表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

13話 ~楽しい楽しいデスマーチ~

一ヶ月がたった。達成出来たことはあまりない。せいぜい食生活が現代レベルになったぐらいである。


私は今ノートパソコンと格闘していた。

食事、原始的な工具、素材。こういった単純な記憶からは再現出来る現代技術はあるのだが…

私の記憶に作動原理が分からないものを作り出すには一からプログラムを書かなくてはならないのだ。


イオシスから与えられたのはプログラムの基本となる説明書なのだが、これがまた紙の束にして広辞苑十冊分相当。

武器になる厚さである。

ファンタジー世界もへったくれもない。


「まじで前世と変わらないじゃん、これ」

イオシスに言わせればこれでもかなり簡素化したプログラムらしいのだが、いかんせんローマ帝国と現代日本よりも隔たりがある、五次元文明の技術である。

こちとらしがない派遣プログラマーだ。

簡素というフレーズにムキになって説明書を全て読み漁るのに十日、練習で机や本棚など、素材を組み立てるだけのプログラムを書くのに残りを費やして今に至る。

ここら辺は立体プリンターの応用である。


「はぁ」

目標は洞窟をステージとしてライブハウスに改装することなのだが…スポットライト、音響、ビジョンといった必須アイテムの構築にはまだまだ時間がかかりそうである。


『そんなに無理しなくてもいいのでは?』

イオシスが文化レベルに合わせたエンターテインメントを提供するべきと、提案してきたのだが却下である。


何が悲しくて無音で踊って、オケのない歌で楽しまなければならないのだ。

それは舞であって、ダンスではない(私見)

アイドルとは演者の自己陶酔とオタ芸の自己満足の相乗効果なのである(私見)


スポットライトに照らされたことのない人工人格には分かるまい。


とりあえずスポットライトの目処のために私は今、光のマナ属性を一からプログラムしていた。


電気を流すと光が出る。

光がガラスで屈折する。


この二つの要素さえ満たせば木箱だろうがなんだろうがライトになるはずなのだが


『エラーです。』

非情な通知が脳直で流れてきた。


こんなことならもう少し真面目に理論物理学をやっとけばよかった…後悔先に立たずである。


というか、こんな事態を想定して日本の教育制度は出来てはいない…

泣き出しそうになりながら私は再度書き上げたプログラムの総点検を再開した。


「…」

「アイリス様、カレーが温まりましたよ」

マリアちゃんが私の部屋にご飯を運んできてくれた。

この一ヶ月、基本的に、カレー、カレー、プログラム、気絶を繰り返している私に少し引き気味な笑みを浮かべているマリアちゃんだが…

その可愛らしさは苦笑い含めて愛おしい。


少なくとも私のライブハウスの構想を熱く熱弁した時に、目をキラキラさせて賛同してくれた唯一の幹部である。


まあ、そのマリアちゃんも一ヶ月謎の機械に照らされて病的な隈を作りながら一心不乱に何か叩いている私にはヤバい人を見る目には変わっているのだが、前世では当たり前の光景である。


ちなみにカレーを含む、私が作りあげた現代日本の食生活は、既に周辺の村々に、「聖女様の恵」として新たな信仰と信者獲得に貢献しているらしい…

近衛隊長もカレーのファンで、襲撃の回数が増えたとかいないとか、帝国内に邪教食なる新たな派閥ができたとかなんとか耳にするが…


こんなはずじゃなかったことばかりである。


「マナとアイリス様のお恵みに感謝して、今日も『かれー』をいただきますね」

マリアちゃんはそう言うと、床に敷かれた座布団にちょこんと座りカレーに舌鼓を打っていた。

私もプログラムを止めて、夕ご飯にありつくとする。


ちゃぶ台、木皿、スプーンに、米、ルー…


イメージが鮮明な物は再現出来るのだ。

イオシスが私の記憶を読み取って自動プログラムしてくれるのだ。


何故光のマナが再現できないか…

プログラムは仕様通り書いたはず。

デバッグももう何周もしている。


「アイリス様、何をそんなに険しい顔してるんですか?」

「…前に話した光を出すマナの魔法…上手く作れないのよ」

私はちゃぶ台に顎を乗せて溶けかけていた。

「私に何か手伝えればいいんですけどねぇ…風のマナと光って関係なさそうですよね」


風力発電から電気は作れる。肝心の電磁誘導のプログラムはまだ解決できてない。


「アイリス様、少し休まれた方いいですよ。顔色悪いし、ニケくん心配してましたよ」


気持ちは分かるのだが、これは私の乗り越えなければならない壁だ。


「ねぇ、マリアちゃん。私は崇められてただ貢がれるだけの人生ってまっぴらなの」

「…でも健康には気をつけないと」

マリアちゃんは今日磨いたという金属鏡を私に差し出してくれた。


確かに目元がヤバい。肌ツヤも睡眠不足から昔の私に戻っている。

ニキビは…

「明かり明かりっと」

私はよく見えない松明の明かりから、ノートパソコンの画面の明かりで鏡を照らしてみた。


「うぁ…ニキビ…最悪、三つもできてる…せっかく若返ったのに」

…マリアちゃんの言う通り少しは休まが必要かも…

「…はて」


私、今なんで明かり…とったかし…ら


「ああぁぁー」


私が己の愚かさを呪うと同時にポンコツコンピュータから脳直で、

『モニターの発光原理から記憶イメージ補完創成、自動プログラミングによるマナの光の生成に成功しました』


……

尻もちをついて驚いているマリアちゃんの前で、人差し指から光を取り出すまで、そこから一分とかからなかった。


あまりのマヌケさに…訝しげにエリスさんが私の部屋に来るまで一時間。

私はちゃぶ台をひっくり返した姿勢のまま固まっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ