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15話 ~倦怠期…じゃなかった、中だるみ~

ここのところ、行き詰まっている。

帝国の要人との会談は一ヶ月後に設定された。それはいいのだが…気分が滅入っているのだ。


まあ今まで無我夢中に…多分現実逃避的に邪教の近代化計画を進めてきたのだが、形が整えば整うほど日本が恋しくなるのだ。


向こうに会いたい人がいる訳でもない。両親ともあまり上手くいってなかったし、友達もいない。ましてや彼氏いない歴=年齢の喪女だ。

そもそもアイドル活動も自己陶酔と顕示欲の現れだったのだと今更ながらに気がついた。


「寂しい…」

私は抱き枕にしがみつきながら涙を浮かべていた。

訂正、抱き枕ことマリアちゃんである。


この数ヶ月、一緒に寝ているとさすがに慣れたらしく、私が抱きついたところで起きはしない。

脳内相方のイオシスも、私の気が滅入っている時は話しかけてこないようにようやく学習できたようだ。


今までこんな気分にならなかったのがハイだった証拠だ。

波が高い分、落ち込みも激しい。

ちなみにここ二日、何も食べてない。

そういう類の病的な落ち込みかたである。


「寂しい」

私はもう一度呟いた。

やはり友達と呼べる仲間が居ないのが問題だ。

敬う信者、心配してくれる幹部…

いや、欲しいのはやはりパートナーである。


「言っとくけど…イオシスは脳内相方だから私の一部よ」

『お力になれなくてすいません』

心から脳内の思考まで読まれているコンピュータと友達になれるほど私は人間出来てない。

…今までが鈍感だったのかもしれない。

文化的な生活から隔離されて、がむしゃらに毎日を過ごしてきたのだが…所詮一小市民が転生に巻き込まれたら…鬱にならない方が不思議だったのかもしれない。


「…もうやだ」

…シナリオのないゲームを自分ですごろくのマスを作って進めているようなものである。

ゲームブックも中途半端、与えられた道具も限られている。


私はベッドから抜け出して火の魔法てお茶を沸かし始めた。

眠る気分にならないし、かといって誰かと話したい気分でもない。

幸せそうに眠るマリアちゃんを起こすのも忍びない。


いつからだろうか…この落ち込みが始まったのは。

ステージが完成して、ひとまず音楽とライトアップに照らされた時に、虚しさを感じてからだ。


私を死んだような目つきで見る信者たちの反応。

現代日本の音楽は、この時代に受け入れれないと悟った瞬間。

ゼロから何も生み出せない私。


お茶は酷く苦かった。

私はアイリスというただのお人形さんで、それを愛でる信者に生かされてるだけの屍。


「こりゃ、重症だわ」

考えることが全てネガティブになってしまう。

全てを投げ出して洞窟の外に抜け出して…何日生きられるだろうか…

みんなは心配してくれるだろうか…


涙がポロポロ流れてきた。


「大丈…で…よ」

手のひらに暖かい感触が流れてきた。

治癒の力、(せい)のマナの力だと気がつくまで少し時間がかかった。

はっと顔をあげるとエリスさんが手を握りしめていた。


「えっ…」

「大丈夫です。アイリス様は私たちの仲間です」

震えていた。完璧な淑女で、できる女性の憧れのような彼女が震えていた。

「エリスさん…」

「ごめんなさい…マリアから報告を受けていました」


エリスさんは毎晩私が寝付くと、私の部屋にこっそり隠れて見守ってくれていたのだという。


うなされていること、涙目で悪夢に苛まれていること…


「アイリス様が何に不安を覚えているか…私には分かりません…」

エリスさんの手に力が入った。

「ただ、寂しそうに泣いている子供のような表情を見ているのも辛いのです」

エリスさんの目からも一筋の涙がこぼれていた。

すんすんと啜り泣く声が聞こえる。

振り向くとマリアちゃんも泣いていた。


私は釣られるように泣きじゃくっていた。

慟哭のなか出てきた言葉はただ、

「ごめんなさい」

だけである。


どれだけ泣いたのだろうか。

自動調整している部屋の明かりが微かに光出した。


気がつくと三人は腫れぼったい目元のまま笑っていた。


その夜はじめて気分が明るくなった瞬間である。


信仰を捨てて友達になって欲しい。

私は改めて二人に告げた。


晴れ晴れしい笑顔で二人が抱きついてくる。


孤独は人を壊す。

だが人の絆は人を癒す。


この世界に来て最高に気分のいい朝は、女子三人の抱擁から始まった。

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