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14話 ~親衛隊結成計画~

「松明じゃない明かりって目に優しいですね」

「さすがアイリス様、眼福です」

「…」

私は仏頂面のまま黙々とご飯を食べていた。

この一ヶ月の苦労を秒で解決されたのだ。

幹部たちには悪いが睡眠不足は返ってこないのである。

『イメージが強化されましたから、無駄な努力ではありません』

うっさい、超鈍感コンピュータ。乙女心は傷つきやすいのだ。


いつまでも不貞腐れているのも悔しいので私はノートパソコンのイメージをベースに新たなマナをプログラムしていた。

光、電気すなわち雷、音。現代科学の知識を応用すればあとは簡単である。

ちなみにこれらのマナの魔法は私しか使えないようだ。

信仰心だけで火を起こす想像力を超えるにはなかなかハードルが高いようである。


私がプログラミングに夢中になっている間に、信者たちにはステージを作らせていた。

地面をならして、床材は板貼りしている。

あとで機材を配置できるようにするには多少の工夫は必要だが、とにかく現代的な雰囲気を再現することを重視した。


私の計画は洞窟をライブハウスに改装するビフォーアフターである。辛気臭い邪教のイメージから、光溢れる空間に、それが目標だ。

なにせ帝国の隊長曰く、洞窟に籠っている怪しい集団としか見なされていない私たちである。

イメチェンのためには開かれた邪教という思いきった改革も必要だろう。

まあ、私に敵意のない人間しかこの洞窟に入れない問題もあるが、邪教飯こと、カレーの評判も上々で…こないだ件の隊長は何故か私の部屋に完全武装解除状態で招かれていた故、敵意の問題もそのうち解決していくだろう。


ライブハウスと並行して進めているのは新しいマナの創世である。

私を崇めるとマナの魔法が行使できるのというのは、一長一短な制約である。

そこら辺、加減が出来ないか、イオシスと相談しているのだが、なかなか基本プログラムレベルの問題らしく難航している。


マナは元々移民船に組み込まれていた五次元空間からエネルギーを取り出す技術らしい。

なぜ信仰心が発現のトリガーになるか…

それはたまたまイメージと信仰が結びついた結果と、「推測」されるとのことだ。

なにせ記録が残ってない以上それ以上のことが分からない。


だとしたら、信仰ではなく、尊敬レベル…私がマリアちゃんを尊いと思う気持ちでもマナは発言できるのではないか…と仮定してみた。


『多少のエラーは出ますが、プログラムは動きそうです』

イオシスが演算してくれた。

ビンゴである。

事実私はマナの魔法を使える。

だが私は私自身を神とは思っていない。

その事実から逆算してみたのだが、方向性は間違って無さそうである。


あとは…

「音楽、衣装、生活の向上…」

とりあえず文化的娯楽は長期計画だ。

目先の生活改善に努めていこう。


そこまで考えを取りまとめると、私はエリスさんを呼び出した。


「親衛隊…ですか」

あまり聞きなれぬ言葉に、エリスさんは首を傾げていた。概念として崇める奉ることと、尊敬の間ぐらいの温度と説明したのが良くなかったのか。言葉と文化差は難しい。

適切な人材、洞窟内にそれを求めるのは難しそうだ。

となれば、外に目をむけるべきだがここが計画のミソである。

まずは洞窟内の生活環境を快適にする。

敵意を持たず、信仰もない人間を増やしていく。

そしてその人間を核にファンを広げていくのだ。私だって最初のアイドル活動は地道にライブの前座から始めている。初々しい、あどけないトークから、計算されてないあざと可愛い(自称)天然な性格にオタクは弱いのである。


それに人生二度目のファン拡大イベントである。固定ファンさえ付けば、ライブの回数も増やして…

って、ライブって概念がないのが問題ではあるのだが。


「なるほど、世界中の人々にアイリス様の素晴らしさを広めるのですね」

エリスさんはどこか遠い目をしながらうんうん、と頷いている。

どこまで理解してくれたのだろうか、広めるの意味を取り違えないでは欲しい。


「エリスさんはマリアちゃんをどう思ってる?…友達…同僚?」

「仲間ですかね」

即座に断言した。

そう、その感覚を私にもむけて欲しいのである。


「…ア…アイリス様が望むなら努力は致しますが…恐れ多いです」

まあ幹部や信者にそれを求めるのは酷だろう。


「それならおあつらい向きの方がいらっしゃいますよ」

…何故か幹部会に出席している帝国の近衛団長がお茶をすすりながら私に話しかけてきた。

ここのところ襲撃はおざなりで、終わったあとにちゃっかりと食事にありつく隠れ邪教飯派閥に転向したとは、本人の談である。


「帝国内に、アイリス様の復活と、もたらされた新しい魔法に興味をお持ちの方がおられます」

近衛団長が敬う言葉を使うぐらいだ。それなりの立場の人物なのだろう。

敵意はなく私の存在を否定せず気にかけているとの事だ。

「危険な気もいたしますがね」

「少なくとも敵意がない帝国内の人間と交渉することは悪い話ではないでしょうが…」

ニケくん、カミラくんは思案に入った。

私も悪い話では無いと思う。


「よし、決めた。団長さんの言うとおり、一度あってみましょう」

私の一言がすべてである。

みんなは、やはり何故か団長さん含めて頷いたところで、やや締まらない会議は終了した。

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