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19話 ~洞窟系アイドル誕生~

最近忙しくて忘れてた。

そもそもマナの力は、私がアイドル活動を再開しようと身につけたはずだった。

光のマナと風のマナを応用すると、光線と音波としての出力が叶うはず。

文化レベルの調査も順調である。

街に偵察に放ったイオシスのロボでこの世界の音楽も録音済みだ。

「あとはあの皇子かぁ」

かぁ、と顔が紅潮するのが自分でも分かってしまった。

あの視線が頭に浮かんでは消える。

もう半ば諦めているのだが、その度に初ライブ前の様な心臓の鼓動が聞こえてくるのだ。


音楽とそれに合わせた照明のマナをセットし終えると私はため息をついた。

気晴らしに進めた作業だが、踊る気分にはまだなれなかった。

振り付けも自分で考え、現地の吟遊詩人が奏でる音楽と合うダンスも出来上がった。

衣装も少しだけ色合いを出し、地味だがみすぼらしくない程度のアレンジで縫い付け終わっている。

地下アイドル、ならぬ洞窟アイドルの初ライブの準備は滞りなく進んでいる。


だが気乗りしないのだ。

「ヤバい…何もしたくない」

食糧調達のプログラムも順調に組み上がったのだが、実行はまだである。

何が問題なのか…

いや、自分でわかってるから余計に厄介なのだ。

とにかくディオネ…皇子に特別な感情を抱かれたくないのである。

つまり、未知のテクノロジーや未知の文化で憧れを抱いて欲しくないのだ。

「これってやっぱり…」

『素の私を愛して欲しい、ですな』

私は冷静なイオシスのツッコミに、石版にキックで返してやった。なぜ人工人格に言われぬばならぬ……解せぬ。


「何やら楽しそうですね」

私が石版の周りで悶絶していると、カミラ君がニヤニヤ笑いながらやってきた。

明らかにからかいたいのを我慢しているのが目つきで分かる。

「…暇つぶしのおもちゃ見つけたような目で見ないで」

「それは失礼」

といいながら口元の歪みは消えていない。

「ここにいると戦闘もないので、ついアイリス様のご様子を隠れみてしまいました」

カミラ君は笑いを噛み殺しながら言った。

「で…暇つぶしに観察した結果は?」

「恋する乙女そのものですな」

だぁー、みんなして私をからかう!(怒)


その後マリアちゃんがこの地方のクッキーの作り方を突然教えてきたり、エリスさんが婚約の政治的メリットを解説してきたりと、散々な毎日が続く。

当のディオネ君は、私に避けられている。

その事で少し拗ねていると噂に聞いたのだが……

ごめんなさい…

抱きつきたい衝動と闘ってる精神年齢喪女がいけないのです……はぁ


流石に無視は良くないので私はディオネ君に割り当てた部屋にお邪魔した。とりあえず友達からって言ったからにはそれなりの責任がある。

「アイリス様」

ディオネ君は私の訪室に目を輝かせて立ち上がった。

「何してたの?」

ディオネ君の机には山積みの本が置かれていた。

「暇だったから勉強してました」

シレッと言う当たりがかっこいい。

これが私だったら目にくまを出しながらドヤ顔になるのだからカッコつかないものである。

とりあえず私はディオネ君の隣に座る。

少しだけドキドキしているが想像よりは落ち着いている。

まあ体は数歳私が年上で、精神年齢はふた周りくらい差があるのだ。本来なら弟の様に接したらいいと自分に言い聞かせている。


しばらく二人で他愛なく喋っていた。ここでの生活とか帝国の様子など、内容はあまりない。

ただ、帝国の民のこととなると熱く語る彼の姿はカッコよく眩しかった。

「貴方は本当に民が好きなのね」

私は呟いた。

民を愛したいという気持ちが深く語り口にこもっている。

「もちろんです」

私は俯いてしまった。

「…私は…自分が好かれたいからアイドルやってたのよね…」

つい、目の前のディオネ君と自分を比較して醜い自分が見えてしまった。

「…?」

「ファンのこと好きになろうとか、じゃなくていつも自分のことだけ考えてた…」

聞きなれぬ単語に首を傾げながらも、ディオネ君は私の話を聞いてくれている。

「よくわからないですが…民に愛されず暗殺された皇帝は沢山います…」

私は苦笑した。前世はまさにその通りの人生だったからだ。

「だから民に愛されないことが怖いという意味で…僕も自分勝手なんですよ…たぶん」

少し無理のある理屈だが、ディオネ君が私を慰めようとしてくれているのはわかった。

私の自分本意な感情に無理に合わせてくれているのだ。


「まいったわね、これじゃどっちが大人か分からないわ」

私はすっと立ち上がると、ディオネ君の手を取り石版の祭壇に向かう。

心の中で少し決意がついた。

「今から貴方の為に踊るわ。貴方は感じたことをどう利用できるか考えて」

ぽかんとするディオネ君を床に座らせると、音楽をスタートさせ、私は目を閉じる。

私の初ライブは、純朴な少年のためだけに披露されたのだった。

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