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01話 ~この讃えられ方はドン引くわ~

さて、落ち着こう。

私こと後藤愛子はしがない喪女(笑)だった。

そこそこのスタイルと、そこそこのルックスでそこそこの人生を歩んでいた。

そして今、何故か…讃えられている。


「夢…」

うぉぉぉぉぉぉぉ


うかつに一言しゃべると…このざまである。


「(こりゃ気をつけないと厄介だわ)」

猛烈な眠気と倦怠感に襲われながら私は周囲を見渡した。


周りには50人程度の男女が私を見つめている。老若男女…世代も性別もバラバラだが

熱い視線は一点に集中している。


さてその私はというと…


「(絶対…別人だわ…これ)」


頬をつねりながら(痛みを感じているので夢という現実逃避を放棄せざる負えない)、体の感覚に集中してみた。


最近やつれてきた頬はそのままだが、最近少し気になってきた下っ腹は引っ込んでいる。

肌艶も10代に若返ったかのように張りが戻っている。


「(こりゃ、全盛期(アイドル時代)の私だ、うっしゃーーー)」


と、まあ若返りをひとまず喜ぶことにしよう。

ただ病的なまでに力が入らず…座っているのもやっとである。


「アイリス様…お目覚めになられてまだ半日と経っておりませぬ…ご自愛下さい」


背後でイケメンロン毛くんが、少しよろめいた私の肩を支えてくれた。

まあこんな状況でなければ喜ぶべきシチュエーションであろう。


「(ただね…だったらこんなところに連れ出さないでほしいな…)」

私は微笑みを崩さぬまま小さくうなずいた。


そう、私の体が別人のようになったのは多分数時間と立っていない…

混乱の中、ようやく意識がはっきりしてきたのもついさっきである。


「そろそろいいかしら」

私は小さくロン毛の彼につぶやくと、法悦(ほうえつ)したようなほほ笑みを浮かべながら男は私の前に立ちはだかる。

そして私を取り囲む怪しい集団に向かってくるりと振り返り言った。


「我らが石版の巫女、アイリス様の復活はなされた」

うあぉぉぉぉ

「我々が新世界に旅立つ日も近い」

アイリス様バンザイーーーーーー

「今一度アイリス様のお言葉を頂きたいところだが…しかし」

その場はシーンと一瞬で静まり返る。

「(こいつ…私よりカリスマあるんじゃないか)」

私の99%ドン引いたままの心の一部が無意識につぶやいていた。

「しばし待たれよ、我が同胞達。アイリス様はお目覚めになられてまだ疲れが癒えていない」

この先この疲れが癒えることがあるのだろうかしらね…

すこし冷めた頭と非現実感にクラクラしながらおぼろげと浮かんだこと。

私、後藤愛子はどうやら今流行りの「転生」を果たしたということ…


「(いやいや、何この中途半端な転生はぁぁ!!!!!)」

心のなかで地団駄を踏む私。

これでは地下アイドルと大して変わりがない。

むしろ現世の方を返してほしい。


なんでかって?

その一、私が今いるのは洞窟(ほらあな)

その二、寒い、暗い、虚弱体質

その三、周りにいる奴らのテンションが異常…というか病的


はぁ…頭痛い…というか…なにこれ

「……」

私はロン毛イケメン君に視線を向けた

「ご安心下さいませアイリス様。近衛隊長としてこの私は貴女様の安全を帝国から全力でお守りいたします」

不穏な言葉が聞こえてきた。


その四、どうやら敵対するポジションがいて護られる立場らしい…


「(はぁぁぁぁぁ)」

何回心のなかでため息を付けばいいんだろうか。

「(夢よ、これは夢)」

私は何度目になるかわからない現実逃避を試みた。

だが、つまさきから頭のてっぺんまである感覚がそれを否定している。

曖昧模糊(あいまいもこ)なのはここに来た前後の記憶であり、今までの私とここにいる私は肉体以外、すべて連続している。


こういうところは論理で考えられる技術系の強みである。


ん、フローチャートに従ってソース書くだけのロボット仕事だって?

おまえ後で体育館裏な、


さておき、セルフノリツッコミは程々にしておこう


私はひとまず髪をかきあげた。

まず、昨日までセミロングだった自慢(笑)の美髪は、枝毛だらけのカサカサのショートカットになっている。

色は…私は黒髪メガネっ娘を売りにしていたのだが…くすんだ茶髪に変貌していた(涙)


「(…)」

メガネは…なぜ眼鏡も一緒に転生している

「(つうか、私の本体は眼鏡か!)」

だが、形そのものはよくある安物のセルメガネだが…手触りはこの世のものとは思えない…なんとも金属のような、それでいてツルツルと感触のない

そして暖かくも冷たくもない異質の素材でできている眼鏡である

これは重要なキーな気がしてきた…


ひとまずセルフチェックを進めていこう

私はプログラマーだ

バグ取りにはコードを一行一行細かく見ていくのは癖みたいなもんだ

「(まあそのバグコード書いているのは大抵私なんだけどね)」


…悲しい


私はかぶりを振り、粗末な玉座を模したと(おぼ)しき石の椅子の背もたれに身を預けた。

背中が痛いのなんの…


決定的なのは服装だ


白一色のローブ…

汚れもなく肌触りは絹のように良い。

飾り一つない質素なデザインだが、それが異世界感を醸し出している

「(レイア姫みたい)」

年齢がバレそうな発言である…


そして最後かつ最大の問題


「(なぜ下着がないんじゃーーーーーー)」

洞窟の中はやたらと寒い

周りの黒ずくめのローブの熱気など、更に薄ら寒い


軽くこぼれる涙を見せぬよう、私は少しうなだれながら

心のなかで何度も何度も泣いていた。

混乱の時間は続いていく。

作りながらのんびり投稿していきます

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