10話 ~洞窟系アイドルってどうよ~
一度知識が繋がってしまえばあとは楽である。
なにせSFの世界だ。無から有を作り出すことなど問題ない。
質量保存の法則?
五次元ポケットこと、イオシスのサポートがあれば食料から火も水も作れる。
私はこれを応用して記憶からとりあえず1台のノートパソコンを作ることにした。
『原始的なインターフェースですね』
イオシスはからかうように言ったが、人間慣れてるシステムの方が使いやすいのだ。
ちなみに幹部連中は石版からノートパソコンを取り出す私に腰を抜かしていたが、今さらである。
この洞窟自体が石版につらなる居住空間なのだ。
その真実を知らないで数百年、火遊び、水遊びしていた信者連中には少し反省をして欲しいものである。
さて、次はマナこと、五次元エネルギーの制御を自動化することである。
心のイメージなる不確かな修行に頼るよりも原始的だろうとプログラムに頼る方が確実だ。
幸い私の記憶は前世と今の空っぽだが知識の引き出しになる脳内相方のおかげでほぼ万能である。
イオシスに私の覚えているプログラムの基礎を流し込むと、あっという間に新しいマナの法則を作り上げてくれた。
試しに元素合成から一枚の木の板を作るプログラムを打ち込んでみたら、あっという間に石版からそれが再現された。
「…しかし、木の板一枚で随分手間のかかること」
試しに打ち込んだプログラムにだいたい丸一日かかった。ノートパソコンはイメージだけで作れたのに比べると随分なさ差である。
『インターフェースツールは元々私に組み込まれてましたから、それを改変しただけです。アイリスの記憶にあって、私のシステムにない物質を作るには手間がかかるようですね』
うーむ、原理は分からないが制約があるのは受け入れるしかないようだ。
ちなみに木の板を最初に選んだのはダンス用のステージを作りたいからだ。
ベットや家具などのように外部から調達してもいいのだが、平たいベニア板というこの世界に無いものを作るにはプログラムした方が良い。
私が目指すのはやはり地下アイドル復活である。
せっかく若い体と意味合いは少し違うが信者を手に入れたのだ。
音響機器、ステージ、出来ればスポットライト…
作りたいものは無限に思いつく。
その第一歩のためにはとりあえず胃腸炎にならない程度のデスマーチでプログラムを書いてくしかないようだ…
あれ、せっかくの万能な力を手に入れたのにあまり前世の性から離れられない…
「ふう…」
私はパソコンを閉じて一息入れることにした。
「アイリス様、その…お食事とか睡眠を取らないと」
ニケ君が気遣ってそっと暖かいお茶を差し出してくれた。
「ああ、夢中になると時間忘れるのよね私」
悪びれずお茶をすする。すでに二徹を超えてるらしいが私には自覚がなかった。
「時計と夜昼に合わせた照明も作らなきゃね」
そう言いながら私は脳内でシステムの構想を始める。
「アイリス様、お休みにならないとお体に触りますわ」
エリスさんも心配になったか、立ち入り禁止にしていた部屋に入ってきた。
「うーん、好きなことやってるだけだから寝ても寝てもいいのよ」
幹部連中の疲労の方が辛そうである。
私を差し置いて寝るなどとんでもないという感じでゆらゆらと立っていた。
『脳の負荷率は40パーセント…睡眠を推奨致します』
イオシスも客観的に寝ることを進めてきた。
「数百年寝てたんだから別に2日ぐらい寝なくてもいいんだけどね…」
少し不服だが私は机から離れてベットに横たわることにした。
マリアちゃんは安心したように何も言わず私のベットに潜り込んでくる。
「アイリス様、そんなに無理しなくてもゆっくりやればいいんじゃないんですか」
「いやさぁ、初めてマナを制御できた時ってマリアちゃん寝れた?」
マリアちゃんはうっ、と口ごもると気まずそうに視線を外した。
無から有が生まれるのは楽しい。
すでに私には構想があって、叶える手段もある。
セルフプロデュースの舞台でライブを開いて信者に文化的な生活を提供する。
「それに、私の踊りにあんなに感動してくれたじゃない。世界中の人に広めたいと思わない?」
みんなは互いに見つめ合い頷いた。
『問題はマスター権限がアイリス様だけなので1人で全て準備しなくてはならないことですね』
そう、そこが問題である。
音楽、照明、衣装…二日で用意出来たのが地面に素足で踊らなくてすむようにするための板1枚。
目標に対してはあまりに進捗が芳しくない。
だからこそ出だしで勢いよく色々な準備をしたかったのだが、さすがに二徹に周りを巻き込むのも気が引けるのは確か。
そこら辺はバランスのとり方は模索していかなくてはならなそうだ。
現地調達できるものは現地調達してもいいかもね…
イオシスという味方をつけた以上、この世界に私にかなう敵はいないはずである。
管理者である私を自動防御し、外敵を常にサーチしてくれる転生者無双の世界征服。
『システム基板から100キロ程度の距離を離れるとマナが作動しなくなるのでそこは考慮してください』
水を指すようにイオシスが忠告してくれた。
都道府県1個レベルの無双…
まあ、それでもいいかもね
小市民な私の感覚は、世界をまたいでも変わらないようである。




