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12話 ~戦いってレベルじゃないぞ~

舞台は整った。だが参加者にやる気がないと演者もやる気というものが起きないものである。

みんなの前で待った踊りは、キラキラとした信仰心の目で返ってきて何かが違う。

私という存在を神と崇められている以上、仕方がないことなのだが…


「神様が尊いと、推しが尊いって違うのよね」

イオシスに再現してもらった私の好きなコーヒーを飲み、私は熟考した。


偵察ドローンは順調に周囲を捜索している。

集落の様子や人口分布などを中心に調べているのだが私の狙いは一つである。

アイリス教ではない、アイリスというアイドル活動の中心地を作るにふさわしい人口と文化的な背景を持つ都市を探すことである。


『該当する都市はやはり帝国の帝都ですね』

イオシスが冷静に伝えてきた。

そう、そこが問題なのである。

敵対勢力でアイリスを邪神として虐げている都市が一番文化的に発展している。

これでは推しの布教活動など望めない…


難しい。宗教的な崇拝ではない「推し活」を広めたい。

その第一歩を踏み出すには少なくとも私が気軽に会えるアイリスという地下アイドルして活動することが目的であり手段なのだ。

堂々巡りである。


「もう…めんどくさい世界ね」

『文化レベルが紀元前レベルというのが最大の障壁です』

ため息を付いて私は椅子にもたれかかった。

まったりとした時間が流れている。

慌てても仕方がない。いずれ解決策が見つかるはずである。


と、


ドーン


突然に衝撃が地面から走る。

カミラくんがとっさに私を支えるとあたりを見渡した。


「地震かしら…」

少しおびえながら私は頭に手をやった。

「あら、今回は早かったですわね」

「アイリス様の復活に合わせた号砲でしょう」

エリスさんとニケくんはのんびりとコーヒーをすすっている。


「ちょっ」

「大丈夫です帝国のいつもの侵攻ですよ」

マリアちゃんも落ち着き払っていた。

「大丈夫って…」


ドーン


再び轟音と衝撃が洞窟内に走った。

「本当にみんな平然としてるんだけど」

『物理的エネルギー弾が対侵入者障壁に衝突しました』

イオシスも淡々と状況を伝えてくれるが、その声に緊迫した様子はない。


「ちょっとご挨拶にでも行きましょうか」

エリスさんは私の手をつかむと、さあ、と洞窟の入り口へ足を進める。


信者たちも落ち着き払っている。

どうやら脅威がないということは本当のようである。


「邪神を信じる異教徒ども。今日こそこの帝国領土内に巣食った異物を排除してくれる」

なにやら野太い声が聞こえてきた。

私はローブで身を隠し、カミラくんとニケくんの背後から前線の様子を観察した。

約三十名程度の鎧甲冑で身を包んだ兵士達と、ニコニコとコーヒーカップを持ったエリスさんが退治している。


「ごきげんよう皆さん。今日もお疲れ様です」

挑発するようにエリスさんが冷ややかな声を発した。


ドーン


大砲が炸裂し鈍い衝撃が走る。

が、見えない壁に弾かれるようにバスケットボール大の玉は地面にポトリと転がり落ちた。

「突撃ー」

兵士たちは丸太を壁に打ち付ける。門を破壊するときのように壁を破るつもりなのだろうが…

目に見えた効果がない。


「アイリス様、これが聖域が聖域といわれる所以です」

マリアちゃんも誇らしげな顔を浮かべていた。

丸太による壁の破壊はことごとく失敗している。

透明な壁にぶつかると丸太の先がどんどん砕けていくのだ。


「…さて、ご満足いただけましたかな」

カミラくんがさっと手を上げ兵士たちを静止した。


攻撃に効果がないことを認めると兵士たちは後退りし陣形を整え直す。


「がはは、これで何敗目でしょうな」

野太い声の隊長が兜を脱いであぐらをかいて座り込んだ。

「そちらがアイリス様ですか」

隊長は私に目をやると一礼する。

「お美しい。聖女様のご復活おめでとうございます。エリス殿」

「隊長も、毎度ご侵攻お疲れ様です」

気がつくとバリアの中と外の境界を無視して二人が肩を叩き合っていた。



「えっと…どういうこと」


唖然とする私に隊長とエリスさんが交互に説明してくれた。


曰く、帝国内でもアイリスを邪神として虐げる派閥の他にも、崇めるでもなく放置しておけばよいという派閥があり微妙な政治闘争が繰り広げられているらしい。

だが現皇帝であるジュノーは強硬的なアイリス教討伐論者で、隊長こと…眼の前の髭面のおっさん…は襲撃という茶番を繰り返さなくてはならないのだというのだ。

戦いってレベルじゃないのは今見たとおりである。

敵意を持って、私を排せる武力を持って洞窟の聖域に入ろうとするものをイオシスは防衛機構で容赦なく排除する。

しかし人間に対して危害を加えないがゆえに、今のような攻撃手段だけを排するようバリアを調整しているのだという…


彼らの武器は丸太と原始的な大砲。

こちらは五次元エネルギーから抽出された物質を原子レベルから消滅発生させる超テクノロジーである。


「あんたたち…虚しくないの」

「それをいわないでください…」

マリアちゃんが腕だけすっとコーヒーカップを差し出す。

「私も近衛隊長の立場がありますから」

その姿は、どこか中間管理職の悲哀を感じるものだった。

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