざなりにして、待ってくれていたファンを無視して…


「やっぱり…いいわね、ダンスは」

音楽が終わるとディオネ君が自然と拍手をくれた。心地よい疲労感に最高のご褒美である。

「どう、皇子様?」

彼は私に見とれていた。

「…素敵でした」

うん、素朴な感想ほど嬉しいものはない。

「それに…神秘的です」

そりゃそうだ。この世界にない音響とスポットライトを駆使したマナである。異世界広しとも、ただ一人のために魔法の贅沢な無駄使いを体現したのだ。

「なにかに使えそうかしら?」

「…あの…」

ディオネ君は放心しきっていた。

「今起きたことが凄すぎて考えつかないです」

それだけ言うと口を開けたまま固まってしまった。

気持ちは分かる。私も彼ぐらいの歳にライブを見て同じような感想を抱いたものだ。


しばらく二人で他愛なく話していくうちにディオネ君に対するドキドキ感は薄れていった。

代わりに彼の方が時々顔を真っ赤にして俯いているのが微笑ましい。

「歌と踊りを組み合わせるだけで、こんなに魅力的になるんですね」

ディオネ君はそんな単純なことに感銘を受けていた。

文化レベルの優位は利用しなくてはならない。

「まあ、思いつけば誰でもできるようになるけどね」

「…マナの魔法はアイリス様しか使えないでしょ?」

うん、プリセットとはいえ、踊って歌いながら魔法を使うのは結構なマルチタスクだ。

「私しかねぇ…」

私は目の前のディオネ君をじっと見つめた。

「あの…」

ドギマギしているようだがお構いなしに私は彼の手を握る。

「想像してみて、貴方は魔法が使えるはず」

「えっ…」

うん、イメージがマナを形成するなら今のディオネ君は打って付けの存在だろう。

私はエリスさんから教えてもらった通りにマナの制御をレクチャーした。

「できるって信じること。それだけに集中して」


二人の手が汗ばむほど強く握りしめながら、私はディオネ君に光のイメージを送り込んだ。

幸い薄暗い洞窟だ。微かな光でも眩しい鮮明な想像力をかきたてる。

「なんか…暖かいですね」

「私も戸惑ったけど、光が身体の中にあって放たれるような感じ…」

上手く説明出来ているかは分からない。

だが、ディオネ君はパッと手を話すと手のひらに豆粒台の光球を浮かべていた。


「出来たわね」

「出来ましたね」

ぽかんと二人でその光を見つめあったあと、自然と笑いが込み上げてきた。

念の為にイオシスにも確認する。

『確かにマナの発現です』

と、お墨付きを貰うことが出来た。

こうなるとあとは楽である。イメージが出来ると確信すると自然とマナの制御が可能になるのだ。

例えばあれだ、初めて自転車に乗った時と同じである。

あとはディオネ君の柔らかい頭である。

光球は徐々に大きくなり、色も赤から青に変化し始めている。

楽しそうに光を操る彼に

「ね、特別な力じゃないでしょ」

「はい…びっくりしました」

ディオネ君は私を信仰しているわけでもないのにマナが使えたことが信じられないと言った。

だが、私が特別な訳では無い。

「とりあえず、私の尊敬はしてくれてるかな?」

「もちろんです」

そりゃ、打算だけで婚約とか配下に下られたら乙女としては叶わない。

尊敬の気持ちを聞いて、私も高ぶってしまった。

「友達以上婚約未満の尊敬でマナが使える、それでいいじゃない」

私の言葉に照れるディオネ君が可愛くて私はつい頭を撫でてしまった。


ものの数時間でディオネ君はすべてのマナの制御をなしえてしまった。十代の柔らかい頭恐るべしである。

「さすがお二人の絆は素晴らしいですわ」

エリスさんが茶々を入れてきた。

その度にディオネ君が恥ずかしそうに俯くのだが、仕草が愛おしくてたまらない。

この気持ちは…暖かい。たぶん腐ってないはずである。経験がないので分からないが、たぶん。

「まあ、これで彼にも役職名つけないと行けなくなったわね」

私は幹部たちの前で提案した。

この世界で二人だけ、すべてのマナを制御出来る存在である。

マナの力の大きさで何とか長が決まる組織としてディオネ君の立場は私と同格…だとややこしくなるので、二番目に偉くしてもいいだろう。

実はもう決めている。

「ずばり、応援団長よ」

決まったとばかりにポーズする私と、凍りついた周りの目線は、実に痛々しかった。

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