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金髪、それは王家の証と言われている。金髪には神からの神聖なる魔力が込められた為、人目を引く、華やかな髪色になったと言われている。それ故に、民を率いる王族の象徴とも言われる髪色だ。
また、たとえ金髪でなくとも、灰や赤、水色などの変わった髪色も、貴族の証と言われている。
逆に平民は、神聖な魔力が通ってない為、黒や茶など、人本来の髪色をしている。
と、神聖な魔力云々はいわば伝説のようなもので、個人の魔力量に影響があるわけではない。
ただ、髪色に魔力が関係しているのは事実。昔、貴族と平民を分かりやすく区別する為に、貴族は自分達の髪を魔力で染め上げ、それが代々受け継がれている。だから稀に、没落貴族の子孫である平民が、周りと違う髪色をしているというのはある。
しかし、金髪だけは違う。金髪に染め上げるのを許されたのは、三代続いた王家のみ。そして、没落して、王の座から降りてしまうと、遺伝子を途絶えさせる為、一家は処刑されてしまう。そのため、金髪が平民に現れるなど、あり得るはずがないのだ。
だから世間は、パールの事を陛下の隠し子だと思っている。スカーレットは、パールが悪くないという事は分かっているが、それでもパールが平民という立場で金髪なので、王家の良くない噂が流れているのも事実。
陛下がパールとの血縁関係を認めない以上、もし王の座から降ろされた場合、スカーレット達は処刑されるが、パールはされない。でも、もしパールが問題を起こせば、それは王家の印象にも関わる。
パールがいる以上、スカーレットの心労が和らぐことがない。
だから、パールの事を嫌悪している。
私とパールが仲良くしているのが気に食わないのは、私も一応貴族だから、貴族との交流がある事に目をつけられると、ますます隠し子説が強くなるから。
ただ、私はその事については心配しなくていいと分かっている。
ストーリーを進めていくと、パールは聖女になる。金髪なのは、聖女の素質があったから。ってなるから。
ただまあ、そんな事知らないスカーレットにとっては、たしかに心休まる暇がないよね。それなのに主人公は、兄弟、婚約者と恋愛してるんだから、いじめる理由がちょっと分かるかも。
そしてたぶん、ゲームの私はその事を知ってたから、加担していたんだろう。それなら、あんな良い環境で育った私が、いじめをしていた説明にはなる。悪いことには変わりないけど、納得はできた。
「とにかく、私は彼女の事が好きじゃないわ」
──ゲームのセレス、主人公を虐めてた気持ち分かるよ。ただスカーレットを守りたかったんだよね。ま、最後は裏切ってたけど。
──スカーレット、私は裏切ったりしないよ。綺麗な手で、君を助けるから、守るから。
「スカーレット」
「何よ」
「私はパールと縁を切る事はできないし、そのせいでスカーレットを苦しめちゃうかもだけど、それでも私は、君の味方だって覚えてて。命を懸けて守るから、安心して」
私はスカーレットを抱きしめて、耳元でそう囁く。
「何カッコつけた事言ってるのよ」
「本心なんだけどな〜。でも本当に、辛いことがあったら頼ってよ。側にいるから」
「あなたに頼らなくても、私一人で解決できるから大丈夫よ」
「スカーレット、人間そんなに強くないよ。自分が思うより傷は深いし、自分が思うより溜め込んでいる。本当に、手遅れになる前に頼って。
人は意外と限界に気づかないから。それは自分自身もそうだし、他の人の事はもっと気づかない。大丈夫って言葉は助けを拒み、自分を追い詰める言葉だよ。大丈夫を、我慢の言葉にしないで。
頼りにならなくてもいい。ただ、スカーレットが少しでも辛い時、側に居させて。私を安心させて」
スカーレットは、私の頭を二、三回撫でた。
「本当に安心しなさい。あなたみたいな人が側にいたら、心配事を抱える事もできないわよ。たしかに私は、自分が思うより強くないかもしれないけど、あなたが思うほど脆くもないわよ。それに──」
「それに?」
スカーレットは優しく微笑んで、頭を私の肩に乗せた。
「セレスはいつも、私の側にいるじゃない。だから、辛くなったら勝手に寄り掛からせてもらうわ」
「うん。離さないから」
私は側にあるスカーレットの手を、そっと握った。
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